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勇者と魔王と聖女は生きたい【92】|連載小説

「昨日の魔物の群れに、本当なら殺されていたのでしょうか?」

「いや、それはない、と思う。昨日の傭兵たち……特にリーダーの男の実力は、あんな魔物程度じゃやられないよ」

圧倒的な力を持っていた男だ。笑いながら魔物を虐殺する実力は間違いなく、僕と同等。実際に戦ったら僕が勝つ、とは思うけれど、あの勢いに押される気もする。
そんな彼が、昨日程度の魔物の群れに殺される可能性はほぼないだろう。

「では、その前から?」

「たぶん」

「"擬い物"が、私たち以外にもいたなんて……」

「うん。ただ、自覚があるのかは分からないけれど……」

「あんなに堂々としていましたものね。イリヤ様とも親しそうでしたし……」

貴族と傭兵。
立場は異なるが、仕事で関わっていれば親しくなる者もいるだろう。
しかし、二人とも"擬い物"同士という共通点が気になってしまう。

「傭兵なら、女神の預言を受けずにいて、無自覚の可能性もあるか」

「貴族だとそうはいきません。毎日、忙しい場合は少なくとも1週間に1度は女神の預言を受けなければならないはずです」

「じゃあイリヤ様と、その周りの教会関係者は知っている可能性があるのかもしれないのか」

「そう、ですよね」

2人でさまざまな可能性を考える。
しかし、これ!という意見は出てこずにモヤモヤは取れそうにない。

「……マオがいてくれれば」

つい、そう言葉を漏らした。



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