第一回近畿APD(聴覚情報処理障害)勉強会レポート(中編)

では前編から続きます。
中編では実際に検査現場で行われている検査とそれぞれの目的について、また特徴等です。
特に印象に残ったものだけを書いていきます。
先に述べておきますが、APDの研究におけるサンプル数はまだ限られたものです、数千例のデータがあるような話ではないので、今後の研究次第で数字は今後多少変わる可能性があります。

・早口検査
これは早口で話される音声を両耳で聞くものです。
現時点での特徴的な点として、この検査の結果は二極化する傾向があり、全く問題ない人と+2SDの範囲の人に二分され、中間が見られなかった点があります。
(SD=いわゆる標準偏差で使われる単位、この記事に関係して分かりやすく言うと2SD=すごく検査結果が悪い、という認識でOK)

・複数音声検査、雑音下検査
3-4割の人が苦手

・WISC-4
ワーキングメモリ―(以下WM)に問題を抱える子供が多い、認知や言語能力は高い傾向がある。
見えてくるAPD当事者の傾向としては、全体を見てから細部を詰めるタイプが多く、コツコツとした努力が苦手。

その他の検査結果でも言える点として、全てのAPD当事者が共通して悪い結果を示す結果は殆どないようでした。
また、半分を超えるケースもほぼなく、多岐にわたる検査を通して見えるのは「その人のAPDを構成する要素、能力の偏りの軽重は人によって違う」という点だと感じました。
ここまでで最初に医療面からの話は一旦終了。
次は教員の方からのお話が続きます。

・教育現場でのAPD
まず、APDが実際の特別支援教育の場で周知されているかという点においては
「ほとんど知られていないと思う」
とのことです、これは耳鼻科学会などで論文自体が出ていても「そんなに患者がいるものでもない、特殊なケースだろう」と思われて見過ごされていた部分と似た面を感じます。

・特別支援の場でAPDの子供が配慮を受けるには。
最近は親御さんや学生世代で
「うちの子(自分)って、もしかしてAPDかな?」
と感じて問い合わせを下さる方がぽつぽつとおられます。

そのような場合、まず親御さんはどうしたらいいのかを先生にお聞きしました。

①まず先生に知ってもらう
②その後、どこの学校にも特別支援コーディネーターがいるので、その人に話す


①は分かるとして②の必要性ですが
APDの子供は大抵通常学級にいる事が多いです、その上で先生にお願いして環境の調整や「合理的配慮」をお願いして聴き取りやすさを改善する必要性があるわけですが。

この際に「個別計画書」を作ってもらうようにしないと、その年に受けた配慮や調整が次年度には引き継がれません
毎年内容にムラのある、先生の勘に頼る状況が発生します。

「個別計画書」を制作し、「合理的配慮」のデータをきちんと作ってもらうことで、そのデータは小中高と引き継がれ、より良い教育環境を確保する事につながります。

また同時に、その為には医療機関からの診断書や検査データも当然活用できます。
APDの可能性を感じるなら、可能な限り早い段階で詳細な検査を医療機関で受け、教育現場に反映してもらう事が重要だと言えるでしょう。

後編、質疑応答に続きます

https://note.com/kinki_apd/n/n31b5fe6e03ce

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