見出し画像

ウィズコロナ時代を生きる子どもたち、アートが心を強くする

 学校が再開し、1か月が過ぎました。徐々に慣れてきた子がいる一方で、「新しい生活様式」という慣れない制約にストレスを感じたり、集団生活の不安が遅れてやってきた子もいるようで、なかなか通常運行とはいかないようです。難しいですね。

 子供たちの生きる力を育み、明日へ向かって笑顔で進めるサポートをしている、小さなキッズアートクラスの取り組みを紹介します。

不安はきっちり受け止める。
安心、安全、楽しい環境を提供する

 「どんなことするの?」「はやく描きたい!」と再開を楽しみにしていた子もいれば、「どうして席が前と違うの?」「知ってるよ、コロナだからでしょ?」「この中の誰かコロナだったらどうする?」「どうして今日は〇〇ちゃん来ないの?」少なからず不安を抱えている子も。

 当初は分散登校をまねて、クラスの人数を半分にし、席のレイアウトも大幅に変更していました。久しぶりで、いつもと違うことが不安を増大させてしまったかもしれない。安心できる環境でなければ、創作に集中できません。まずは、子どもたちの不安をしっかり受け止めることが大切です。

 「誰かコロナだったら…」と心配していたのは、年齢以上にしっかりしている印象の女の子。どう思うのか聞いてみると、「ここにいる皆がコロナになっちゃうよ!」ちょっと震えながら不安を吐き出しました。正しい状況が把握できないと、子供は現実よりもかなり悪い方向に想像しがちです。

 そんな時は、大人が落ち着いて、分かりやすく正確に状況を説明し、大丈夫であることを示す必要があります。換気や消毒など、しっかり対策していることを伝え、うがい手洗い、マスクの着用に加え、目・鼻・口を触らない方がよいことを確認すると、「コロナのこと、ちゃんと知ってるよ。この教室に入る前に、手も洗ったし、マスクしてるからね!」と、しっかりさんらしい彼女が戻ってきました。

まだ学校に慣れない時期、
自分の生活を振り返ってみる

 全員の不安や疑問が解けたところで、「給食はじまった?」「日曜日は何してたの?」などと声をかけながら、細長い画用紙を配る。画用紙が細長いだけで、ワクワクしてくる子どもたち。

 この日のテーマは「自分の一日を絵巻物風に描いてみる」鳥獣戯画を例に絵巻物の説明をしたあとで、筆ペンやサインペンで朝起きてから寝るまでを描くことに。長い紙に描くおもしろさに加え、1年生には時間の表示に慣れて欲しいという思いもあり、時計の文字盤も用意して大好評。

 久しぶりだから休校中の出来事を話したい、やっと始まった学校生活の様子を伝えたい。どの一日を描こうかな?と考えることは楽しく、さらに学校生活が始まったという現実をゆっくりと受け入れていきます。

子どもたちが、自らの力で、自らを癒す瞬間

 「本当は、春休みにパパとママと動物園に行くはずだったの……コロナで行けなかったんだけど、描いていいかな。」わたしの一日、朝起きてから寝るまで。そして、夢の中!紙をさらに継ぎ足して、夢の世界も描きました。ほかの子どもたちも、まねして夢を描き始めました。

 誰のせいでもないけれど、実現しなかった約束。思い通りにならないことだらけだった休校期間。手を動かし、考えることによって、自分の心の片隅に積もっていた悔しさ・やるせなさに気づき、自ら消化して、さらにその先へ進んでいく瞬間。

 いま改めて自分の生活を見直す意義。自分の分身たちが動きまわる絵を、自分の手で巻き、手に収まるサイズに仕上げる体験。子どもたちは、みな穏やかで満ち足りた表情をしていました。

 日頃から、子どもたち一人一人の様子を「観察」し「気持ちに寄り添う」ことによって、最適な環境を整えてやれば、創作活動を通じて「子どもが、自らの力で、自らを癒す」こともできるのです。

アートは人間そのもの、正解も不正解もない。
探求しつづけるもの

 アートに模範解答はありません。挑戦と失敗を繰り返し、自分の納得するまで手を動かした結果に、不正解なんてありえません。手で触る、触って感じるというのは、実は誰もが赤ん坊の頃から持っている懐かしい感覚です。それだけに、手で触りながらモノを作るということは、自分を見つめなおすのに効果的な方法といえるでしょう。アートは、自分でも気がついていない、ありのままの自分に出会う手助けをしてくれます。

 3カ月ぶりに集う子どもたちは、喜びと期待と不安が交錯していました。けれど、不安な気持ちを大人がしっかり受け止めることによって、子どもたちは前向きになれます。見守ってくれる大人がいる、共感してくれる仲間がいる。ここでは、作品は子どもたちの分身であるため、決して優劣の評価をつけられる対象ではありません。ありのままの自分を受け入れてくれる環境が整っているからこそ、自分の探求に没頭できるのです。

 先の読めない不安定な時代ではありますが、いつの日か、自分が生涯をかけてやりたいことが見つかった時に、困難な状況でも自分の頭で考え続けることのできる人になって欲しいと願っています。

【追記】2021/8/24
作品募集中です!第2回アート×ウェブ「こころ ひろがる×ここで つながる」今を生きる子どもたちの展覧会。プレゼント企画もあります。
ぜひ、リンク先ご覧いただき、情報シェアよろしくお願いします。多くの子どもたちに情報が届きますように!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?