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30 day book challenge 第25日

最後の6日間はしまこねこさんのイラストをトップ絵にお借りしました。
ありがとうございます。本を読む時間ですよ~~

さて第25日。「実は好きな作中の悪役」

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う~~~~ん……

これも難儀したテーマのひとつ。読んでおもしろい物語の悪役はいろんな角度から描かれていて、一概に「悪役」といえないことが多いんだもの。逆に言うと、いかにも悪役悪役しているのは描写が貧弱というか一面的で、そういう一面的な描写をしちゃう場合は全体から見て取るに足らないちょい役なのか、物語自体の描写もステレオタイプでおもしろくない傾向があるか。

そういうわけで「実は好き」と「悪役」が結びつかないんですよ。ハリー・ポッターのヴォルデモート卿なんかはいっぱい解釈できておもしろそうだけど、個人的な理由でここではポッターは出さないと決めているので。

で、この人にしてみました。ミンチン先生
出てくるのはこの本。

この表紙、割にイメージに合っていて好きです。自分が読んだのは新潮ではなかったし、岩波少年文庫でもなかったです。訳は誰だったんだろう?

マリア・ミンチン先生は「小公女」の主人公セーラ・クルーが入学する女子学院の院長です。「背が高くて気むずかしそうで、身仕舞いが良くて、美しくない」というのが最初の描写。お金持ちの娘は学校にとっては願ってもない生徒ですが、自分とはまるで違う人間のようなセーラにミンチン先生は始めから言葉にならない反感を感じます。

そしてセーラの父が亡くなりお金がなくなると、手のひらを返したように彼女をこき使い憎しみをあらわに虐待(まさに悪役!)。セーラは心の中で、「わけのわからない、あわれな、心のつめたい、つまらないとしより」と呟きます。きっとその通りの人なんでしょう。

日本語だと「ミンチン先生」ですが、原語だとMiss Minchin。つまりは独身女性ですね。小公女の世界は20世紀になるかならないかの英国。ビクトリア時代からその後にかけての、道徳観が強く堅苦しく、一方で貧富の差もダブルスタンダードも大ありの世の中です。その中で結婚せずひたすら働いて教師をやってきた、しかも少々おろかな妹(こちらも独身)がいて、2人で食べていかなければならないのはどんな人生だったのでしょう。

身分も守ってくれるものもなく、騙されないように落ちぶれないように、ひたすら働いて築き上げてきた学院。中年を過ぎた彼女がやさしくないのは、やさしくなるだけの余裕が人生にこれっぽちもなかったからかと、年を取ってから読むと思います。そして結局、最大の金づるを逃してしまって読者は溜飲を下げるのですけれど、物語後のマリア・ミンチンにどんな人生が訪れるのか、わたしはちょっと見てみたい気がしています。



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