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星の王子〜月へ〜

今日はお菓子パーティー。
僕としおは王国金庫番の智秋に預けていた三ヶ月分のお小遣いであるガンダム十五枚を受け取って、聖マリモ大聖堂に行って朝水とお祈りをして、それから昼まで好きなお菓子をたくさん買い集めた。
帰ってきたらなっパンダが一番乗りだった。
蜜柑と林檎をたくさん持っていた。
『パーティーは夜からだよ』
『ここでなっ!待つ』
椅子に座った。
しおと大きなテーブルを準備してクロスを敷いたけど綺麗にならない
まあいいか。
皿とコップを並べ終わった。
そうするとパンダが
『ここをなっ!こうする!』
『ここはなっ!こうする!』
テーブルクロスがぴいんと綺麗になる。
『そしてなっ!ひく!』
スシャっと綺麗にテーブルクロスが抜かれた。
おお〜!お見事!
僕もしおも関心した。
だがやり直しじゃあないか。
しおが私もやりたいと言い出し、なっパンダとしおはテーブルクロス引きの練習を始めてしまった。
しお『……なっ!……なっ!』
なっ『……なっ!……なっ!』
僕はそれを見ているだけでやることがない。
どうやらしおは飲み込みが早いようだ。

トットットットッと足音が近付いてきて、りりぃが部屋を覗き込んできて、
『アンちゃ〜ん!厨房貸してね〜』と言い残しまた駆け足は離れていった。
なにやら大きな荷物を抱えていたぞ。
僕は厨房へ向かう。


厨房に行くと智秋がりりぃに設備やら道具やらの説明をしていた。
『アンちゃん、なかなかいい厨房ね。でも私の店のオーブンにはかなわないわ』
りりぃは焼きたての菓子パンを作ってくれるようだ。
『王子、その方もお友達ですか?』
振り返るとなっパンダが立っていた。
気配なんて微塵もなかったのに。
なっパンダは持っていた大量の林檎を宙に投げ、包丁を掴んだ。
『これはなっ!こうする!』
鮮やかな動きで林檎を切りつける。
そうして林檎が皿の上に着地した。
なっパンダが指をパチンと弾くと林檎が兎型になった。
一同『おお〜!』

なっパンダは厨房から出ていった……かと思うと蜜柑を抱えて戻ってきた。
蜜柑を台の上に置き、両手にひとつずつ掴んだ。
『これはなっ!こうする!』
蜜柑を握り潰し、コップに注いでいく。
それを何度も繰り返し、たくさんの蜜柑ジュースが出来上がった。

パーティー会場に戻るとしおが何かにとりつかれたかのように『なっ!なっ!』とテーブルクロス引きをやっていた。
『しお、もうすぐ着替えたほうがいいんじゃないかい?』
この日のために僕としおはDIOに洋服を作ってもらったのだ。

僕は格好の良い白のフリルシャツに、しおは黒のマテリアルドレスに着替え皆を出迎える準備をする。
サボ犬、透子、ハコ、みゃーがやってきて、久嗣がメジャケンに乗ってやってきた。
『きたよ〜!』

僕達は皆をパーティー会場に案内した。
僕『みんな、きてくれてありがとう。今夜は存分に楽しもう。それと今日はもう一人僕の友達を招待している』
僕がスッと手をあげるとムーンライト伝説の演奏が始まる。


颯爽とステージに現れるアイドルあいりーん。
一同『うお〜!』
あいり『ゴメンね♪素直じゃなくって♪夢の中なら言える♪思考回路はショート寸前♪今すぐ会いたいよ♪』
みんなで大合唱だ。
泣きたくなるよなムーンライト♪
電話もできないミッドナイト♪
だって純情〜どうしよう♪
ハートは万華鏡♪

月の光に導かれ♪
何度も巡り会う♪
星座のまたたき数え♪ 占う恋のゆくえ♪
同じ王国(くに)に生まれたの♪
ミラクルロマンス♪

サプライズライブが終わり、あいりーんがステージから降りる。
あいり『今日は楽しく過ごそうね☆』
僕『あいりーんありがとう!では皆さんお待ちかね、お菓子発表にしよう!』
一同『うお〜!』


僕『僕が用意したのはもちろんどなつ!』
一同『うお〜!』
しお『私からはフルーツパヘ!』
一同『うお〜!』

久嗣『私はね〜北国のチョコケーキ!と苺のタルト!』
一同『うお〜!』
みゃー『私は百色キャンディ!』
一同『うおー!』
透子『金平糖と綿菓子とクッキーよ!』
一同『うおー!』
サボ犬『団子!みたらし!あんこ!きなこ!醤油!ゴマ!』
ハコ『手打ちうどん!』
一同『うおー?』
僕『メジャケンは木の実を食べると聞いていたのでしおとたくさん集めていた』
メジャ『がお〜!』
アリアがまだ来ていないようだが……。
しお『アリア!』
アリアはサーモンまるまる一匹引きずって部屋に入ってきた!
一同『ずこー!』
なっ『魚〜!』

りりぃ『できたわよ〜!』
りりぃが焼きあげたパンを運んできて、みんなスッと起きあがった。
パンを並べて、サーモンもとりあえずそのまま並べて、卓上がロマンスで満たされたってわけさ。
なっ『一番乗りだからなっ!特等席!』
そう言ってなっパンダはテーブルの下に潜り込んだ。
#星の王子
するとしおがテーブルクロスを掴んだ。
しお『これをなっ!ひく!』
スシャっと綺麗にテーブルクロスが引かれた。
一同『おお〜!』
テーブルの中央に丸く穴が開いており、そこからなっパンダが出てきた。
なるほど特等席ね。

それからパーティーが始まって、みんな好きなお菓子を食べて、なっパンダは特等席でくるくる回って、百色キャンディで舌に色がついてみんな見せ合って、たくさん話をして、智秋がサーモンの解体ショーをして、みゃーが手品を披露して、うどんを啜って、みんな笑った。


パーティーが少し落ち着いた所でみゃーが僕を手招く。
僕はみゃーに続いてベランダに出る
みゃー『ねえ王子、この世界抜けださない?』

僕『抜け出す?』
みゃー『なんてね、月をみて』
僕は月を見上げる。
満月がこれ以上ないくらいに青ざめている。
みゃー『あれはね、月の裏側からの緊急招集の合図なの』
僕『月で何か問題が起こっている?』

みゃー『そう、何が起こっているかはわからにゃいけど……』
僕『なぜみゃーは月の合図がわかるの?』
みゃー『私達は月の民だから』
みゃーはパーティー会場の誰かを手招く。
全員来た。
またみゃーが手品を見せてくれると思ったのかもしれない。


みゃー『あら、みんなきちゃった。まあいいか』
久嗣『なになに〜?』
あいり『てじにゃ〜?』
みゃー『……私とアリアはね、月の民にゃの』
アリア『……………………はっ‼』そうだった!という顔をして、すぐに真面目な表情になった。それが月の民らしいかは僕にはわからない。

みゃー『そうして今、月でとても大きな問題が起こってるわ。あの青ざめた月は私とアリアへの緊急招集の合図にゃの』
みゃーは今にもぴしいと割れてしまうんじゃないかと思える氷のような満月を見上げた。
みんな同じように見上げた。
久嗣『お〜あおい〜!』
りりぃ『綺麗ね』
サボ犬『問題とは?』

みゃー『初めてだから何が起こっているかわからにゃいわ。私とアリアは月の魔法使いで魔法の修行で地球に来てるの。さっきの手品も魔法にゃの』
一同驚愕!
みゃー『それに私とアリアだけじゃあ手に負えない気がする。私達を呼び出すくらいだから……だから君達に一緒に来て欲しくて』

僕『僕は行く』
久嗣『いくいく〜!』
サボ犬『自分も行きます』
ハコ『私も……貴重な材料があるからな』
しお『もちろん私も』
あいり『私も行こうかな〜☆』
透子『一緒に行きたいんだけど、夢羊の派遣を休むわけにはいかないわ。悪夢は人を蝕む』
りりぃ『私も王国の朝食と昼食の準備があるわ』
パーティー会場にいるなっパンダをみる。
なっ『コタツはなっ!正義!』
テーブルが更に細工されコタツになっている。
僕『では透子とりりぃは普段通り王国の生活を守ってもらう。なっパンダは自由にくつろいでる』


サボ犬『月の裏側へはどうやって?』
みゃー『曇り無き鏡面』
アリア『静かな湖の底』
しお『森の中に湖あるよ!網の近く!』
サボ犬『水の中ですか〜』
みゃー『泳ぐ必要はないですの』
みゃーはそう言って僕をみる。
僕『星で突入?』

みゃー『そうですの、湖に映る満月から入って底まで真っ直ぐいけば月の裏側に着きますの』
僕『う〜ん、星にはみんな乗れないよ。僕も合わせて四人までだ。それ以上だと制御できない』
久嗣『メジャケンがいますよ〜!飛べるし泳げるしスーパードラゴンだ〜!』
メジャ『がお〜!』

ハコ『アンドレ、これを君に』
そう言ってハコは透き通る星を僕に渡した。
僕『これは?』
ハコ『貴重な鉱石、センチメタルって奴が手に入ったから作った。あの星と共鳴させることができる。胸に当てて呼んでみな』

僕は言われたように透き通る星を胸に当て念じた。
空を見上げる。
あいり『あ〜星が来た〜☆』
あいりーんの指差す方を見ると星が地を這うような低空飛行でこちらに向かって来ている。
ハコ『最短距離で来たね』
僕は早く来てくれと念じたのだ。

ハコ『そうだ。しおにはこのマテリアルピアスを』
しお『わ〜きれ〜』
ハコ『つけてあげよう。ん?この銀の髪留めは?』
しお『soraさんがくれたのよ。soraさんはアクセサリー作れるの!』
ハコ『一級錬金術かな。それで久嗣は私に何か用かな?』
久嗣がハコを見つめている。

久嗣『もしかして、あなたがサンタさんですか?』
ハコ『いやっ!そういうわけじゃな……待って』
ハコは少し考えてポケットをまさぐる。
そうしてチョコレイトを取り出し久嗣に渡す。
久嗣『これこれ〜!』

ハコ『それであいりは私に何か用かな?』
あいりが恥ずかしそうにハコに視線を送っている。
あいり『あのっ☆私は去年サンタさんにクマのぬいぐるみをもらいました☆いつも一緒に寝ててよだれとかついたりしてますけど大事な友達ですっ☆名前はゴンザレスでクマゴンと呼んでます☆』
ハコ『だから私は……ちょっと待って』

ハコ『サボ犬!りりぃ!並ぶんじゃない!まさか透子まで……』
その列になっパンダも加わろうとしている。
なっ『順番はなっ!守る!』
サボ犬『年越しの瞬間はジャンプします!』
りりぃ『私は世界一のパン屋になるわ!』
透子『最近、夢羊達が光ってる気がするんだけど、どうしてかしら?』
なっ『コタツでなっ!世界を覆い尽くす!』


みゃー『ブラックキャットマジシャンガール!』
ハコ『その通りだ……』
アリア『語尾ににゃーとかつけた方がいいかな?……いいかにゃー?』
ハコ『つけてみてもいいんじゃないか……』
智秋『みんなの幸せを願います』
ハコ『素晴らしいよ……』
サボ犬『年越しの瞬間にフリスビー投げてくれませんか?』
ハコ『さじを投げようか……』
僕『ハコ、そろそろ出発しよう』
ハコ『そうしよう……』

僕、しお、みゃー、アリアが星に乗る。
サボ犬、ハコ、久嗣、あいりんがメジャケンに乗る。
透子『どうか気をつけて』
りりぃ『焼きたてに間に合うように帰ってきてね』
僕達は出発する。

夜風は冷たい。
森まではすぐだ。
しお『おにいちゃん、ほらあそこ!』
よく見ると湖に青ざめた満月が映っている。
僕『みゃー、これからどうするの?』
みゃー『私とアリアで合体魔法を唱えますの』

アリア『森の木々よ、風を遮りたまえ。ディープフォレスト』
みゃー『留まる空気は水面に積もる。ストーンエアー』
アリア『鏡面となりし水面を越えるは月明かりのみ。ムーンライト』
みゃー『月明かりは底をとらえ扉となる。オープンゲート』
アリア・みゃー『月明かり辿る月下の黒猫。ブラックキャットマジシャンガール!』
風がやんで波が収まり月明かりはより強くなった。

しゃどーむーんに行く

みゃー『大成功ですの!湖に映った満月を通って月の裏側まで行けますの!』
アリア『やった〜!にゃ〜!』
僕はメジャケンを振り返る。
僕『ついてきてね』
そうして満月に向かう。
しお『遊園地みたい!』
僕は大きく息を吸い込んだ。
飛び込む!

すう。
着水の衝撃はなかった。
それに水中なのに苦しくない。
みゃー『何か加護を受けてる?』
僕『加護?今日は日曜日だから聖マリモ大聖堂に行って朝水と祈ったよ』
みゃー『では彼女の加護ね』

メジャケンを振り返ると久嗣は頬を膨らませて、息止めてるもんねーみたいな仕草を僕に見せてくれた。
ハコは涼しい顔だ。
あいりんは何故か優雅に舞っている。
サボ犬は険しい顔でメジャケンの尻尾にしがみついている。
なぜそんな状況に。
アリア『もうすぐにゃ〜』

湖の底に溜まった月明かりを通り抜ける。
そこには地球と大して変わらない風景が広がっていた。
アリア『あのお城へ向かうにゃ〜』
どなつ城と同じくらいの大きさの城だ。

城に到着。
久嗣はメジャケンから飛び降りて僕の方へ走ってくる。
久嗣『さっきのは息を止めてると見せかけて〜チョコレイトを食べてました〜!おどろいた〜?』
僕『騙されちゃったな』
僕は笑ってしまう。

続いてあいりーんが走ってくる。
あいり『さっきのは月光の舞いよ☆』
僕『てんてこ舞いかと思ったよ』
あいり『むき〜☆チョップ☆チョップ☆』
あいりーんは僕の鎖骨を的確に狙ってくる。

続いてサボ犬がよろよろふらふらと歩いてくる。
サボ犬『さっきのは僕がメジャケンを押してたんですよ。ひょっとすると何か大きな勘違いをしてるんじゃあないかと思いましてね。念のために』
僕『かなりのワン力を隠し持っていたんだね。これから頼りにするよ』
サボ犬はしまったぁというような表情を浮かべる。


僕達はアリアとみゃーに続いて城内に入る。
みゃー『大魔導アズール、天動士ナミ。ただいま戻りましたですの』
アズール『よくもどりました。彼等は?』
みゃー『地球での友人ですの』
アリア『今回、力を貸してくれるのです』
アズール『理解しました。彼は星の王子ではありませんか?』
僕に言っているのか?

サボ犬『僕は星の王子ではありません。サボ犬といいます』
一同驚愕!
アズール『……サボ犬ですね。ではそちらの彼は星の王子ではありませんか?』
僕『僕も星の王子ではありません。どなつ王国の王子アンドレといいます』

ナミ『どなつ?随分前にここに来た少年もどなつの国から来たと言っていましたね』
アズール『魔法の練習にきた少年ですね。彼のご子息かしら』
父のことだろうか。
だけど月の裏側にきたなんて話は聞いたことがないや。
アリア『それで緊急招集の理由とは?』

アズール『問題というのは星の材料採取に行ったN.Sが戻ってこないのです。N.Sの愛馬、ペガサスの佐助だけが帰ってきたのですが……』
ナミ『今年は二十四年に一度の一等輝く星の生成を行う年です。それと繋ぐ小さな星は準備できていますが肝心の一等輝く星がまだなのです。

アズール『……そういえば先程言った少年がきた時も二十四年前の一等輝く星の生成の頃でした』
ナミ『流星となった幾つかの星はここへ戻ってきます。それを集めて一等輝く星を生成する予定でしたが、その流星が最近全く帰ってこなくなりました』
流星の通り道に僕が網をしかけたからだ!

アズール『私達はここを離れられません。ナミは星の配置と軌道を定め、私は星達がぶつからないように軌道修正を行わなければなりません』
ナミ『N.Sの安否確認にも材料採取にも行けないのです。それにN.Sがいなければ星の生成は行えません』

アズール『星の生成を行う事ができるのは二人だけ……N.Sとそこにいるハコだけです』

ハコ『羊に徹しきれなかったか。黙っていれば…………まあわかるか。今年が二十四年に一度の年だというのは知っていたからね』
ハコは羊をいつもより深く被っていた。ハコも月の民だったのか。
アズール『暫く振りですね』
ハコ『ここには戻ってくるつもりはなかったのですが、空の一大事ですから協力します』

アズール『ありがとう。ではあなた達にはN.S捜索と材料採取に行ってもらいます。ハコはここで星の生成の準備を』
ハコは頷く。
サボ犬『必要な材料とは?』
ナミ『星水、星屑、金色の糸です。詳細はN.Sが知っています』

アズール『では材料を入れる袋を……』
そういってアズールが取り出したのはクマの形のリュックサック。
あいり『あ〜ん、私が持つ〜☆』
アズール『中は四次元になってますのでたくさん入ります』
あいりーんがクマを背負う。

アズール『何か?』
久嗣がアズールをじいっと上目遣いで見つめている。
久嗣『あなたもサンタさんですか?』
アズール『いやっ!そういうわけでは……少しまってください』
アズールポケットをまさぐる。
そうして取り出したのはチョコレイト。
久嗣『やり〜!こいつだよ!こいつが欲しかったんだ!』

アズール『あら、あなた魔法が使えますね』
久嗣『そうで〜す!私魔法つかえちゃってま〜す!』
久嗣は肩からさげていたカバンからスケッチブックと虹の筆を取り出し何かを描きはじめた。
久嗣『飛び出せ!どなつ!ほほいのほい!』
するとスケッチブックからどなつが飛び出してきた。
チョコファッションだ!

ナミ『恐らくもぐもぐN.Sはもぐもぐ最初に南の森森に向かったもぐもぐと思います』
みゃー『水の魔女のところですの?』
アズール『そうです。水の魔女、絵璃だけが星水を精製できるのです』
僕『わかりました。まずそこを目指します』
僕達は南の森森を目指すことにした。

ナミ『この地図を持っていくといいでしょう。シャドームーン全体の地図です』
そう言って天動士ナミは地図を渡してくれた。
僕は地図をあいりーんのクマに入れようとするが開閉する場所がない。
『口からや』
クマが喋った!
『ワイの名前は虎次郎や、トラジと呼んでくれ』

久嗣『クマなのに〜トラジ〜!ふしぎ〜!』
しお『握手して〜!肉球触らせて〜!』
あいり『トラジ〜私の背中はあなたに預けたわ〜』
トラジ『あいりはん、ワイの背中よろしゅうたのんます。みなはんもよろしゅう』
二人は……一人と一匹は……一人と一袋は……背中を預ける仲に。

久嗣『どれどれ』
しお『どれどれ』
久嗣がトラジの口の中に頭を突っ込んで、しおは肉球をモミモミしている。
久嗣『ひろ〜い!けどなにもな〜い。あっ!虎がいる!お〜い!』
トラジ『久嗣はん、それがワイの本体でっせ。しおはん!くすぐったくてかなわん!やめとくれ〜』

しお『ソイヤ!ソイヤ!ソイヤ!』
モミモミモミモミ!
ぷにぷにぷにぷに!
アリアもみゃーもサボ犬も見惚れている。
というか巻き込まれた。
肉球という肉球に次々と手を伸ばし全ての感触を楽しむしお。
しおの背後には千手観音像が見える。

僕『しお、そろそろ行こうか』
しお『ふーっ。兄者、我は肉球を真の柔と捉えたなり』
しおは僕の知らない域に達しているようだ。
僕『さあ、みんな行こう』
僕達は星とメジャケンに乗って南を目指す。

地図を頼りに南の森森の入口上空まできた。
かなり大きな森森だ。
僕『ここからは歩いていこう』
僕達は南の森森に入る。
空気がピリッとする。
僕『トラジ、水の魔女のいる場所わかるかい?』
トラジ『最初の別れ道をな、左に行った先や』

トラジの言った通りに進むと家がある。
僕はトントンと扉を叩く。
返事はない。
もう一度。
すると扉が開く。
『あら、N.Sじゃあないのね。子供ばかりでなあに?』

みゃー『ししょ〜お久しぶりですの〜』
アリア『こんにゃちわ〜』
絵璃『まあ黒猫ちゃん達がい一緒なのね』
僕『あなたが水の魔女ですか?』
絵璃『そうよ。水の魔女といっても、水属性だけじゃなくて魔法は全て使えるわ。誰よりも上手にね』

絵璃は想像していたよりずうっと若い。魔女というのはお婆さんのイメージがあったりするのだ。
僕『N.Sは最近来ましたか?』
絵璃『三日前に来たわ。何かあったのかしら?』
みゃー『一等輝く星の材料採取に行ったまま帰ってこないらしいですの』

絵璃『湖に水を汲みにいってここへは戻ってないわ。他の材料を採ってからくると思っていたんだけど』
アリア『湖で何かあったにゃ?』
絵璃『そうかもしれないわね。アリア、語尾どうしたの?』
アリア『猫的存在感を前面にアピールしてるにゃ〜』
絵璃『まあまあいい感じよ』

あいり『アンドレ、湖にいってみましょうよ』
僕『そうしよう。絵璃、ちなみに星水の精製に必要な水の量はいくつ?』
絵璃『湖の半分くらいよ』
僕『そんな量をどうやって運ぶの?』
絵璃『マテリアルよ。そこのお嬢さんが持ってるじゃない』

しお『ハコさんがくれたピアス?』
しおは耳に手をやる。
絵璃『それで水を吸い上げることができるわ。一つで湖の半分入るのよ』
久嗣『トラジ助かったね〜』
トラジ『せや、そのモラトリアルいうのがなかったらワイが水をがぶ飲みせなあかんとこやったわ!』

サボ犬『それを言うならモラトリアムやしマテリアルでんがな!』
サボ犬が立ち上がってトラジにぴしいっと突っ込む。
僕『さあ、みんな湖に向かおう。トラジ、地図を』
トラジ『アンドレはん、冷静やな。はいはい地図ね』
僕『絵璃、湖はどこ?』
絵璃『ここ』
絵璃は湖を指差す。

湖は森森から西の方にある。
僕『よし、行こうか』
絵璃『ちょっとそこのワンちゃん』
トラジ『ワイのことでっか?』
サボ犬『ドアホン!ワンちゃんいうたら僕のことや!』
絵璃『ピンポーン!そう、二足歩行の君。あなた魔法の素質があるわ』

トラジ『そこまで言うトラんがな!』
サボ犬『小魔導士か末魔導士くらい?』
トラジ『おみくじみたいに言うな!』
絵璃『いいかしら?どの程度の才能があるかはわからないわ。未知数です。私がその扉を開けてあげましょう。此方へ』
サボ犬は絵璃の前に立つ。

サボ犬『痛くありませんかね?』
絵璃『……平気よ。我慢できる程度』
サボ犬『いやっそれなら遠慮……』
絵璃はサボ犬の頭に手を翳す。
絵璃『永久と無限にたゆたいし全ての心の源よ。盟約により我が手に集いて力となれ。秘められし力よ。目覚めよ』
サボ犬の体が輝き始める。

サボ犬の輝きは強さを増していき、目が開けていられないほどになる。
ピシャーン!
サボ犬『いた〜い!』
光が収まったようなので目を開ける。
久嗣『あ〜お尻が光ってる〜!』
あいり『サボ犬、お尻の穴が星形よ!』
アイドルがお尻の穴とか言っていいのだろうか。

サボ犬『あ〜痛かった……でもこの痛み癖になりそう』
トラジ『アカン!違う扉も開きよった!』
絵璃『これでワンちゃんは魔法が使えます。星属性の攻撃タイプです。お尻から星を飛ばして攻撃できます。詠唱は既にあなたの頭の中にあるでしょう』
サボ犬『どうりでお尻がヒリヒリするわけだ』

絵璃『何か?』
久嗣が絵璃を見つめている。
久嗣『あなたが魔法のサンタさんですか?』
絵璃『いいえ、違います。ですが……』
絵璃はポケットをまさぐりチョコレイトを取り出し久嗣に渡す。
久嗣『……ずっと待ってた。会いたかったよハニー』


僕『さあ、今度こそ湖に向かおう』
絵璃『最後に一つ。湖から吸い上げる水は半分までになさい。これは約束よ。マテリアルピアス一つ分だけ』
僕『理解した』
そうして僕達は来た道を戻り、星とメジャケンで湖に向かう。
湖は静かで波もない。
僕達は湖の畔に下りる。

しお『あ〜花がたくさん咲いてる〜』
あいり『ほんとだ〜☆』
湖の周りをぐるっと一周青い花が咲いている。
二人は花の元へ走り出す。
あいりの背中のトラジの口の中から久嗣が覗いている。
久嗣『入ってま〜す!』
なぜ?

湖の水はずいぶん減っているように見える。
しお『おにいちゃ〜ん!水の中に馬がいて人が刺さってる〜!』
突然バシャンバシャンと水面が弾ける。
馬がたくさん飛び出して来た。
みゃー『ユニコーンですの!』
僕は駆け出す。

ユニコーン達がしおとあいりーんに襲い掛かろうとしている。
僕『しお!あいりーん!』
僕は全速力で走る。
僕『二人共!逃げろ!』
間に合ってくれ。
僕の脇を影が抜けていく。
サボ犬だ!
速い!

速い!速い!
何か言ってる。
サボ犬『燃えあがるハリウッド!砕け散るミラーボール!』
地を駆けていく様は狩りを行うチーターみたいだ!
サボ犬『どっかしらヤられてる!天国はスパンコール!』
あっという間に二人の元へ辿り着いて飛び上がりお尻をユニコーンに向ける。
サボ犬『きらめいた閃光が乱れ飛ぶ!ピストル・ディスコ!』
お尻の穴から星がズバババババババ〜ンと飛び出してユニコーン達に命中する。


十数頭いたユニコーンはみなよろよろと水中に逃げていった。
僕はようやく二人の元へ辿り着く。
僕『平気か?』
しお『大丈夫、なにもないよ』
あいり『馬がきて刺されそうになったらサボ犬がズバババババババ〜って☆驚きの連続よ☆』
しお『またきた』

湖の方を振り返るとさっきより二倍くらい大きなユニコーンが飛び上がっていて、角には人が刺さっている。
ドッシンと着地。
ユニコーンは頭を振り、刺さっていた人を落とす。
アリア『N.S!』
N.S『うっ……ぐう』
アリア『風の撫ぜる仕草よ。彼の傷を癒したまえ。ヒーリング!』

アリアの魔法でN.Sの傷は回復している。
僕『みんな下がれ!』
あれ、僕はどうやって戦うんだ?
僕『サボ犬!頼んだ!』
サボ犬『言われなくとも!ユニコーンの親玉か。やっつけてやる!乱れ飛ぶ!ピストル・ディスコ!』
ズバババババババ〜ン!
しかし、ユニコーンには大したダメージがない。

サボ犬『くっ、もう一度!乱れ飛ぶ!ピストル・ディスコ!』
ズバババババババ〜ン!
だがやはりユニコーンの親玉にはほとんど効いていない。
僕『どうすればいいんだ』
ユニコーンの親玉は今にもこちらに突進してきそうだ。

ザバン!
振り返ると湖からなっパンダが現れた。
しお『なっさん!』
どうやってきたんだ?
なっパンダはサボ犬を見つめている。
サボ犬『なんでしょう?』
なっパンダはサボ犬のお尻を指差す。
サボ犬『もう一度?』
なっパンダは頷く。

サボ犬『ようし!乱れ飛ぶ!』
なっ『これをなっ!こうする!』
なっパンダはサボ犬の尻尾を掴みサボ犬の背中の方へ押し付ける。
サボ犬『ピストル・ディスコ!』
それと同時になっパンダは掴んでいた尻尾を放す。
ズババババババババババババババ〜ン!
先程よりも勢いのついた星がユニコーンに命中する。
なっ『五倍なっ!』

ユニコーンの親玉はすごすごと湖に戻る。
気付くとなっパンダはもういない。
僕『N.Sは?』
N.S『ああ、もう平気だ。アリアありがとう』
N.Sは起き上がり、背伸びをする。

N.S『奴等、俺のマテリアルを奪おうとしやがった。あれだけのユニコーンを相手に粘ったんだか、親玉にやられちまった。まあ、なんとか佐助だけ逃がしたってわけさ。そのあと水責めだ。酷いだろ』
それで湖の水位が下がっていたのか。
しお『あっ!ピアス落とした!』

しお『たぶん湖に……』
湖を覗き込むと先程まであった水が無くなっており、城がある。
ユニコーンの親玉が城に入っていくのが見える。
あいり『半分までしか水を吸い上げちゃいけないっていうのは城を隠すため?』

グゴゴゴゴゴゴ!
城が浮かび上がってくる。
僕達と同じ高さで止まる。
入口に男が立っている。
『坊や達のおかげで間に合ったよ。もう二度と会うことはないだろうが私の名前はジョーカーだ』
するとまた城が動きだし、高くまで上がって何処かへ消えた。

僕『今のは?』
N.S『俺にもわからん。とりあえず絵璃の所に戻るか……で君達は何者?』
僕『僕達は地球のどなつ王国からきました。月の知らせを受けたアリアとみゃーに協力する者です』
N.S『なるほど。俺が馬に刺さってる間に期限が迫ってきたからな』

僕達が乗ってきた星とメジャケンを見てN.Sが驚く。
N.S『ドラゴンに星使いかよ!最近の子供はスケールが違うな!』
そういうN.Sも若い。青年という言葉が似合うくらいだ。
僕達は絵璃の所に戻る。

湖の底にあったマテリアルピアスを拾い、森森へ向かう。
N.S『このマテリアル上等だな』
しお『ハコさんがくれたのよ。ハコさん、知ってるでしょ?』
N.S『ハコが?』
N.Sは何か考え込んでいる。
絵璃の家に辿り着いた。

僕『先に言うと、約束は守れませんでした』
絵璃『ということはジョーカーが放たれたのね』
僕『ええ、ジョーカーという男と城はどこかへ飛んでいってしまった。去る前に間に合った、と言ってました』
絵璃『ジョーカーについて話しましょう』


絵璃『最初に、ジョーカーの正体や素性はわからないわ。彼は突然このシャドームーンに現れ、そして、この国を滅ぼそうとした。たった一人で、何かを成す為に。私と大魔導とで戦ったわ。地球からも助けがきてくれて……でも結局倒すことはできなかった。城ごと湖の底に沈めることで精一杯だったの。水に結界の魔法を注いで彼を閉じ込めたわ。私が水の魔女と呼ばれるのはそこからよ』

絵璃『さあ、ジョーカーより先に解決しなきゃいけないことがあるでしょう』
N.S『星の生成だ』
絵璃『材料は?』
N.S『水はとってきた。星屑と金色の糸がまだだ』
N.Sはリングを絵璃に渡す。
N.S『俺のはリングのマテリアルだ』
僕達に向かって言った。

絵璃『私は大急ぎで星水を精製します。あなたのマテリアルも貸してくれるかしら?』
しお『はい、どうぞ』
N.S『星屑は湖の更に西にある。金色の糸は夢羊だ』
僕『夢羊⁈知ってる!地球の友人が飼ってる』
N.S『だったら話は早い。友人を呼んでくれ』
どうやって?

久嗣『はいはいは〜い!私、大きな画用紙があったら魔法で呼べま〜す!』
僕『でも魔法は一日一回じゃなかった?』
絵璃『さっきあげたチョコレイトで魔力回復できるわよ』
久嗣『もう食べたので回復してますよ〜』

N.S『では俺はここで馬鹿でかい画用紙を作る。君達は星屑を採取してきてくれ。絵璃は星水の精製。君達が星屑を採ってここに帰ってきた頃には画用紙も星水も完成しているだろう。そうして城に戻り羊飼いの友人を呼び出してもらう。それから俺は一等輝く星の生成を行う』

僕『ハコが城で準備してるよ』
N.S『きてるのか……これほど心強い奴はいないぜ』
星の生成ができるのはこの世界に二人しかいないのだ。
僕『星屑はどこに?』
N.S『湖の西におかしな家がある。そこの住人に聞いてくれ』

西へ向かう道中。
あいり『N.Sさんとハコさんって何かあったのかな?』
僕『以前、喧嘩でもしちゃったのかもしれない』
しお『あとで仲直りできたらいいね』
久嗣『おかしな家はっけ〜ん!メジャケン全速ぜんし〜ん!』
なるほど、お菓子な家ね。

お菓子な家に到着。
みんなドキドキしているのがわかる。
表札には『まおうみりす』と書いてある。
僕『こんにちは〜』
僕はトントンと板チョコを叩く。
返事はない。
僕はもう一度板チョコを叩く。
僕『あっ!』
割れちゃった。


久嗣『証拠いんめつ〜!』
そう言って久嗣は割れた板チョコを食べた。
しお『おにいちゃん、わたしも証拠隠滅したい』
あいり『アンドレ、私も証拠隠滅してあげる』
みゃー『証拠隠滅ですの!』
アリア『証拠隠滅にゃ〜!』
サボ犬『証拠隠滅ですね!』
トラジ『証拠隠滅したろやないかい!』

お菓子な家の扉は無くなった。
証拠隠滅?
『誰だ⁈』
背後から声がした。
振り返るとピンクのうさぎがいた。
僕『君がまおうみりす?』
みりす『そうよ』


僕『星屑を探してきたんだけど知ってる?』
みりす『ほう、星屑を欲する者か。まあ我が城で少しばかり話をしようか。久しぶりの来客だからお茶でも飲んでいきなさいよの意味よ』
みりすは視線をお菓子な家に移す。
みりす『扉がない!開いてもない!閉まってもない!無い!どないなっとるんじゃ〜⁈』

みりすは激怒した!
みりす『必ず、かの邪智暴虐
な輩を除かねばならぬ!ねえあなた達、犯人を見なかった?』
みんな一斉にそっぽを向いて口笛を吹き始める。
ぴー!ぴゅー!ふゅー!すー!
そのハーモニーは風に乗り大空へと羽ばたく。

みりす『くくく、知らぬと申すか……まあいいわ、どうせお腹の中に証拠隠滅したんだろうし』
ドッキーン!
僕達の心臓はバビュンと飛び上がり先程の口笛を追い抜き雲を突き抜ける。
あっジョーカーの城だ。
周りに黒い影がある。

僕達が地上に帰還するとみりすは板チョコを溶接していた。
板チョコを重ねて右の人差し指からチョコレイトソース、左の人差し指から冷気。
僕達は息を呑んでそのようすを見守るしかなかった。
みな希望に満ちている。

みりすの匠の技は僕らを魅了し板チョコは扉となる。
しおが僕によってくる。
しお『おにいちゃん、また証拠隠滅したい』
久嗣も寄ってくる。
久嗣『証拠が隠滅を待ってる〜』
まだ犯行が行われてないんだから証拠も何もない。

しおが寄ってくる。
しお『兄者、密室は再び破られるべきである』
ああ、別の境地に達してる。
サボ犬『ようし、僕のピストル・ディスコで……』
トラジ『ドアホン!証拠まで消し飛んでしまうやないか!』
みゃーとアリアは扉の付近でいまかいまかと待ち構えている。

みりす『何を躊躇っている?我が城へ足を踏み入れるのが恐ろしいか?大丈夫よ、お菓子と飲み物を用意するわ』
するとみんなの表情が変わり、大人しくお菓子な家に入る。
みりす『そこに腰をかけて待て。すぐに用意するわ』
円卓がある。
大きなクッキーでできているようだ。

僕達はプリッツェルでできた椅子に座る。
クッション部分はマシュマロだ!
僕達は今たくさんのお菓子に包まれている。
何度も夢にみた光景だ。
みりす『待たせたな。りんごジュースよ!』

みりす『そして……てえ〜い!』
みりすは家に正拳突きを繰り出す。
ボカーン!
みりす『さあ、我に続け!てえ〜い!』
ボカーン!
アリアとみゃーは円卓クッキーに猫パンチを続ける。
サボ犬はプリッツェルに食らい付く。
久嗣は飴電球を舐める。
しおは
僕達はお菓子な家を破壊しつつ食べる。
スイーツ&デストロイ。

お菓子な家は僕達の夢を叶え無くなった。
僕『全部食べちゃったね』
久嗣『トラジにも食べさせましたよ〜』
あとで食べる用だな。
みりす『よいのだ。また魔法で作れるからね』

あいり『アンドレ、星屑のこと聞かなきゃ☆』
そうだった。
僕『みりす、星屑が欲しいんだけど……』
みりす『くくくっ……ついて参れ』
そうして、みりすに案内されたのは畑である。
僕『畑?』
みりす『星屑の畑よ。好きなだけ持っていくといいわ』


僕達の視線はサボ犬に注がれる。
サボ犬『ここ掘れ……ってこと?犬だから?みんなでやったら効率が良いんじゃないかな〜』
僕『さあ、星屑の収穫だ!』
僕達は畑を掘る。

久嗣『ミミズがいましたよ〜』
トラジ『久嗣はん、そいつはワイの口に入れたらあきまへんで!』
久嗣『うりうり〜!』
トラジ『や〜め〜て〜!』
みゃー『あったですの!』
みゃーが丸っこい欠片を咥えている。
アリア『私も見つけたにゃ〜』
あいり『あった〜☆』

サボ犬『あれ?僕だけ見つからない』
しおとみりすは土で山を作っている。
みりす『我が畑の土はどうだ?』
しお『ミネラルがいいわ!』
なんだかんだで星屑はたくさん集まった。
僕『まおうみりす、ありがとう』
みりす『久方振りの来客愉快であった。また遊びにきてよね』

僕達はみりすにまた会いにくることを約束し南の森森へ向かう。
N.S『おう、戻ったか。星屑は手に入れたか?こっちは準備万端だ!』
N.Sは長い筒を指差す。
僕『これ画用紙?』
N.S『そう、2メートル×4メートルだ!これでなんでも 呼び出せるだろう』

久嗣『お菓子な家も描けそうだね〜』
久嗣と僕で長い筒を抱えトラジの口に突っ込んでいく。
絵璃『星水の精製も完了したわ。あなたのマテリアルに星水を入れてます』
絵璃はしおにピアスを渡す。
僕『そういえば、さっき黒い影に包まれたジョーカーの城を見ました』

絵璃『黒い影?何かしら……もしかすると星の生成を邪魔するかもしれないわ。私もあなた達と共に参りましょう』
僕達は星とメジャケンでシャドームーン城へバビューンと飛ぶ。
アズール『N.S無事でしたか?』
N.S『馬の角がかくかくしかじかで……』


N.S『あ〜説明は後に!今すぐ星の生成にかかる!』
N.Sはどこかへ向かう。
僕達も続く。
工房だ。
N.S『ハコ、久しぶりだな』
ハコ『ええ、再会の言葉は後に。準備はできてるわ』
しお『ハコさん、これ』
しおはマテリアルピアスを渡す。
僕はトラジから星屑を取り出す。

ハコ『これだけあれば充分ね。いくでえ豆タン!』
N.S『はいな!あんさん!』
二人は星の生成を始めた。
僕『僕達は金色の糸を』
広間に戻ると絵璃がアズールとナミと話している。
絵璃『大魔導、天動士、久しぶりね』
アズール『あの時以来ですね』

絵璃『そのジョーカーが放たれたわ』
ナミ『またこの国を?』
絵璃『恐らく……まだ何も仕掛けてきてはないけれど……』
三人の間には思い空気が流れている。
ジョーカーとはそれほど脅威なのか。

今はやるべきことをやるしかない!
僕『トラジ、画用紙を!』
トラジ『またあの長いのでっか?あれは喉に引っかかってやな……』
久嗣『そ〜い!』
久嗣はトラジの口に手を入れて筒を引っ張る。
トラジ『ふぐぅ……』
僕達は画用紙を広げる。


久嗣は自分のカバンから虹の筆を取り出す。
久嗣『いきますよ〜!』
ガボーン!
シャドームーン城が大きく揺れる。
僕『なんだ⁈』
僕は城を出る。

あいり『あっ☆城の上を見て☆』
シャドームーン城の上にジョーカーの城が乗ってる。
ジョーカーの城は浮上し、急降下してくる。
ガボーン!
何度も踏みつけるようにしてガボーンガボーンとぶつかってくる。


僕は城内へ戻る。
僕『ジョーカーの城がこの城へ突進を繰り返している!』
アズール『……きましたか』
ナミ『退けなければなりませんね』
ガボーン!
絵璃『次こそはこの世界との決別を撃ち込んでやるわ』


僕『久嗣は絵を描き続けて!揺れちゃうかもしれないけど』
久嗣『ほいほ〜い!』
ガボーン!
トラジ『ワイの中なら揺れまへんで!特別な空間やからな!』
僕『では久嗣はトラジの中へ!』
トラジ『アカン!また長いのを飲まないかん!っていうとる場合ちゃうか』

僕『あいりーんはトラジを守って!瓦礫が落ちてくるかもしれない』
あいり『オウケイ☆アンドレ、負けないでね☆』
僕『アイドルの声援を受けて負けるわけにはいかないね!』

工房へ向かう。
僕『ハコ!N.S!このまま生成を続けられる?』
ハコ『始めたら終わるまで息はつけない!』
N.S『ジョーカーが来たんだろうよ!悪いがそっちは君達に任せる!』

外に出て見上げるとシャドームーン城の先にジョーカーの城が刺さっていた。
ジョーカーの城はシャドームーン城を連れて浮上していく。
僕、しお、サボ犬、みゃー、アリア、アズール、ナミ、絵璃はジョーカーの城へ乗り込む。

ジョーカーは玉座に座っている。
僕『ジョーカー!やめろ!』
ジョーカー『おや、先程の……他人の命令に従う理由は1ミクロンだってありはしない!クソガキの口は菓子でも頬張っておけ!ママのミルクも恋しいんじゃないか〜⁈』

絵璃『ジョーカー相変わらずね』
ジョーカー『おお、懐かしい顔じゃあないか。憎き水の魔女よ。大魔導と天動士も、わざわざ三人揃って来てくれるとは。飛んで火に入る夏の虫とはこのこと。季節外れではあるが』

アズール『私達を狙って?』
ジョーカー『もちろん、君達二人がここにいることは知っていた。水の魔女も一緒なのは予測していなかったがね。君達がいなければ私の願いは成就する』
ナミ『何を望む?』

ジョーカー『知る必要なし!だが君達の最期だ。優しい私は教えてやる。私は夜が好きだ。闇が好きだ。そこで産まれたのだ。真っ暗な闇に包まれていたい。それには輝く星が邪魔なのさ。全ての星が無くなれば夜は最も静かな時となる。星が在ることは正しいか?どうでもいい。気に入らない。それだけさ。新星を絶ち、今在る星を塵とする』

サボ犬『させるかっ!ピストル・ディスコ!』
ズバババババババーン!
ジョーカーに命中するがダメージはない。
ジョーカー『ふん。ワンちゃん、お遊戯会かね?』

サボ犬『しおさん、尻尾を!』
しお『ここをなっ!こうするっ!』
しおはサボ犬の尻尾を背中に押し付ける。
みゃー『更に私の魔法を!スピードスター!』
サボ犬『ピストル・ディスコ!十五倍なっ!』
ズバババババババーン!

ジョーカー『ぬおおおおおぉ〜!……なんてね。これは砂糖菓子か。甘いな〜この程度の星では私を焼けんよ』
ナミ『血気盛んな星達よ、悪に降り注げ。メテオストライク!』
ガボーンガボーンガボーン!隕石が城を突き破ってくる。
そうしてそのままジョーカーを襲う。
ジョーカー『あっつい!』

アズール『蒼き炎よ、彼の骨まで灰とせよ。アルティメットサファイア!』
アズールの掌から青い炎が巻き起こりジョーカーに向かう。
ジョーカーの足元で一気に燃え上がる。
ジョーカー『二度も熱いのを続けるなんて酷いな』

絵璃『古の時より万物の源なる水の力よ、彼を飲め。リヴァイアサン!』
絵璃がマテリアルリングを掲げるとリングから水龍が飛び出しジョーカーを飲み込む。
絵璃『そなたの心の臓を三百九十二度凍らせる。ダイヤアーモンドダスト!』
水龍がたちまち凍る。
絵璃『黒雲より裁きの雷を。ブラックサンダー!』
ジョーカーの頭上に黒い雲が発生し、そこから激しい稲光。
氷となった水龍は粉々に砕け散る。


僕『ジョーカーを倒した?』
『ジョーカーを倒した〜?』
僕の背後で声がした。
振り向くと久嗣がいた。
久嗣『絵が完成しましたよ〜もこもこで〜す!』
僕達はシャドームーン城に降りる。

久嗣『飛び出せ透子!夢羊!ほほいのほい!』
すると画用紙からポンポンポンポンと透子と夢羊達が飛び出してくる。
透子『あら?みんな……こんばんは』
透子は不思議そうな表情を浮かべる。
僕は透子に説明をする。
透子『なるほど。理解しました』
なんと物分りのいい。

透子『少しの間、寒い思いをするけどいいかしら?』
金色に輝く夢羊達は透子を囲む。
もこもこもこもこ。
アリア『じゃあ私の風の魔法にゃ〜ん!撫ぜる風よ。束の間刃となり金色を刈り取れ。エアブラスト!』

夢羊達の毛は全て刈られた。
とても寒そうで申し訳ない。
そこにハコとN.Sが現れる。
ハコ『さて、次は金色の糸を作らなきゃいけないみたいだな』
僕『星は?』
N.S『とびっきりいいやつが完成したよ』
僕達はみんなで刈られた毛を工房へ運ぶ。

アズール『では広間で待つことにしましょうか』
僕達は広間へ向かう。
僕『金色の糸は何に使うの?』
アズール『星同士を繋ぐ線となります。それで星座と呼ばれる形を作ります。二十四年前の金色の糸は今夜切れ、一等輝く星とそれに繋がれていた星達は流星群となるのです』

『それが最後の流星群か〜』
ジョーカー⁈いつの間にか玉座にいる。
ジョーカー『酷いな〜みんな禁術ばかり使ってたじゃあないか。流石にああいうのを幾つも受けると骨が折れるな……だが』
ガボーン!
僕『なんだ⁈』

ジョーカー『月を離れた月の民の魔力は半減する』
ジョーカーは何を言っている?
僕『月を離れる?』
ナミ『ここは月の内側にある球体だと思ってもらえばいいわ。ジョーカーはおそらくこの国の天井、月の表面を破ったのでしょう』

ジョーカー『ご名答!これで禁術は使えまい。まあ大したダメージは受けないだろうが私の知らない魔法や術も封じ込めたってわけさ』
ジョーカーが立ち上がり、手を翳す。
ジョーカー『私の魔法もみせてやろう。鴉が鳴くから還ろう。ブラッククロウズララバイ!』
すると入り口からバッサバサとたくさんの黒い影が飛び込んでくる。
鴉だ!
鴉が僕達を襲う。

サボ犬『くっ、この鴉は実態がない!』
あいり『なんなの〜⁈いや〜怖い!』
みゃー『ブラックシャドウですの!』
アズール『今の魔力では防げない!』
透子『きゃ〜!』

鴉が頭に止まるとみんなの動きが止まる。
ジョーカー『鴉に止まられると睡魔が襲う』
サボ犬『う〜ん、ねむねむ』
あいり『おやすみ〜☆』
アリア『解除魔法もつかえないにゃ〜ん』
みんなバタリバタリと倒れて眠っていく。
僕にも鴉は止まったが睡魔はこない。


久嗣『私はさっき水筒に入れてたココア飲んだので平気で〜す!魔法瓶で〜す!』
しお『おにいちゃん、私も平気よ』
しおの銀の髪留めが光っている。
ジョーカー『魔力を吸収する一級錬金の銀か……珍しい物を……』
soraさんのアクセサリーだ。
ジョーカー『まあいい、貴様等にはもう一つとっておきの魔法を見せてやろう』

ジョーカー『カードを五枚引く。一枚目は道化が演じるエース。二枚目は道化が演じるキング。三枚目は道化が演じるクイーン。四枚目は道化が演じるジャック。最後は道化が演じるジョーカー。ははっ!揃っちゃった!ロイヤルストレートイカサマフラッシュ!』

ジョーカーの体が鈍く光る。
ジョーカー『こうなった私は傷つかない!何人たりとも私の邪魔はさせない!貴様等みんな邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔!』

ジョーカーの体から放射線状に光が走る。
ガボーンガボーンガボーン!
まずい、城が破壊されていく。
僕『久嗣、しお、ちょっと……』
僕は久嗣としおに耳打ちをする。

しお『わかった、わたしやる』
久嗣『できますよ〜』
そして、僕はポケットをまさぐりチョコレイトを久嗣に渡す。
僕『最後の一つだ』
久嗣『今度は一緒に食べよ〜!』
久嗣はチョコレイトを口に含む。

僕はハコからもらった透き通る星を胸に当て祈る。
僕の星がやってくる。
僕は星に跨りジョーカーめがけて飛ぶ。
ジョーカーはいとも簡単にさっと躱す。
しおが入り口へ走り出す。
ジョーカー『おや、あの小娘を逃がす時間稼ぎか?』

僕『まだだ!ジョーカー喰らえ!』
もう一度。
さっ。
もう一度。
さっ。
ジョーカーがしおに背を向けた。
僕『今だ!』

しお『これをなっ!こうするっ!』
しおは入り口から玉座まで続くレッドカーペットの端を握り引く!
その上にいたジョーカーはバランスを崩し前のめりに倒れる。
ジョーカー『何を小癪な!』
しおを振り返るジョーカーの背後から僕が星でドーン!
ジョーカー『ぬあ〜!』

そのままジョーカーを押さえつけながら進む。
その先には久嗣と画用紙。
僕『久嗣!今だ〜!』
久嗣『だめ〜作戦がちがう〜今やると王子もいっしょに……』
僕『チャンスは今しかないんだ!久嗣やってくれ!』
久嗣『でも……』
僕『僕の最後の願いを聞いてくれ!』
久嗣『うわ〜ん!いやなのに〜!』
久嗣は泣いている。
僕『久嗣やるんだ!』
久嗣『わっ……かりましたよ〜吸い込め!画用紙!ほほいのほい!』
すると僕と星とジョーカーは画用紙の中へ吸い込まれていく。

ジョーカー『クソガキ!何をしやがった?』
僕『ここは画用紙の中さ。お前と僕はここで絵になる』
ジョーカー『貴様!道連れにしやがったのか⁈クソクソクソクソ!出せ!小娘さっさと出しやがれ!今出したらお前等は見逃しやる!』
僕『久嗣、ジョーカーは嘘を言ってる。聞いちゃいけない』
久嗣『わかってますよ〜ばか王子』

ジョーカー『うぎゃ〜身体が……動かなく……なって……』
僕『僕はまだ暫く平気そうだ。しお、久嗣。みんなが起きたら伝えてくれ。父や母にも。僕は星を守ったと……泣くんじゃない』
しお『うわ〜ん!』
久嗣『うわ〜ん!』

僕『僕はもうすぐ絵になる。この星と一緒にね。ハート、クローバー、スペイドにダイヤ。トランプには星がないだろう。今日からハートのエースよりもジョーカーよりも強いカードができたんだ。星の王子だ』
二人とも泣いてて聞いちゃくれない。
羊達は沈黙。


王子はジョーカーを閉じ込めるために自らも絵となった。
ジョーカーの魔法が解けた者は大きな画用紙を見て驚く。
久嗣としおは泣いていて上手に説明できない。
久嗣『わっわたし……王子だけ……出す魔法……覚えるもんね〜』
アズール『……ではそれまでこの画用紙はこの城で預かりましょう』
ナミ『時間がきました。みんなのおかげで間に合いました。外へ』
みんな城の外へ出る。
月の表面。

アズール『間もなく金色の糸が切れます。その星に乗せてみなさんを地球へお送りします』
アズールとナミが手を翳す。
みんなの身体が浮かび上がり星の元へ飛んでいく。
みんな大小それぞれの星に跨る。
夢羊達もだ。

アズール『みんなありがとう。アンドレのことは私たちも調べます。必ず助け出しましょう。もし、ジョーカーと再び戦うことになればあなた達は立ち向かえますか?』
みんな頷く。
ナミ『勇敢なあなたわ達のことを流星の絆と呼ぶことにします。』
星達が輝き流星となる。


地球に戻り、空を見上げるとそこには新たな星座があった。
しお『星型の星座だ』

おしまいほしほし☆☆


僕の言葉が君の人生に入り込んだなら評価してくれ