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「なんでもプロジェクト」

今年度は3年生を担任しております。

今回は「係活動」に代わる「プロジェクト活動」の提案です。

※「係活動」を否定するわけではありません。なんとなくの「係活動」(学期の最初に決めてそのまま放置など)に対するものとしてご理解ください。

「なんでもプロジェクト」について

元実践は東京学芸大学附属世田谷小学校の沼田晶弘先生のものです。プロジェクト名をアルファベット3文字で立ち上げて、個別並行にプロジェクトを進めていくというもの。

初めて知ったのは私が学生だった頃に、沼田先生本人が大学に来て講演してくださったときのことです。強制参加だったのでしぶしぶ参加したのですが、大変刺激を受けたことを覚えています。

記事には「高学年が燃える」とありますが、3年生でも十分過ぎるほど燃えていました。

私のクラスでの「なんでもプロジェクト」の基本的なルールは3つです。

  1. なんでもOK…「やりたい」と思ったことなら文字通り「なんでも」プロジェクトとして立ち上げることができる。名前はアルファベット3文字程度でかっこよく。
    例)KNHプロジェクト(Kahoot!で学期をり返ろうプロジェクト)   KNOプロジェクト(んじ名人にれるようにえるプロジェクト)

  2. 期限厳守…活動期限を過ぎたら失敗。

  3. 達成条件…「達成条件」を明確にすること。

そしてこのプロジェクト活動、1人1台端末との相性が非常に良いのです。クイズ大会をKahoot!で行ったり、これまでは学校の備品でしかできなかた動画編集も自分のタブレットでできます。GIGAスクール以前から取り組んではいましたが、その質は大きく変化したと感じています。

「なんでもプロジェクト」成立のための必須条件2つ

かれこれ3年間は取り組んできた「なんでもプロジェクト」ですが、これだけは絶対に外してはいけないという2条件をピックアップしました。

条件1.活動時間を確保する

1週間に1回は必ず「プロジェクトタイム」という専用の時間を設定しています。この時間にプロジェクトを企画したり、進めたりします。この時間を取ることで「もう少しやりたかった」「よし、人が集まったぞ」ということで活動のモチベーションが持続するわけです。

私の学校はお昼休みの後に15分間のモジュールが設定されているので、そこを利用することが多いです。また、2週間に1回は1時間まとまった時間も取るようにしています。

プロジェクト活動に限らず、教育活動である以上しっかりと時間を確保してあげることが大切です。

条件2.期限厳守

プロジェクトの立ち上げの際に「このプロジェクトに必要な時間はどのくらい?」とプロジェクトリーダーと必ず相談します。自分たちで決めた期限に対して子ども達は責任を持ちます。プロジェクトの達成のために必要なことは何かを「期限」から逆算して考えるため、プロジェクト自体がダレることもなく、逆算思考も鍛えられます。

プロジェクトが成功したら、翌日の朝の会でみんなで祝い合います(帰りの会は行っていないため)。

プロジェクトが失敗したら、翌日の朝の回でみんなで励まし合います(「ドンマイ!」が合言葉)。

どんなプロジェクトに対してもそのチャレンジを大いに褒めます。「このプロジェクトのおかげで〜」「こんなプロジェクトは初めてだ」「こんなところが面白いと思ったよ」などとしっかり価値づけます。

失敗したプロジェクトが出た場合は必ず教員からフォローを入れるようにしています。「時間がなくて達成できなかったんだね。次はどんなふうに取り組むと良いかな?」「アンケートに時間がかかっちゃったのか。次はイベント後すぐに取ってみると良いね」といった具合です。

大切なのは「君たちプロジェクトのおかげでどんな良いことがあったのか」「今回の失敗から何を学んだのか」等を言葉にしてきちんと価値づけてあげること。そうすれば子ども達は次のプロジェクトにどんどんチャレンジしていきます。

私のクラスでは「1回まで」プロジェクトのリベンジを許可しています。期限を過ぎて失敗したプロジェクトをもう一度やり直せるというもの。「1回まで」という制限があるので、これはこれで燃えるようです。

プロジェクト活動の「流動性」

なんでもプロジェクトの良いところは「期限が来ると終わる」ところにあると思っています。

終わることによってメンバーは一度解散し、また同じ人と組むこともあれば、次は別の人と組むこともあります。リーダーもプロジェクトごとに変わりますので、誰にだってリーダーになるチャンスがあります。この「流動性」のおかげで、人間関係が固定化しません。

従来の係活動は学期始めに決まってしまったらずっと同じ係で頑張るということが当たり前でした。よく考えればこれってかなりストレスです。新しくやってみたいことがあっても始めることはできないし、自分に合ってなさそうだから辞めたいと思ってもその学期が終わるまでは辞められません。

「自分の強みを生かす」
「自分の強みを伸ばす」
「自分の強みを発見する」

そのために、「辞める」「諦める」そしてすぐ次に「挑戦する」という従来にはなかった選択肢があるところが気に入っています。「継続は力なり」とはいいますが、限られた時間の中でたくさんの経験をするには「諦めが肝心」という場合もあるでしょう。

子ども達一人一人の個性や能力が次々と見えてくるので、とても楽しいです。

係活動と当番活動…プロジェクト活動は?

日本中どの教室にも係活動があるかと思います。「係活動と当番活動を分けよ」というのはよく言われることです。ではプロジェクト活動はどうか。
向山洋一先生の著書「学級を組織する法則」の中では、学級における組織として次のような分類がなされています。

1. 学級を維持するため、毎日定期的にくり返される活動で、一定の人数が必要なもの。 例)掃除当番、給食当番

2. 定期・不定期に関わらずくり返される活動で、少人数でよいもの(創意工夫をあまり必要としないもの)。 例)黒板係、配布物の係、落とし物係、など

3. 学級生活を豊かにするために必要な組織(=文化・スポーツ・レクリエーション三分野の係) 例)集金係、スポーツ係、新聞係

向山洋一(2015). 学級を組織する法則 学芸みらい社

向山先生は書籍の中で「当番活動と係活動を明確に分ける」とはっきり示しています。多くの先生方が同意するところではないでしょうか。
「プロジェクト活動」は引用の中の「3」つまり係活動に相当する活動として位置付けています。プロジェクト活動が軌道に乗ると、本当に学級が豊かになっていると実感します。

「なんでもプロジェクト」の実際

これまでどのようなプロジェクトが企画されてきたのか、直近のものを紹介したいと思います。

  • KTKTプロジェクト(給食着のたたみかた講座をつくろうプロジェクト) 男子の給食着のたたみ方が汚いということで立ち上げられたプロジェクト。簡単に綺麗にたためる方法を動画で撮影し、みんなにレクチャーしていました。なかなかうまくたためない子に手取り足取り教えてあげる姿も…。

  • MKSプロジェクト(町をきれいにしようプロジェクト) 通学中に見つけるゴミが気になるという子が立ち上げたプロジェクト。メンバーを集め、親の許可をもらって、放課後に住んでいる地域のゴミ拾いを行いました。何ゴミかわからないものは毎日のように職員室に届けにきていました。

  • TNH(食べ残しを減らそうプロジェクト) SDGsに興味を持った子が立ち上げたプロジェクトです。このクラスは毎回たくさんの食べ残しを出している!もっと減らせるはずだ!ということで始まりました(私の指導不足もあるか…)。無理にみんなに食べさせるのではなく、「食べれる量だけ盛り付ける」ようにあれこれシステムを整えたところが素晴らしかった…。

日々の授業にもつながってくる

自分たちでプロジェクトを企画し、達成に向けてあれこれ考える…。この繰り返しで身に付く力は普段の授業でも発揮されます。授業であれば、その時間の課題に自分なりの見通しをもち、その達成のために自分は何をするか、自分で考え行動するようになってきます。

もし、似た実践をされている方がいればご意見いただきたいです。

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