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本読みの履歴書 12

さて、高校編第4回。まだまだ実家の書庫が続きます。

66.ヘミングウェイ 「日はまた昇る」

これの前に「武器よさらば」を読んでそれなりに気に入っていました。だけどいま考えると書かれたことを理解していたとは思えないです。

JKですよ。戦争だって絵空事だったし、何なら実際の恋愛すら絵空事でしたからねえ。
ただ、この小説のだれた虚無感というか、そういう感じは嫌いではなかったです。何か熱いものを求めながら得られないでぐるぐる歩き回っているような。あれ、わたしJKの頃からそんな感情に親近感を抱いていたの? 10代の頃から熱くなれずにいたのかな。そんなことはなかったのだけれど。
有名な「老人と海」は未読。


67.E. T. A. ホフマン 「牡猫ムルの人生観」

漱石の「吾輩は猫である」に影響を及ぼしたんじゃないかと解説に書いてあった本。

ムルは猫だけれど教養があって読み書きができ、自分の一代記を書こうとします。ところが紙がないので飼い主の本棚から勝手に本を出してきて、ページを引きちぎってインクの吸い取り紙として使ったりするんですね。で、本が印刷されたときに(猫が書いた本が印刷されるわけだ!)編集者の手違いで(??)吸い取り紙部(他の本の一部)と原稿がごっちゃになり、一部分はムルの話、それが突然途切れて別のクライスラーという音楽家の話(元の本)が交互に現れるという変な構成になっています。

突然話が替わるので、肝心なところがわからなくなったりしており、前後の様子から類推するしかないというちょっと難しい(笑)話でした。でも楽しかった。

これも文庫本で、中途で終わっているので続きがないかと探したんですがありませんでした。いまWikiを見てみたら、作者の死去によって未完で終わっていたようです。


68.バートン版 「アラビアンナイト」

ハードカバーで箱に入ってて挿絵入りで、えっちなのもえっちでないのもいっぱいお話があったんだけど、正直に言うと、あんまり印象に残ってないです。

だけどさ、シンドバッドの冒険ってものすごくたくさんあるのだとか、アリババって元々そういう話だったのかとか(ディズニーしか知らなかった)、改めて認識した全集でした。

殺されないために毎夜、お話を続けるお姫様ですが、千夜終わるとお子さんが2人できてたりしました。王様も心を入れ替えてめでたしめでたし。
しかし毎夜、夜が白みかけたので話を止めるんですよ。
いつ寝てるんだ? 
昼は眠くないのか(お姫様の方は寝てりゃいいですけど、王様はどうしてたのか。政治とか戦とかは無いのか?)とすごく疑問に思いました。本末転倒な感想。

それから妊娠中はともかく、出産の時はどうしてたんだろうとそれは気になりましたね。おとぎ話と言っちゃえばそうなんですけど。

<コムズカシイ本>

中央公論社の「世界の名著」ってシリーズがあって、その中からいろいろ読んでみました。これも、いま記憶に残っている部分はあまり……。
ハイデガー「存在と時間」も読んだし、「原始仏典」とかね、わかりもしないくせに読みましたよ。そして何も残っていません。読んだときすら何もわからなかった。今も何もわかりません。

69.ホイジンガ 「中世の秋」

その中ではホイジンガはまだ、わかる所があった(笑)というだけで。
ルネッサンスは中世の終わりだ、というような論だったと思います。
ごめんこんなざっくりした記憶で。

70.聖書

子どもの時に愛読していた創元社の「少年少女文学全集」に新約聖書の一部を子ども向け物語にした「イエス・キリスト物語」というのが入っていたので多少は知識があったのですが、はじめて「へーこういう話なのね」と知りました。斜め読みだけど。

物語としては旧約の方が新約より断然面白いです。いろんなタイプの「人間」が描かれていて。
砂漠の民は何教であってもみんなエグいなあというような感想を持ちました。それだけ生きる環境が厳しいのだろうか。だからこういう、一神教のガッツリした宗教が必要なんだわ、と。

本当の意味で多少理解できたのは大学に入って宗教学を教養科目で学んでからです。この授業は面白かったです。クリスチャンの先生が、宗教を宣伝するわけでもなく無宗教のアーパー学生向けに宗教・歴史・文化のかかわりを教えてくれました。真の意味での教養となり、学んで良かった授業のひとつです。

71.ジグムント・フロイト 「精神分析学入門」

これは最初から最後までなめるように読み、相当部分を高校生なりに理解した(と思う)本。いや本当に理解したかは別としても、それなりに、書かれたことを消化できたと思います。哲学的な記述はあまり無かったのでね。わかりやすかったです、ハイデカーに比べれば。

読んだのは高1か高2の時で、とにかく果てしないショックを受けました。だってだって、「無意識」なんて概念を設定して、そいつが意識以上にいろいろ働いて、それが表に出てきた結果が言い間違いだったりするなんて、そんな斬新な発想はまさに目から鱗でしたよ。そんなことを考えていた人間がいた、というその事実が。

この本が人間の「心」に対する興味関心を生む原点となりました。
いまも「心」は不思議だなあと思います。
不思議じゃないですか?




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