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【Low Endの処理はもう怖くない】キックとベースを上手にミックスする8つのヒント

最近の音楽、特にローエンドが重視されるダンスミュージック系の楽曲を製作したことのある方は、キックとベースの処理に困った経験があるのではないだろうか?

低域をどのようにミックスするかが重視されるジャンルにおいて、キックとベースのミックスは最優先事項とも言える。ここでは、Alice Yalcin Efe - Mercurial Tones Academy様の動画「8 Levels of Kick and Bass Mixing」をもとにローエンドを処理する8つのテクニックをご紹介したい。

①リファレンス(音量バランス)

まずは音量バランス。

キックとベースのレベルを適正にすることから始めるわけだが、ユニークなのはキックのdBを固定した後に、ベースのみをミュートした状態でバランスをとっているステップ2だ。

1. Kickのフェーダーレベルを-6dBに設定(または定番の-10dBでも◎)
2. Kickと他のすべてのパートをベースだけミュートした状態で再生し、大雑把にミックスして音量バランスを取る
3. ベースのミュートを解除して再度調整(Kickの-3〜6dBに落ち着くはず)

なお、上記のステップ3の音量調整についてはこちらで詳しい解説を見ることができる。

②サイドチェイン

2つ目はおなじみ、Kickをトリガーにしたコンプレッサーのサイドチェインでベースをダッキングする手法だ。

1. ベースのトラックにコンプレッサーを挿入
2. サイドチェインを適用し、Kickをトリガーにしてダッキングを設定
3. Look Aheadがある場合は値を「10 ms」ほど入れて明瞭感を高める

③歪み・色付け

サブベースにディストーションやオーバードライブなどの歪みを加えることで、サブベースの高域部分にカラーを加え響きを豊かにする手法。歪みによって高域の倍音を豊かにすることで、低域をうまく再生できないデバイスでも聴き取りやすくする狙いがある。

Overdrive / Distorsionの適用

高域(Top End)をよりはっきりと聴かせるならEQを併用するとよいだろう。

1. サブベースのトラックにオーバードライブやディストーションを挿入
2. プラグイン内EQがある場合はローパスとハイパスでかける音域をコントロール
3. 歪みの強さやダイナミクスをコントロールするパラメーターを調整し、適度な歪み具合になるように調整
4. Dry/Wetを調整してパラレル処理
5. EQを挿入し、High Shelfで1 KHz付近をやや強調

アンビエンスの追加

さらに、元のベースが白玉ではなくリズミカルなフレージングをしている場合、センドリターンでディレイを加えてサブベースに若干のアンビエンスを加えることで、ミックスにほどよいスペースを作ることもできる。

Echo Tunnelと呼ばれるこのディレイは、リバーブやコンプのかませて以下のような設定になる。

Echo/Delay
Reverb
Comp:ベースにサイドチェイン
EQ:

④グルーブ

ベースを自然に聴かせるようにするには、ノートをすべてグリッドにクオンタイズせず、タイミングにばらつきを与える。いわゆる「ヒューマナイズ」だ。

Ableton LiveとLogicのヒューマナイズの方法については以下で紹介しているので、ぜひ参照してみてほしい。

またAbleton Liveのグルーブ機能についてはこちらでさらに詳述している。

⑤反転EQによる音の分離

一方の音を減衰させることで、もう一方との音の分離をよくする方法。これには反転EQを使用する。

例えば、EQでQをゆるめにしてKickをややローカットし、ローミッドをブーストして、ハイシェルフでブーストするとする。そうして出来上がったEQのカーブをベースにコピーし、鏡のように反転させれば、ブーストとカットが相互に反転した状態になり、より良い分離感が得られるというものだ。

Ableton Liveの場合EQ Eightの右下にある「Scale」という値をマイナス方向に回していくと、カーブが反転していくので、聞きながらきりの良い値にしていくとよいだろう。

なお「反転EQ」に関してはiZotope Nuetronの「Invert Link」機能でも簡単にできるので、そちらを使うのもよい。

⑥ダイナミックEQによるマスキングの除去

ベースにかぶってくる他のトラックのマスキング除去には、ダイナミックEQを活用しよう。ダッキングというよりマスキング除去に使う場合は、マルチバンドコンプよりもダイナミックEQの方が相性が良いことが多い

手持ちのダイナミックEQはもちろん、Pro-Q3などダイナミックEQの機能があるEQや、Ableton LiveではEQ EightにEnvelope Followerを組み合わせることでダイナミックEQの効果を得られる。

1. ベーストラックにEQ EightとEnvelope Followerを挿す
2. ギタートラックにEQ Eightを挿す
3. ベーストラックのEnvelope FollowerでMapをタッチし、ギタートラックに移動してEQ Eightの対象バンドのGainを最小まで下げる。
4. ベーストラックに戻り、Envelope Followerの値を50%、0%にする。
5. ギタートラックに移動し、EQ EightのScaleを調整してカットの幅を調整する。
6. ベーストラックのEnvelope FollowerのGainを変更し、微調整する。
7. 全体を聞きながらちょうどいいスイートスポットを探す。

Envelope Followerについてはこちらを参照のこと。

⑦グループ処理

Kickとベースをグループ処理を施してGlue感を高める方法。Glue CompとChannel EQを使用する。

まずはGlue Compを挿入。コンプはKickのアタックのトランジェントには干渉させたくないので、Attackは長めにしておこう。コンプのかかりを自然にするため、ReleaseとThresholdをうまく調整してなめらかなカーブを描くようにする。次のKickのアタックを殺さないように、リリースがおそすぎてかかりっぱなしにならないように注意。

次に、Channel EQを挿入。ブーストやカットをわずかに入れて全体を調整し、サブベースを弱める。

なお、このときVUメーターでゲインを正しく調整していないとコンプが適切にかからないので注意しよう。

⑧サブベースの処理

マルチバンドコンプを使って、サブベース帯域のカットとブーストを同時におこない、サブベースをよりダイナミックに聴かせる手法。サブベースの帯域で音がなった瞬間にその帯域のみがダッキングされ、コンプのスレッショルドを超えると反対にブーストされる。

マスタリングなどで多様されるようで、FabFilter Pro-MBを使うとやりやすい。

まとめ

いかがだっただろうか?動画に対して駆け足の説明になってしまったので、気になるところは動画をご覧いただければと思う。「キック」と「ベース」ではなく、「Low End」としてまとめて処理することで低音の一体感がさらに増すことだろう。

では、良いDTMライフを!

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