In a haze a stormy haze,
2016年の夏、大学一回生の時、フィリピンへ一ヵ月のあいだ語学留学をしていた。一ヵ月まるまる海外へ滞在するのは初めてだったので、かなりワクワクしていた。まだそのころはカメラは持っていなかった。でもその一ヵ月でのフィリピンでの滞在で見たことは鮮明に覚えている。
ただそのことをずっと覚えていたくて、特になんのオチもないが書いておこうと思った。
ちなみに場所はマニラでもなく、セブでもなくバコロドという街。
八月のフィリピンは雨期である。日本でいう今みたいな梅雨のような。じめじめして蒸し暑い。太陽もしつこい。そのうえ日本の空よりかなり情緒不安定である。さっきまで晴れていたかと思えば、ドッとスコールがくる。まあこう聞くと最悪のように思えるが、これにはひとつ楽しみもあった。
ある日の夕暮れ、バスに乗って移動していた時、この日は天気が特に悪くずっと雨が降っていた。遠くのほうからは雷の音が聴こえる。窓の外をのぞき込むと、暗い空の奥に巨大な入道雲が見える。まるでこの世の終わりかのような造形だった。しばらく目を奪われ、じっと眺めていた。
そしてその瞬間、今まで見たことの無いような大きさの稲妻が見えた。
また同じような落雷がこないか、天気の悪い日は空を眺めていたが、それっきりだった。
そしてもう一つ、バコロドでの忘れたくない光景がある。
週末、学校の友達とシパウェイ島という場所へ遊びに行った時のこと。
寮からこの島までは結構遠くて、バス、トゥクトゥク、トライシカル、ボートを乗り継いで行った。
シパウェイへはバコロドから正反対にある街、サンカルロスからボートで行かなければならない。
そのサンカルロスまでへはバスで4、5時間ほど。山をいくつか超えるのだが、車窓から見たその山の光景が、そのころの自分にとっては衝撃だった。
木で建てた小屋が山道にずらっと並んでいて、そこには多くの人が住んでいた。そして教会や十字架が至るところにあった。電気や水、インフラなどそこの人たちの生活を想像した。もちろん子供も多くいた。でも見る限りそんなに不幸そうではなかった。子供は駆け回り、若者たちは集まって談笑していた。
ただ自分はバスの車窓から眺めているだけだった。彼らが実際にどんな思いで、どんな生活をしているかは分からない。信仰する宗教もないので、キリスト教徒としての生活はどんな思いがあるのかも分からない。
でもちょっとだけ、彼らの生活の一部に入らせてもらった気がする。
遠く離れた山奥で、水も電気もままならない環境で。
多くの友達と出会い、家族に愛され、恋人を愛する。
ある日は大雨の中、家に閉じこもる。
ある日は丘の上から、真っ赤に焼けた入道雲を眺める。
なんて妄想しながらバスでの5時間はあっというまに終わってしまった。
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