見出し画像

今週のkinologue【10/10-16】

平日が4日しかなかった今週は濃密だった。金曜夜は遂にグッタリ電池切れしての寝落ち。週末は溜まった仕事と家事を片づけ、大人しく過ごすことにした。中盤に次回配給作品の第1回宣伝mtg。mtg前に、秋の香りがいっぱいのパン・オ・スリールさんの美しい栗あんぱんでエネルギーチャージ。この日の懸案は邦題。色々出し合ったが、これだ!というのに辿り着けず、邦題の神が降りて来ない。メインタイトルは決まっていて、それに合う副題を考えるのは意外と難しい。とりあえず持ち越して、次の日に新たな案を出す。賛同者がいて、それでいこうということに。kinologueで副題をつけるのは2度目だが、確か前回も最終的には「決めていいですよ」になった気がする。スッキリしないが、副題自体がスッキリしないものだから仕方ないのか。

画像1

今週はとにかく月曜(祝)から濃かった。仕事が溜まっていたのでギリギリまで迷ったが、きっと行かないと後悔すると思って行くことにした『阿賀に生きる』公開30年記念上映+シンポジウム、5時間半の大イベント。遡ること9月初め、社会情報学会での『阿賀に生きる』30年の報告会がオンラインにも関わらず、あまりに面白くて、その時にさらっと伝えられたこのイベントをすかさずメモした。『阿賀に生きる』自体を観たことがなかったので、ここで観るしかないと思ったが、それ以上にイベントに行く理由があった。『阿賀に生きる』については、なんとなく文化映画的なものかなと思っていたが、制作当時ほぼ素人の集団で作ったと聞くとクオリティの高さに驚く。確かに映画自体も魅力的だが、俄然興味を持ったのはこの映画の「その後」だ。今回は「その後」が詰まったイベントだった。久しぶりのアテネ・フランセのホールは、主催者も驚くほどの超満員。白髪のおじさまたちはどうやら30年前からの支援者のようだが、若い人たちも男女問わず結構多い。

画像2

このベタな垂れ幕が、懐かしのオシャレ映画館・シネヴィヴァン六本木で掲げられていたというから驚き。しかしチラシを見ると蓮實重彦御大の原稿が。そうなるとヴィヴァンっぽい。なるほど。今日は御大と奥様は欠席らしく残念。左側で垂れ幕を引っ張っている人が、本編にも出ている安田町の大工さんで、製作発起人の旗野秀人さん。とにかくこの人が魅力的で惹きつけるのだ。旗野さんを生で見てみたいというのが、イベントに参加した大きな理由の一つ。旗野さんと監督が口説いて製作委員会の代表になって貰ったのが、土木の研究者である新潟大学の大熊先生。飲まされて飲まされて、つい引き受けてしまったというが、大熊先生の知り合いというおじさまたちや教え子が会場にたくさん来ていたから、30年前から大活躍だったに違いない。もちろん製作会社がカバーしているところも大きいだろうが、この2人がこの映画を30年生かし続けてきたキーマンだろう。そして、この映画の「その後」の大きな特徴は監督が不在なこと。15年程前に監督は自死したらしい。その事実もイベントで知った(そんな人は会場で私だけだったかも)。監督がいなくなってしまったことはまわりの人たちに衝撃を与え、傷つけたのだろうが、監督不在がこの映画に「その後」の生きる道を与えた気がしてならなかった。時間が経てば経つほど、映画は監督の名の下に残っていくものだが、幸か不幸か、この映画が監督のものにならなかったことで、関わってきた「みんな」のものになったのではないだろうか。特に旗野さんは追悼上映や「冥土のみやげ企画」などを中心的に実施し続けたことで、そこに若手注目株の小森はるか監督や『それからどしたいっ!『阿賀に生きる』その後』を撮ることになった佐藤睦監督など世代を超えた人々が、様々な理由から惹きつけられて集まってきた。小森監督は旗野さんの映画を撮ろうと、新潟に引っ越したとか。「その後」がまだまだ続いていく、とても面白い現象が起きている。5時間半の長丁場だったが、なかなか良いものを見せて貰った。

画像3

今週はkinologue作品の「その後」も。ちょうど劇場公開から1年近くになるタイミングで、婦人之友社主催『〈主婦〉の学校』上映会が開催された。1年半ほど前、公開時期と劇場だけが決まっただけの状態の時に、相談をしに行ったのが「婦人之友」編集部だった。創業者の羽仁もと子の思想は、「主婦の学校」の理念と通じるものがある、と思ったからだった。その時に思いがけない縁があり、座談会や寄稿でお世話になるだけでなく、相模友の会の山﨑さんに横浜のトークイベントに出て頂いたり、全国友の会の方々がたくさん映画を観に来てくださった。なので、自由学園明日館講堂での上映は、この映画がHOMEに帰ってきたような、そんな気になった。幸せな映画だ。『阿賀に生きる』30年には到底及ばないだろうが、これからもkinologue作品の「その後」が楽しみで仕方ない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?