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ブックレビュー「身銭を切れ」

先日読んだラヴァル氏の本で、ラヴァル氏がおすすめしていた本でしたので、図書館で予約をして借りてきて読みました。

アマゾンのブックレビューでも、かなり癖がある著者であると書いている方が何人かいました。実際、結構癖がありました。
しかも、日本人にはあまり馴染みのない宗教についても書かれていたり、海外の歴史についても書いてあるので、世界史が苦手だった私には、ちょっと難しい点もありました。
ただし、それを差し引いても大変面白く、付箋を貼る手が止まりませんでした。
以下は私の中で心に残った記述です。

「アドバイスが間違っていた場合の罰則が存在しない限かぎり、アドバイスを生業としている人間のアドバイスは真に受けるな。」
「リスクを背負ったとたん、私の第二の脳が目を覚まし、複雑に並んだ確率を難なく分析し、解読できるようになった。」
「仕事を最適化したり、手を抜いたり、仕事(や人生)から"効率性"を搾り出せるだけ搾り出したりしようとすると、やがて職人はその仕事にどんどん嫌気が差していく。つまり、職人は魂を捧げている。」
「「アシスタントは雇うな」アシスタントがいるだけで、本能的なふるい分けが利かなくなる。アシスタントがいなければ、いやがおうでも、自分が楽しいと思う物事しかしなくなるので、人生が少しずつそういう方向へと向かっていく」
「つまり、何かをすることが好きな人もいるのだ。それをすること自体が。それが自分のアイデンティティの一部だと感じているからだ。」
「「少数決原理」大きく身銭を切っているある種の非妥協的な少数派集団が、たとえば総人口の3,4パーセントとかいう些細な割合に達しただけで、すべての人が彼らの選好に従わざるをえなくなる。」
「 なぜ放浪修道士は禁止されたのか?……財力があったからではなく、物欲がなかったために、金銭的に自由で、怖いもの知らずだった。」
「昔から、企業による奴隷所有はたいへん面白い形で続けられてきた。最高の奴隷とは、自分が十分すぎる報酬を受け取っていることを知っていて、その地位を手放すまいといつも戦々恐々としている人間だ。」
「あるとき、オオカミと出会った犬が、自分の快適で贅沢三昧な暮らしを自慢し、仲間になるよう誘う。オオカミは犬が着けている首輪に気づき、それは何かと訊ねる。オオカミはその使い道を知ってギョッとする。「君の食べているものなんて、ひとつも羨ましくない」。オオカミはその場を走り去り、今でも走りつづけている。……何があっても、オオカミのふりをした犬にだけはなっちゃいけない。」
「全体のごく一部ではあるが、奴隷でない従業員もいる。そういう従業員の見分け方がある。彼らは評判(少なくとも企業人としての評判)なんてこれっぽっちも気にしちゃいないのだ。」
「重要なのは、何を持っているか、持っていないかではない。何を失うことを恐れているかだ。失うものが多ければ多いほど、その人間は脆くなる。」
「なぜなら、時は身銭を切ることによって作用するからだ。長く生き延びてきたモノは、一定の頑健さを備えていることを事後的な形で示唆している。ただし、その間、害にさらされてきたという条件がつく。というのも、身銭を切り、現実にさらされることがなければ、先ほどから説明している脆弱性のメカニズムは成り立たないからだ。」
「自由人とは、同僚の評価に大きく(または直接的に)運命を委ねていない人間のことである。」
「ほかの人々の評価は、それが現在ではなく、未来の人々の評価である場合にのみ意味を持つ。」
「進歩のパラドックスまたは選択のパラドックス。こんなおなじみの話がある。ギリシアで休暇を取っていた、ニューヨークの銀行家が、現地の漁師と話をした。漁師のビジネスを詳しく調べた結果、その漁師のビジネスを成長させる計画を思いつく。漁師はそんなことをして何の得があるのかと銀行家に訊ねた。銀行家は、ニューヨークで一儲けして、また、ギリシアで休暇をとるのだと答えた。漁師にはバカバカしく思えた。銀行家がギリシアで休暇をとってするようなことを、自分たちはもうしていたからだ。」

著者の考えとしては、リンディの法則という、昔からあるもので、今も残っているものこそ本物、というものがあり、これは確かにそうかもなと思いました。
あとは、職人についての記述、人に使われない生き方の重要性が心に残りました。
私も、会社勤めをしていて、生産性だったり、効率性だったりを日々考え、実践しているのですが、ふと立ち止まると、そんなに素早くやらなきゃいけないほどつまらないことを毎日やっているのかなと思って、とっても悲しくなることがあります。そもそも誰がやっても同じような結果になる仕事って何なんだろうって思ってしまって。
その点、自分の作るものにプライドを持って、細部にまで魂を宿らせる職人の生き方にはとても憧れます。
人に使われずに、職人的な生き方ができたらなぁと、しみじみ思いました。


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