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【第5話】やっと、ひと安心

LINEの既読つかないって気になるよね。嫌な勘が当たった。彼氏が交通事故!高速の合流地点付近で接触。同乗のお父さんは体を強打、菊人は骨折の重症だって。

入院はせずに済んだのが不幸中の幸い。手術は急いだ方がいいと当日、日付が変わる前には帰宅できた。生きてたことが何より。ひとつ間違えれば生命を失ってもおかしくない。考えすぎかもしれないが、ケンカ中じゃなくてよかった。そのまま、二度と会えなかったらと思うと何ともいえない気持ちになる。

せつないよね。わたしは菊人の彼女だけど、戸籍上は他人。緊急時に連絡は来ないのは、どうしようもないことと分かっている。頭で理解していても複雑だな。さくらの乙女心がそう思わせた。

バイクが共通の趣味だけど、しばらくツーリングは無理そう。あ、そうだ。FP勉強で保険の分野があったな。リスク管理。バイク保険を思い出した。自賠責は強制加入。うんうん、書類書いたわ。説明は聞いたものの、あんまり意味までは考えなかったっけ。

自動車保険、火災保険、傷害保険。これらは損保に分類される。そうだ。怪我して手術したってことは、加入してる生命保険会社に請求できるかもね。落ち着いた頃、聞いてみよう。

保険はどんな仕組み?シンプルに説明すると

・大勢の人がお金を出し合い、まとまったお金で何かに備える
  ↓
・お金を出したうちの一人に困難が起こる
  ↓
・プールされた資金が、困っているその人のために使われる
  ↓
・以後また、別の人が困ったら今度はその人のためにお金が使われる

このように、大勢の人がお互いのために助け合うという「相互扶助」から誕生した。

「自分に何もトラブルがなければ無駄じゃん」と思う?
いいえ。保険料はどこかで誰かの役に立っている。また、生きていれば、どんなに気をつけていてもリスクはつきもの。菊人のようにいつ巻き込まれるか誰もが分からない。自然災害だってある。

適正な保障(補償)を考えた保険商品は、毎日を安心して過ごすための必要経費みたいなもの。「世の中、経済力が全て」と言い切るのは寂しい気がする。それでもこの世の中、大抵のことはお金でカバーできる。保険は理にかなった制度なのよね。

(4/26さくらの日記)
【菊人、会社で団体の医療保険入ってたって。入院しなくても、日帰り手術扱いで手続きできるみたい。いくらかもらえそうって言ってた。タクシー代とか、治療費以外で細々とかかる。二十代にとって数万円はデカいよ。助かるね♪】

縛ったり干渉して、息苦しいのはキライ。今までは頻繁に自宅を行き来しなかったが、看病という大義名分がある。時には日常を共にするのも悪くないと感じていた。

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さくらは受電に苦手意識がある。

「たんぽぽ支店さん?はぎ…#@%▲$(モゴモゴ)」
「すみません。(うわ、声ちっさ。何て言ったんだろ)もう一度お願いします(気まずい)あっ萩原ですね。しょ、少々お待ちください。」
課長宛ての連絡がスムーズに取り次げなかった。かけてくる大半は、はなたば信金の口座利用者である。お得意さまに失礼な振る舞いは厳禁。そう思えば思うほど焦ってしまうのだ。

女性課長・萩原は、さくらに投げかけた。
「木野さん、今の電話。何言ってるか聞こえにくかった?」
「はい。そうなんです。」
やば。厳しいご指導かな。

「個人的意見だけどね。配慮は必要でも、お客さまとわたしたちは対等だと思うの。『すみません』を多用すると、へり下った印象が強くなっちゃうでしょ。だったら『恐れ入ります』の方がいいわ。それと、声が聞き取りにくかったら電話機のせいにしちゃう!」

実際の言い回し例を教えてくれた。即席ひとりロープレ、始まり始まり!

「恐れ入ります(申し訳ない感を出す)電話が遠いようでして、もう一度お伺いしてもよろしいでしょうか。」

百聞は一見に如かず。お客さまに不快感を与えないことが大切なのね。

「恐れ入ります」
目上の人の行為に感謝する時。また、お骨折りいただき恐縮する時など。敬意を表す言葉使いとして、自然に口から出るようにしたい。そうそう、新人は特にこういった歩みの繰り返し。さくら、感情的に怒られなくてよかったね。

(4/27さくらの日記)
【課長にいいこと教わった。メモしたぞ!電話に慣れたい〜
それにしてもFP進まないな。5月の試験迄ひと月切ってる。早い。あっという間に来ちゃいそうー汗】

(次回2/4公開予定に続く)


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