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【日記】患者の日

某月某日、朝から病院に出かけた。

わたしは心臓から出るぶっとい血管の根元にステントという金属のメッシュ筒が入っている。数年前のある日、ここが動脈硬化で詰まっていてあと少しで心筋梗塞かも!という事実が発覚し、あわてて処置してもらった場所だ。

そんなところに人工物が入れてあるサイボーグなので年一回の定期点検は欠かせない。もうここが詰まったらアウトである。その年一回の、フルコース点検の日だ。

「8時までにおいで下さい」と言われていたので7時50分に着いたら病院は既に老男女(若い人はいない)でごった返していた。密も密、すげー密。
ここは救急病院でもあり、近隣の心臓血管系の患者がたいそういっぱい来るところでいつも混んでいる。わかっていたのにもっと早く来なかったわたしの負けだ。受付番号は56番。

そうはいっても待つのはわかっていた。今日はこの通院のために有休を取ったし、読む本も持参した。ゆったりいこう。何度も通っている古参だから言われなくても置いてある血圧計で血圧を測定し、出てきた結果の紙を持ってじっと待つ。おお、今日は120/76というかなり優等生な血圧だ。以前はこれがいつも156/85とか結構やばい数字だった。50代の「まだまだ行ける」と無理を重ねていた頃は本当にギリギリだったのだなあと今になって思う。

最初にも書いたが老人が多い。マスクをしているからよくわからないのだけれど、50代以上が95%なんじゃないか。中には車椅子だったり、耳がとても遠かったり、認知症っぽかったりする人もいる。スタッフはその中で苛つくこともなく、辛抱強く名前を呼び、説明し、連れ添って誘導していた。コロナ対策もある中で本当に頭が下がる。

心電図を取りエコーを取ったところで看護師さんから呼ばれた。

「森野さん、次の検査は2時間くらい後になります。外出されますか?」

するともさ!
というか、こんな大量の外来患者の中、ひとりひとりの検査予定を把握していて、こういうことを聞いてくれるスタッフすごいよ。いったいどういうシステムになってるの?

ありがたく外出させていただき、休みを取っている職場に戻って仕事を少し進めちゃうところが社畜である。今は繁忙期ではないが遠距離介護中の親の調子がちょっと悪く、いつ電話で呼び出されるかわからない。呼び出されたらすぐに飛行機に乗って行かなければならないので(本当に悪いときはそれでも間に合わないだろう)、仕事はとにかく早め早めに進めておかなくてはならない。ああストレスだなあ。まったりしたいなあ。

途中でコンビニに寄って心の慰めを調達した。

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本当はこの後に血液検査があるのでスイーツなんかよくないんだけど、ここでは一般の健康診断と違って血糖値はあまり見ないので、看護師さんがおにぎりくらいなら食べていいですよと言ったのだ。おにぎりとロールケーキは違うが気にしない。麦茶を飲みながら心の慰めをいただき、1時間弱仕事をしてまた病院に戻る。

次は血液を採った後、造影剤を入れてのCTだった。これも毎年のお約束。
CTの技師さんは若いお兄さんで(森野から見ると誰でも若い。アラサーか、もっと年上かもしれない)丁寧に説明してくれる。もっとご高齢の患者さんたちにも毎日、同じことを同じように説明しているんだろうなと思うと、お兄さん頑張れよという気持ちになる。中にはきっとわけわかんなかったり、動転してパニクるお年寄りだっているだろう。大変な仕事だなあ。

これらすべての検査が終わり午後1時。
医師からの説明予定は3時とのことで、再び外出許可を取って昼ご飯を食べに行く。この病院で検査の長い一日を過ごすときは近所のカフェで昼ご飯を食べるのが楽しみなのだ。そのくらい楽しみがないとね。

このところちょくちょく行っていたカフェが何軒か閉業したり休業したりしている。みんな感染症不景気のせいで。なんてことだろう。かといって自分に何かできるわけでもなく、せめて開いているカフェでご飯を食べるくらいしかできない。カフェ巡りが趣味なので本当に悲しい。なんとかならんものかね。

幸い、心臓の血管はちゃんと機能していて血液検査の結果も悪くなかった。ついでに出ていたHbA1c(高いと糖尿病の危機)もそこそこ良い値だった。すべて終わって半年分の薬をもらったら4時過ぎ。いったん家に戻り、再び出かけて歯医者をはしごする。歯医者も定期検診である。そしてこちらも特別に悪いところは見つからなかった。歯科衛生士さんの丁寧な説明に何度もうなづく。

ああよかった。

何ができるかわからないけど、この日に接したキビキビ働く医療関係者の皆さんを見習って文句言わずに元気に生きていこうと思う。一日中患者として過ごした日だった。明日からはまた本務に戻って歩き出すぞ。


追記:9月17日は「世界患者安全の日」なんだって。
調べたら「国際看護師の日」というのはあって5月12日だった。医師の日とか検査技師の日なんてのは、国際的なのはなかった。でもみんな本当にがんばっててすごいです。心からありがとう。

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