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ゼロから始めるキックの音作り

楽曲制作でドラムのキックを作る際、ドラム音源を使ったりサンプルのキック素材を使っている人は多いのではないだろうか?

このような作り置きの素材は手軽に使えてクオリティーがある程度担保されているものの、どれだけいじり回しても「なんか違うんだよな」というパターンになることも少なくない。

ではどうすれば良いか?そう、自分で作ってしまうのが一番だ。一度作り方を覚えてしまえば、楽曲ごとの調整も容易になるし、毎回音源やサンプルで悩まなくてよくなる。

今回はIn The Mix様の動画「Make Your Own Kick Drums - Punchy and Deep Kicks」を元に、Serumを使用してキックを作る方法を考えていく。

キックの音成分は以下の3種類に分けることができるので、これらを作成してキックの基本的なサウンドを作成し、そのあと楽曲に合わせて微調整していこう。

Sub:基音成分
Body:倍音成分
Attack:アタック感

事前設定

GLOBAL設定でサウンドの品質をMaxにしておき、キックは一度に1音しか出ないのでVOICINGはMONOを選択しておこう。

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Subの作成

Subの音域の作り込みはシンプルで、波形とピッチの選択のみで完結する。

波形

サブベース帯域の音を作成するため、サイン波の「Basic Shapes」を選択。

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オクターブ/ピッチ

超低音の帯域を出すため、オクターブを下げ「-2」に設定。ピッチ(ノート)は楽曲ごとに最適なノートを選択すればOKだ。

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Bodyの作成

Bodyはキックのキャラクターを決める重要な部分だ。アンプエンベロープ、ピッチエンベロープ、フィルターでキックの音をデザインしていく。

アンプエンベロープ

ENV1のSustainをゼロにし、DECAYとHOLDを短めに設定して、音が減衰するようにする。

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ピッチエンベロープ/ピッチダウン

ピッチダウンはキック作りのキモだと言っていいかもしれない。上から下にピッチが急激に下がる動きを作りたいので、ENV2を使用してピッチエンベロープとし、ピッチダウンのエンベロープを作成しよう。Sustainをゼロにし、CRSピッチにアサインする。

その際、ピッチが設定したピッチより高いピッチ(+方向)からゼロ(起点)までを移動するようにしたいので、Shift+Option+クリックで移動範囲を「+〜0」にしておくのと良い。

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またエンベロープではDecayを適度に下げつつ、グラフのポインターを操作整し、カーブをタイトにして減衰スロープを急にしておこう。

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なお、MATRIXの画面ではCRSピッチの値をAMOUNTで微調整できる。値を右に降るとより高い音からゼロまでの音程差が広く、ゼロに近いと音程差が狭くなる。程よいアタック感がある位置を探そう。

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EQで見ると周波数が「高→低」に移動している後鳴り状態になっていることがわかる。

フィルター

フィルターを使用すると、キックの音をさらにクリーンに仕上げることができる。明瞭なアタックから、減衰するに従って暗くなっていく効果をつけることができるからだ。ここではピッチダウンに使ったエンベロープENV2をフィルターにもアサインすることにする(エンベロープを新しく作ってもOK)。

CUTOFFのレンジを適度に調整したら、MASTERボリュームを少し下げて、DRIVEをブーストすると程よい厚みが得られる。

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ENVを設定したらMATRIXに移動して、エンベロープが単極になっていることを確認しておくとよい。双極になっていると上がって下がる挙動になってしまうからだ。

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Attackの作成

Attack成分を強めるためにはノイズを使用する。まずはNOISEオシレーターをオンにし、かつワンショットモードにしよう。

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フィルターでもノイズをオンにしておく(以下の画像では消灯しているが「N」を点灯させておく)。

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Serumにはキックアタック用に膨大な種類のノイズのプリセットが用意されているので、ここから気に入ったものを選ぶと良い。そうすれば音の出始めに小気味の良いクリック音が足される。

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手持ちのシンセにノイズオシレーターがない場合は、クリックのサンプル素材をレイヤーしても同じ結果になる。最後にノイズの音量をLEVELで調整すればOKだ。

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以上でベースの音作りは完了。あとは楽曲に合わせた調整を行なっていく。

楽曲に合わせたサウンド調整

ここまで完成したら、実際の曲に合わせて各種エンベロープを調節していく。

アンプエンベロープ(ENV1):HOLDとDECAYを調整し、減衰の仕方が曲にマッチするよう微調整しよう。
ピッチエンベロープ(ENV2):アタックに影響するので、MATRIXでCRSのAMOUNTを微調整するのも良い。

シンセ上での音作りは以上で、ここからは各種エフェクトを適用してさらサウンドを追い込んでいく作業に入る。

1. EQ:以下の3つのEQを検討し、曲に合う音色に仕上げていく。

ローシェルフ:ローをシェルフでブースト/カットしてローの音量感を調整
カット:300 Hzあたりのローミッドをカットしてモヤつきを低減
ハイシェルフ:ハイをシェルフでブーストしてハイの音量感を調整

2 歪み:ディストーションやオーバードライブのプラグインを追加し、歪みを加えて音を太くする。

3. トランジェント:トランジェントプロセッサーでキックのアタック(クリック)の強調/抑制が可能なので、楽曲にマッチしたアタック感にしよう。

4. コンプレッサー:SSL系のバスコンプなどで音を圧縮すれば、より太くなる。

まとめ

いかがだっただろうか?解説はSerumで行なっているが、やり方を覚えてしまえばどのシンセでも作ることが可能だ。毎回ドラム音源やサンプルを取っ替え引っ替えしている人も、キックのサウンドデザインを覚えることでさらに楽曲にフィットするキックを自作できる。ぜひ自分だけの最高のキックサウンドを作ってみてはいかがだろうか。

それでは、良いDTMライフを!


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