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勇者と魔王と聖女は生きたい【88】|連載小説

マオ達と旅をしてきてから自覚したのだが、僕は”考える”という行為が苦手だ。今まで"女神の予言"通り行動すればよかったから、考える必要がなかったからだろう。

「マオやエルの言葉をヒントに壁画のことを考えたけど、もう頭が痛いよ」

「あはは、私もです」

僕よりも、"考える"という行為に一歩先を行くティア。それ以上先を行くのがエル、マオなのだが、やはり同じく答えが見つからないティアの存在に僕はつい胸をなでおろしてしまった。

「壁画の意味も気になっていたのですが……」

そこでティアが言葉を止める。
そしていまだに壁画をフンフンと嗅いでまわるアイシャをジッと見ていた。

「……あれから、マオ様は?」

「それが、来ていないみたいなんだ。夜も何度か様子を見てたんだけど、アイシャがグッスリ寝てるだけだった」

「そう、そうですか……」

瞬間、ティアは迷子のような顔をする。
途方に暮れて、アイシャに綴りたそうな雰囲気をして、不安そうにする様子をした。僕と同じようにマオがいなくて不安なのだ、と思ったのだけど、それ以上の不安を抱えているように見えて。

「――――」

僕は、"考える"ことが苦手だ。
他人の悩みを解決させるような、不安を解消するような言葉が出てくる自信がない。
だから、そう、不安そうな彼女に、聞いてもいいものか躊躇して……。

「なにか、あった?」

恐る恐る、そう言葉を口にした。



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