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休日のひとりの時間

休日に、とても久しぶりにひとりで出かけた。

買いたい物があったのだが毎日の陽性者数に目まいがして、なかなか人のたくさんいる場所に出て行こうという気にならなかった。この日は雪かみぞれの予報でいまいちだったけれど重い腰を上げて車で出かける。

行ってしまえばターミナル駅はにぎわっており人の流れもそこそこ。みんな自分だけは罹患しないと思っているのか。それとももう感染してしまって、免疫がついたと思っているのか。

駐車場に入るのに少し並び、あちこち動いて買うべきものをいくつか買った。そのあと、「バレンタインに買えなかった」という口実で、ほぼほぼ自分が食べるためのGODIVAを買った。

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あ、もうこれは家に戻って2つ食べちゃった後。ひとつはオットが、ひとつは自分が。ちなみにこのnoteを書いている現在、チョコはあと3つなくなっている。

GODIVAで優雅な気持ちになったあと、本屋に寄った。
ああ本屋!

本屋が好きだ。本が整然と並ぶ通路。色目や活字で分かれる各社の文庫棚、面陳される新刊の新書たち。雑誌、専門書。大きな本屋にいるとそれだけで森に入ってフィトンチッドを吸い込んでいるような気がする。

特に用があったわけではないし時勢も時勢だし、そろそろ出ようかと外国文学の棚を一回りした時、呼ばれた。本は人を呼ぶのである。書店や図書館好きの人ならわかってもらえると思う。

「読書」というところにまず反応した。それから「セラピスト」に反応した。読書セラピーって本当にあるのかな。(調べたらあった。そんなんホントに効くんかいな? 英国で盛んなのだとか。)

パラパラと最初の方に目を通して自分が読み進められそうであることを確認。しかしハードカバーは場所を取るし、家は既に本が増殖してやばい状態だし、どうしようか迷う。その時、本に印刷された出版社名が目に入った。

東京創元社

ああこれは買うしかないですね。ここは推し出版社なのである。子ども時代は創元社の全集にお世話になったが、中学以降の自分を作ったのはのれん分けした東京創元社だ。こちらの社の編集者K島さん(「桜庭一樹の読書日記」に出てきた人。もちろんまったく面識はない)のツイッターを見つけて勝手にフォローするくらいはファンである。……というわけでお買い上げ。

そのあと念願の cave store に立ち寄る。

この店は行こうとするたびに場所がわからなくて迷うか閉まっているかのどちらかだった。今まで一度も行けたことがない。今回も場所は確認したが行くまでの道が怒濤のぐちゃぐちゃ状態。ところどころ巨大な雪の塊で埋もれて歩道がない。凍ったり溶けたり吹きだまった雪の起伏も激しくどこで滑って転ぶかわからなくてヒヤヒヤの中、どうにか歩いてたどりつく。

たどりついても建物で目立っているのは上にある美容室で、肝心の店は入り口が狭く目立たなくて本当にここでいいのかどうか疑った。でも地図だとここだし、看板でてるし、多分いいだろうと地下に降りる。

正解だった。ちゃんと入れた。席も一席だけ空いていた。

この店はカフェだが、コロナ以降、読書室になりお一人様限定の店となった。ちょうど昼時だったので軽いランチセットを頼みさきほどの本をひもとく。客はみんな黙って読書などをしており、心地よいことこの上ない。初めてで勝手がわからずガタガタした自分がかえって迷惑だったのではと心配になるほど。マスクなので化粧もいい加減だし髪も風に煽られてめちゃくちゃになっていたし。自分が思っているよりかなり見かけが年寄りになってきたので、お店に嫌がられないよう外見にも気をつけなければ。

居心地は最高だった。邪魔にならないかすかなBGM、しゃべらない客(そういう設定の店だからみんなわかっている)、丁寧なスタッフ、おいしい料理。

ランチのおにぎりセットにはブロッコリーとベーコンの和え物(クミン風味)と、温かいスープが付いていた。スープは、どうして自分で作るとこういう味にならないんだろう、というおいしさ。野菜の出汁がきっちりきいている。タマネギの甘みが舌先に感じられてあたたかい。

一緒に頼んだハーブティーはポットでサーブされ、カモミールが前面に出たおだやかな味。それをお供にさきほどのイタリアの小説を少しだけ読む。最初は主人公が経験不足の頭でっかちに見えていたけど、生い立ちや言動が少しずつ明かされるにつれ最初のイメージは徐々に変わっていった。兄ちゃんがんばって生き抜いてきたんだな。立派なイタリア男だ。変な奴だけど。

途中まで読み、常備しているバレットジャーナルに好きなことを書き殴った後、店を後にする。道路は相変わらず嵐の海のような凸凹で、目の前ですれ違う車が波に翻弄される小舟のようだった。あの車たち横倒しになったり斜めって滑ったりしなくて本当に良かった、ってそのくらい道がひどい。

そして本屋に戻った。さっき買わなかったけどやっぱり呼ばれていたもう一冊を購入。

こちらは2019年出版の、半分以上学術書みたいな本なのでいま買わないとなくなってしまうかもと思った。中身は好みなので問題なし。本が、出会った時に買ってしまわないとすぐに絶版になって会えなくなることを昔は知らなかった。ハードカバーの本は特に。

そのあと文具コーナーをうろうろし、青緑だけ奇跡的に残っていたjuiceを1本お買い上げし帰宅した。juiceというのはパイロットのカラーペン。これについてはnote一本まるまる書いてしまえるくらい言いたいことがあるので、またいずれ。

ともあれ楽しかった。いい休日だった。




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