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教師の専門性って。

初任者が体育の授業を初任者研修代表授業として、実施した。
私も見にいくことに。

始業後すぐに保健室からなぜか図工専科の教員が、私に向かって忙しそうに手招きしている。
走っていってみると、昨年度担任したクラスの男子が1人、現担任と養護教諭に動きを封じられるようにつかまれている。
「去年もあったな〜。でも、あの時は、朝家で母親と何かあって、学校連れてくられたことに腹を立てていたよな。こんな時間帯に何があったんだ。」
と思った。
どうやら担任と何かあったようだ。
やたらと担任に攻撃をしようとしている。
昨年度は、人に対する荒れではなく、自分の親に対する悔しさがどうにもできず、鬱憤を晴らしている感じだった。人に対する攻撃的になる彼は初めて見た。

とにかく保健室では埒が開かなそうだった。
誰もいない別の部屋に連れていく。
担任も一緒に。
担任は、女性で私より年次も年も若い。
勢いというかいろいろなことをばっさりけりをつけるタイプで、私とは正反対な同僚。
問題の男児に
「ねー。どうしたいの?あのさ、蹴るのやめてくれる?」
「(私に向かって)もう大丈夫です。ありがとうございます。」
と、私を外そうとしたが、心配だったのでそばにいた。


女性教員は、授業中だったので、クラスに戻った。
彼と2人になった。
動きは落ち着いてきた。
「なんか。去年と変わってないな。こういうところ。どうしたんだ?」
「話さなくていいから、頷いたり首振ったりして、状況教えてくれよ。」
「給食食べてないって聞いたけど、給食中に何かあったの?」(首をふる)
「そっか。給食の前か?」(うなずく)
「そうなんだね。友達と嫌なことがあったの?」(首をふる)
「じゃ〜、先生か。」(うなずく)
「そっか。ま〜、この状態だと細かいことは話せなさそうだな。」
「とりあえずさ、興奮しているようだから、気持ち落ち着かせよう。」
しばらく静かに落ち着きが出てきた。

担任が戻ってくる。
母親に迎えに来てもらうようにしたらしい。
担任が来ると、担任に蹴りをかます。相当怒りが爆発したんだな〜。
担任に聞くと、宿題を出した出していないでもめたそうだ。
女性教員が
「大学生になっても、大人になっても、こうやって赤ちゃんみたいにだだこねるの!?駅前でこんな感じで暴れちゃうんだ。」と。
私も、まだ若い時どうしても子どもにいやみっぽいことを言ってしまってきた過去があるから、その姿に胸が痛くなった。

男児のお母さんが来た。
担任としては、この状況を見てもらいたいこともあったので、絶好のチャンスだったに違いない。
でも、1年生から納得できないことや悔しいこと、不満などが溢れると泣き出して暴れようとしてしまうから、お母さんはずっと悩んできているし、
お母さんに、その教員は
「こういうこと家でもあります?」
「いや〜、ごめんなさいってちゃんと言えるといいんですけどね〜。」
するとお母さんは、
「朝は私とぶつかっちゃってこういうことはありましたけど、今日みたいなのは初めてです。」
「おうち帰って話聞いてあげてください。」
という流れで強引に帰らせて終了。(終了?)

お母さん辛かっただろうな。
担任と子どもの間でおきた出来事なのに、解決もされず、子どもも納得せず、どこかその男児が悪いかのように言われ、家庭に戻されるという・・・。
男児も辛かったんじゃないかな。
親にも見られたくない場面を見られ、担任にも自分の気持ちを分かってもらえず、強引に学校から追い出されたわけだ。

教師の専門性とはなんだろうか。
授業を美しくこなせる技さえあれば良いのか?
子どもを黙らせ、言うことを聞かせることか?
教師の自己満足かのようにも思える掲示物をきれいにつくり、教室にかざることか?
仕事をさっさとこなし、早く帰ることか?
労働者でありながら、勿体なくも「教育者」という立場にいる私たち。
私を含め、もっと教師について深く思慮をめぐらす必要があると、今日の出来事で感じた。

あの子、明日は学校来れるかな。
あの子のお母さん、大丈夫だったかな。

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