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「おかえりモネ」が見つめる“見えない”森林破壊

森林を取り巻くシビアな現実 

いま、気象関係者だけでなく、多くの林業関係者がNHKの朝ドラ「おかえりモネ」に共感を覚えていると思います。
夏木マリさん扮する森林組合の理事長さやかの「先祖から受け継いできた登米の森を守るのが私の役目」という思いと「受け継いでほしい」という期待を感じつつ、気象予報士を目指してモネは後ろ髪をひかれつつ東京に旅立ちます。
実は、日本の森林では土砂災害のような“見える”森林破壊ではなく、“見えない”森林破壊が進んでいます。
海外では違法伐採によって森林破壊が進んでいますが、日本はまったく逆で伐採しないために森林破壊が進んでいるのです。 それは、日本の森林が人の手が入って初めて守られる人工林だからです。


図1手入れがされた森、日光が林床に届き下草が育った複層林
図2間伐されず、密植されたままの森。林床に日光が届かず下草も育たない 

つまり、森林に働く人たちがいて初めて日本の森林は守られるのです。しかし、現実は厳しい。50年かけて育てた杉の木が一本2000円にしかならないようでは生業として成り立たず、伐採して新たに植林し育てることはできません。 林業従事者は高齢化して減り続け、一所懸命植林して育った杉が伐採されないために若返ることができません。人間でいうと糖尿病のような不健康な森林になり、豪雨で被害を受けやすくなっています。 
一見美しい森林で、静かに“見えない”森林破壊が進んでいます。

都市住民だからこそできることは?  

画像335℃の人も入れる低温乾燥庫で、木の香りが保全される

モネは東京に来て、さやかのこと、登米の森のことをいつも心に留めています。そして気象予報士という仕事を通じて何か役に立てることがあるのではないかといつも考えています。
都市に暮らす人々がモネのように、森林と自分の暮らしがどこかでつながっていて、回りまわって自分たちの暮らしに跳ね返ってくるというふうに思えれば、森林破壊を防ぐ大きな力になると思います。
都市住民として、私たち「NPO木の家だいすきの会」では、ここ5年間ほど低温乾燥材の開発に取り組み、2年ほど前から実用化しました。
杉の香り成分は、良質な睡眠、認知症予防、免疫力を高める効果などがあることがわかってきており、低温乾燥材は天然乾燥に近いためにこの香り成分が漏出せず保全されます。
木も生物資源のため、「人工乾燥したコメと天日干しの米ではまったく違う」というのと同じようなことが言えるのです。この低温乾燥材の付加価値を消費者に理解して頂き、森の循環が確保できるような価格で流通することが、 “見えない”森林破壊を少しでも食い止めることができないかと願っています。  


鈴木進/2000年に活動を開始したNPO法人「木の家だいすきの会」代表。木をはじめとする自然素材を活かした家づくりをコーディネートするほか、森林保全や林業に関するセミナーなどを行い、森の大切さを発信し続けている。その人となりはこちらから
http://www.kinoie.org/

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