サプライズはハムスター #呑みながら書きました
こんばんはー!金魚風船です。
三回目の飲み書きに参加させてもらっています。そして何でもないことを楽しく書ける場所があるって幸せだなと思います。
マリナさん、あきらとさん。
久しぶりの参加ですが、今回も楽しく書きますのでよろしくお願いします。
突然だが、3月6日にぷrっぱ、プロポーズをした。
本当は3月9日が二人の記念日だったので、そこで気持ちを伝えたかった。
しかし会社の食堂のおばちゃんに相談すると、おばちゃんは突然カレンダーを捲りはじめた。
それから「3月6日にしなさい」と宣告された。
なぜプロポーズの話に会社の食堂のおばちゃんが出てくるのか。
それは以前から、食毒じゃなくて、食堂のおばちゃんには多大な心配をかけさせていたことに起因する。
「ねえ、いつ結婚するの?」
「彼女絶対待ってるわよ」
「選り好みしてたら、誰もいなくなるわよ」
とおっせかいを通り越して、脅迫に近い言葉が浴びせられ続けながら、私もこのままではいけないなと内心考えていた。
なので報告しない訳には行かなかったのだ。
しかしプロポーズの日取りまでに突っ込んでkるとは。
「どうして3月6日なのですか?」
「大安だからよ!」
断言であった。私は暦をあまりに気にしないが、人によっては大事なこなるのだろう。
「3月9日はダメですあか?」
私が抵抗すると、おばちゃんはもう一度カレンダーを睨みつけた。
「友引か…悪くはないわね」
「では3月9日に…」
「いえ、大安にしなさい!」
そういう訳でプロポーズの日は3月6日に決定した。
〇
しかし、それ以上に私の頭を悩ませていたのが、プロポーズの贈り物である。
一度、新宿の百貨店にあるジュエリー会場へと婚約指輪の調査に向かった。
これまで縁もゆかりもない場所は、照明が明るくて、店員も客も華やかであった。
八浪中の予備校生のような顔をした私がいても良い場所ではないことは痛い程理解できた。
「本日はどのようなご用件でしょうか?」
挙動不審な私に、ジュエリー店員が優しく語りかける。
2月の初旬であるのに、脇汗が止まらなくなった。
「あ…あのですね…近々結婚しようと、ではなくてプロポーズを考えておりまして」
すると店員は満面の笑みを浮かべて、「それはおめでとうございます」と祝ってくれた。
嬉しかった。
けれど恥ずかしくて、思考が完全に停止してしまい、「ハハア!」と家来のような返事が出るばかりであった。
店員に予算を伝えると、様々な指輪を準備してくれた。
でも見れば見るほど、私はわからなくなってしまった。
デザインとかカラット。もっと言えばブランドも本当にここでいいのか。
飛び交う単語も人生で初めてのものばかりで、頭が痛くなってしまった。
〇
帰りの電車に乗る頃には私はすっかり落ち今dね、落ち込んでしまっていた。
私はこれまで彼女の何を見ていたのか。
彼女の好きなもの。苦手なもの。
それなりに分っていたつもりだったけど、指輪を前にした時に「お前は何もわかっていない」と現実を突きつけられたような気がした。
落ち込んだ電車の中で婚約指輪について調べる。気づけばスマホの広告は指輪ばかりだ。
しかし調べっていく内に、どうやら必ずしも指輪はサプライズであげなくてもよいことであることに気づいた。
むしろ女性が自分のものは自分で決めたかったと書いてある記事もあり、それは私を非常に勇気づけた。
そうか、指輪はあっちに選んでもらえばいいんや。
私は自分にとって都合のよい喜重じゃなくて、記事ばかりを読んで安心に包まれた。
でも安心はしたが、何をあげればいいのか。
その問題を最初から考え直す必要に迫られた。
私はスマホをポケットにしまうと、二人のこれまでについてゆっくりと思い返すことにした。
〇
3月6日。大安。プロポーズの当日。
私はペットショップにいた。
彼女がずっと欲しいと言ってたもの。いつも二人の共通の話題になっていたもの。
目当ての彼はガラス張りの小屋の中で、こっちを見ていた。
「すいません、このハムスターを見てもいいですか?」
他の個体よりも一回り大きくて、ハムスターというよりもモルモットに近かった。
でも他のハムスターが小屋に隠れて眠る中、一匹だけ回し車をぐんぐん走っている姿に好感を持てた。可愛さよりも、元気で長生きしてくれる方が大事な気がした。
もし自分に子どもが出来たら同じこと考えそうやなと思った。
それから更に一時間程悩んだ末に、彼ともう一度目が合い、決心をした。
「この子を頂いてもよろしいですか?」
ペットの飼い方などの説明を受けて、何枚かの契約書にサインした。
自分は何の保険にも入っていないのに、彼の保険には一番良いものに加入した。
年間18000円。安いもんだ。
保険入ったん無駄やったわ、と言えるくらい元気でいて欲しい。
車の助手席に乗せていると、隣でガサコソと音がした。
伝わる訳ないけど、「これからよろしくね」と話しかけてみた。
〇
家に帰ると彼女は仕事から戻ってきており、「どこに行ってたの?」と訊ねた。
ちょっとね、と濁しながら、「プレゼントだよ」と私は彼が入った紙袋を渡した。
彼女は「何?」と言いながら、袋を開けた瞬間、身体の動きが止まった。
「え、なんで…」
「結婚しよう」
学生の頃に考えていた、ロマンチックなプロポーズとは程遠かった。
夜景の見えるホテルでフレンチを食べているはずが、築30年のぼろアパートのリビングでハムスターを渡していた。
後、九割大丈夫だと思っていても、やっぱり怖かった。
彼女はちょっと理解が追いつかんと連呼した後、「全然ムードないわあ」と笑っていた。
図星過ぎて、私も笑うことしかできなかった。
〇
プロポーズから2週間経った。
ちょうど一昨日の土曜日に、二人で婚約指輪を買いにいった。
三つ目の店で本当に気に入ったのがあったらしく、何度もありがとうとお礼を言ってくれた。
自分で決めなくてよかったという気持ちと、来月のクレジットの引き落としは本当に気をつけなければと思いが交錯している。
そしてこの文章を書いている時も、隣で彼はカラカラと回し車を猛ダッシュしている。
名前はさむちゃん。
3月6日に我が家に来たからだと彼女は教えてくれた。
さむちゃん。良い名前だ。
豆苗を異常に好む。
後、食堂のおばちゃんに日程を変更してくれてありがとう、と感謝しなくてはいけない。
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