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細胞学の記事から悟った自分の仕事の立ち位置

フリーランスで活動を始めて5年ぐらい経った頃か、もう記憶がグズグズなのだが、何気に読んだ新聞の記事が私の今のスタイルを確立させてくれた。
当時私は頂く仕事、ご紹介、打診などなんでもかんでも引き受けていた。お話を持ってくださる方は「できるかな?」ぐらいのつもりだと思うが、私は「やります!!!!!」と鼻息荒く承っていた。
もちろん未経験なこともたくさんあり、でも好奇心の塊でもあった私は引き受けてから調べまくり、時間もお金も使ってこなしていたものだ。お金の計算など頭になく、赤字だったことも多々あったと思う。貧乏だったが楽しかったと記憶している。これは自宅でご飯を食べさせてくれた両親のおかげで、本当に感謝している。

バブルが弾けて商売というものがどん底に落ち、そこから活気が戻るまでの間にいろいろな職業の方がいなくなった。
華やかでお金が舞っていた頃、1件の飲食店ができるまでに「え?こんな人もいるんだ。こんな職業もあるんだ・・・」とびっくりするぐらい人が寄ってたかっていたものだが、不景気になると出店がなくなり、当然その寄ってたかっていた人も用がなくなった。自分達のことで精一杯で人のことなど関心がなかったので気にもしていなかった。
いざ、景気が上向いてきて店のオーナーは「そうそう、これはあの人に頼んでいたな」と連絡取るもどこにいったやら分からない。自分で考えてこなかったから(人任せでお店が出来上がっていたんですね)どうしたらいいか分からない。
そんなときに「なんでも引き受ける変な女子がいる」と広まったらしく、いろいろなご相談をいただくようになったのだ。

だが、好奇心の塊だけでは仕事としては未熟だ。自分でも納得できない仕上がりとなってしまい、落ち込んだこともお金が受け取れなかったこともある。このままでいいのだろうか、不満不信で仕事がなくなってしまわないだろうか。
不安でいたたまれない気持ちが膨らんで、とてもしんどさを感じるようになった。

そんなときに、ふと目がとまり読んだ記事。細胞学の先生が生徒に向けて書いた記事だった。(新聞をとっておいたはずなのに行方不明中)

卒業を控える生徒から「自分の立ち位置がわからない」と相談がある。そんなときは細胞をみてごらん。精子と卵子が出会って受精し細胞分裂が始まる。生まれたての細胞には役割は与えられておらず、おのおのが自分で「私は心臓の細胞になる」「じゃあ私は皮膚の細胞になる」とお互いの動きを見ながら自分が何になるのかを決め、相互関係を築いていく。そうやって体は形成されていくのだ。
身を置いた環境でよく周りをみて、自分にできることは何か、相互関係を築くには何が必要か、何をすれば良いのかを考えなさい。立ち位置はそうやって決まっていくんだよ。

こんな内容だった。
細胞という世界を全く知らなかった私はとても面白いと読んだのだが、その日の晩に風呂に浸かりながらウツラウツラと考えた。私が細胞だとしたらどういう役割なのだろう。したいことと出来ることは違う。不細工な失敗をするくらいならやめた方がいいのではないか。私の価値ってなんだろうか。

何かに追いかけられる夢を見て目覚めた翌朝、心はどんよりして答えの出ない苦しさがあった。しかし、考えるという作業が脳を刺激したせいか、ちょっと離れた位置から自分が見える。俯瞰でみるというか、バードアイというか。

私の仕事の世界、関わる人、仕事内容が頭をめぐる。
おそらく相談をしてくる方は「私」に請け負ってほしいわけではない。だれか「してくれる人」を探しているのだ。
依頼者によって「完璧」の許容度は異なる。私の完璧を押し付けてはいけない。自分に過剰に課した完璧は他人からしたら行き過ぎていることもある。
「あなたには相談しやすい」と言われる。相談は受けて、他の人の協力を得て完成させれば良いのではないか。自分が請けた仕事は自分で最後までやるべきと決めつけてないか。出来る人と協力してより良いものを提供できるほうがクライアンとにとってはいいんじゃないのか。
範囲を広げ過ぎて大変。興味があったこととはいえ、短時間で習得できることは少ない。ならばその道のプロに教えてもらおう。教えてもらうことは恥ではない。

出した結論は「今のままで良い」だった。
ただし、自分の才能、キャパ、時間などを考えて足りない部分は協力者に頼る。クオリティー的にも時間的にもクライアントの満足度を優先させよう。
好きなことは深める、興味のあることには取り組んでみる。広く浅くでいいから知識を身につけ、必要なときに深掘りすれば良い。全く知らないよりちょっとでも知っている方が方向性が定まりやすいから。
なんでも相談できて、なにか答えが出る人、出せる人。それが私。それが私の立ち位置。それが私の役割。

鬱で退職してから自分と向き合うことなく流されていた私だったが、しっかり自分と向き合うことができて本当によかった。
こんな私に価値を見出してくださっているクライアントには感謝している。これからもしっかり向き合っていこいうと思う。

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