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washi展示風景、作品紹介

現在開催中の(Web主体)きのね企画グループ展である“washi”の展示風景と作品説明をしていきます。
作品を正面から撮影したものは前回投稿した「washi 5/12—5/31「通販用」」をご覧ください。

実に1ヶ月ぶりの展示会です!
最後に開催したのは個展でしたので、複数人の作家さんの作品を一挙に並べるグループ展はもっとお久しぶりですね。
ギャラリーですから。壁には作品がいつも掛かっていてほしいものです。
それではwashiの様子をお見せします!

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まずは全体です。5名の作家さんで構成されたwashi。
切り絵やデジタルイラスト、抽象画に線のみで表現されたイラストレーションとジャンルレスでそれぞれのこれまでのスタイルの中から和紙というものを考えていただきました。

真柄あゆみ

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何度もきのねの企画展にご参加いただいており、すっかり常連作家さんになってくださってます(いつもありがとうございます!)
今回スポットライトを浴びたのは、まさに今が旬のアマビエさんです。
真柄さんはいつもきのねが提示するコンセプトやテーマを自分なりにユーモアをもって掬い上げようと取り組んでくださる姿勢が素敵です。
見る人を楽しませたいという想いが作品にしっかり出てきていると思います。作品名は『かみ切った?』(全部で1つの作品となっておりますが、販売は個別に対応しております)。タモリさんがお昼によく発していた名言ですね。タイトルの通り10作品とも髪型が違っており、お好みのアマビエさんを探すことができます。
髪型を10種類用意してきたこともすごいですが、髪に映えるハイライトを別の和紙を挟み込んでいる点がこれら作品の表現の面白さ(見所)であり、芸の細かさですね。
アングルもすべて横向きの画。配色と髪型以外はほぼすべて記号化され、変化のある部分だけを集中して見せる仕様になっています。

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「和紙」と聞くと表面が繊細な白紙のものを思い浮かべる方も多いかと思いますが、こうした色紙も多いですよね。
素材感だけでなく色鮮やかさも素敵なポイントです。
鱗も単色ではなく2色と色を抑えつつも背景との組み合わせを考慮しながら鮮やかさの演出に一役かっています。また、絵という二次元表現でも髪の毛というのはそのものが非常に細かく、単色塗り潰しで表現するとペタっとしてしまうなどなかなか難しい要素かと思いますが、そこをメインにしてきたところも素晴らしいと思います。

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「かみ切った?」と有名人の言葉を作品名にしただけに、実はもう一作品あるのですが・・・・・
それはまた後ほど公開。
気になる方はぜひお越しいただければと思います!
みなさんはどの髪型のアマビエさんがお好きでしょうか。

yUneshi

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デジタルアート競技“LIMITS”2019年世界大会にてベスト4に輝き、現在も活躍中のデジタルイラストレーターyUneshiさんです。
元より筆画テイストで、勢いよく筆を動かしたような爽快な描写が特徴的だったこともあり、本企画にお声掛けさせていただきました。
むしろ何で今まで和紙出力が無かったのか不思議にさえ思いました。

今回左にある1点のみがアナログ。右3点がデジタル作品です。
しかし、金は出力してからアナログで入れています。
どれも3枚づつとエディションがついていますが金の墨入れは手描きで施されており、実質すべて「1点もの」です。
最近は墨の線の精度を上げるためブラシ(デジタルの編集ツール)を新調。
より筆の質感に磨きをかけてきました。
意図して見比べる構成ではありませんが、実際に人間の手で作られる墨の線やダマの部分とデジタルで編集された墨の動きを比較できる構図になりました。

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アナログ作品『城』の方では墨だけでなく一部ペンも入れることで鋭さを補っています。「墨絵」というよりは1枚のグラフィックの精度を上げよう取り組まれています。イラストレーションで鍛えたレイアウトが光ります。

halyu

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写真家としての活動が長いhalyuさん。
最近はマッキーを用いて線を主体としたグラフィックを制作しています。荒めの用紙にマッキーをかすれさせたりと、支持体の性格も活かした表現が魅力です。今回も「和紙でできること」を真剣に考えていただきました。

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左上の『原形の幻形』のアップです。
支持体となる和紙とは別で着色したものを貼っています。
紙の端を使っているからこんなピチッと直線の形になっているんですね。
荒い素材に着色することで、その繊維がそれぞれ一本の線に見えるのが本当にかっこいいです。
支持体を活かすセンスは和紙の中でも輝いたように思います。

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『原形の幻形』別の箇所のアップ

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『 漂流、白夜の砂漠、夢はアストロノート』では実に5枚の重なりによって構成されている作品です。
写真のようなシワの表現は偶然発見した産物だとか。
和紙にマッキーのインクのベタ塗りというのも新鮮です。
植物にも見えるのびのいい線(塗り)と、どっしり構える黒の面積が素敵です。平面作品の中に「この素材だからできる立体的/レイヤー表現」にはhalyuさんの日頃の素材探究、好奇心が現れています。

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『今日の調律、今日の交信』のアップ。
これまでのアートワークの描写に近い作品です。
CGグラフィックデザインのような表現をアナログで行ってきた上に今回は和紙での挑戦です。
かすれがグラフィックとしてのかっこよさを引き出してます。
どこか機械の一部のような表現が和紙という素材、「柔」と「硬」のコントラストとして相性が良い組み合わせであると感じます。

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『黒無垢と舞踏』のアップです。
オーロラのような黒のカーテンでもhalyuさんのかすれの表現が光ります。
支持体に選んだ和紙の表面が水彩紙や画用紙とも異なる柔らかさを出していて、オーロラのような実態のないイメージに良いのかもしれません。
『今日の調律、今日の交信』と違って全体的に優しい印象です。今回は頭に思い描いた表現を直感的に絵にしたとのことですが、バラエティに富んだ表現力を今回も見せていただいたように思います。

長坂彩恵子

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洗礼されたミニマルの線で女性のあらゆる表情や姿を描く長坂さんの作品です。全体的に洋のイメージを和紙で描いています。

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『ゆうれいみたいだ』のアップ
限られた情報量でどれだけ鮮明に見えるか、長坂さんの素晴らしい描写が映えます。服装やポージングも全体の輪郭を性格になぞるのではなく、あくまで絞った要素で見せるスタイルがとてもスタイリッシュです。

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『踊る』の足の表現です。
実に思い切った表現ですが、全体ではちゃんとバランスが取れた作品になっています。レイアウト力がすごいのです!
ぜひこちらで全体像も見てみてください。

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今回の展示会では一部色を使った作品もあります。
全体が大きく引き算された表現だからこそ、ここまでの具象が目立ちます。

全体的にこれまでフラットな紙で描いてこられた作品に対し、和紙という独特なペンを走らせる中で感じる「柔らかさ」という凹凸、繊維の荒さはこれまでにない偶発的な線の強弱を生んでいると思います。
長坂さんの作品は今回9作品。
全体的に本当にレイアウトが素敵ですので、チェックしてみてください!

ムスミメ

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『常設展』でも参加してくれています、ムスミメさんです。
今回washiの方では2点作品を制作されております。
ムスミメ作品、特に最近のアナログ作品では絵具など素材を立体的に盛る、平面作品の中の立体表現が目立ちます。今回も例外ではありません。

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『穴』のアップ写真
波のような曲線を描くシワの表現があります。
これまで絵具が担ってきた立体表現を和紙にさせています。
「穴」を描こうと思いますと全体が明るい中に黒い箇所を作って表現するイメージが一般的ですが、本作品の穴は白です。
ネガティブイメージからの「救い」、「脱出」か。
人間の心情を黒をメインに描くスタイルから、ネガティブな心境を印象付けられるムスミメ作品にとって主役的に白が使われる作品も珍しいように感じます。

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『一寸先は』のアップです。
作品全体の中で最も黒以外の色が鮮やかな部分を撮りました。
闇に包まれた空間の中、『穴』にも感じるトンネルの先のような役目のこの部分は痛々しさを感じる傷口のシズル感があります。(シズル感というと語弊がある気がしますが)
こちらは、主役的な立ち位置の表現がネガティブに振られているように思います。一方『穴』の方は白をメインに置いたポジティブと考えると、『穴』と『一寸先は』とではテーマ的なコントラストがあるように考えてしまいますね。

以上で一旦の紹介を終わりとさせていただきます。
細かな発信はTwitterやInstagramで発信していこうと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました!

本展示は引き続き5/31まで開催しております。
予約制でご来店のご希望も承っておりますので、お気軽にご連絡くださいませ。メール(kinone.cd@gmail.com)またはSNSのメッセージ機能でお問い合わせください。

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