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おにぎりとおむすびの違い

おはようございます。
kindle作家のTAKAYUKIでございます☆彡

休日だというのに、何もやることがない。
朝からリビングでホットりんご酢を飲みながら、ぼーっとしております。

絶望します!

陽気がよければルンルン気分で外出するのだけど、いまは極寒の冬。寒い思いをしてまで外出することに、果たして意味があるのだろうか?

12時を過ぎた。
だけどお腹は減る。
外出したいけど相変わらずの曇天で気温は5℃しかない。かと言ってデリバリーでも頼めば2000円近いお金を支払うため、僕はただちに困窮してしまう。

僕は絶望しながら、リビングの窓から外を見た。
するとお花畑の片隅で、女性たちが円になっておにぎりを食べているではないか。
物書き渡世として、これは気になる。
先ほどまでの苦悩はどこへやら、僕はピジャマの上にダウンジャケットを着用すると玄関のドアを開けた。

美味しそうにおにぎりを食べている女性たちに、僕は声をかけた。
「こ、こんにちは」
「こんにちは」
4人の女性たちが一斉に挨拶を返してくれた。おそらく4人とも30代。服装もカジュアルだ。
「あの…今日のランチはおにぎりですか?」
僕の質問に、全員が笑い声を上げた。
するとリーダー風の女性が言った。
「私たちは、おむすびを食べているのョ」
全員が笑い声を上げる。
「おにぎりとおむすびに違いがあるのですか?」
「それはカ・ン・タ・ン。おむすびには、人と人との心を結ぶって言う意味があるの」
4人の中で、一番瞳の大きい女性が答えてくれた。

しばしの間、僕は沈思黙考する。

なるほどなと思う。おにぎりという言い方が普及している中、『おむすび』という言い方も、確かに僕が子供の頃は言っていた。
それに一番瞳の大きい女性がおっしゃった通り、人と人との心を結ぶのであれば、僕も『おむすび』と呼びたい。

僕が沈思黙考をしているのを気にしてくれたのか、リーダー風の女性が言った。
「確か、阪神・淡路大震災の時にボランティアの人たちが炊き出しのおむすびを配給したことに起因すると思うのよネ」

僕は金縛りが解けたかのように視線を上げた。

「つまりそれ以降から、みんさんもおむすびと呼ぶようになったと?」
全員が頷いた。
「3.11の時もそうだったし、元旦の震災だって、私たちは被災者ではないけど、みんな悲しくて辛くて苦いのよ。だからせめておむすびを食べることによって、私たちは繋がっていたいのよ…」
リーダー風の女性が鼻を啜った。


同時に僕も思い出した。
3.11の避難所でボランティアの方々が握ってくれた、あのおにぎりを………。
あのおにぎりは、『おむすび』だったのだ。
とても温かくて、とても美味しい『おむすび』だったのだ。

それと僕はうかつだった。
近所で女性たちが楽しそうにランチをしている姿に下心を抱いて近づいた。けれでも4人の女性たちはちゃんと復興と祈りと再会の意味をこめて、おむすびを食べていたのだ。
僕は恥ずかしさのあまり、全身が熱くなった。
だけど大変勉強になった。

「お食事中のところ、ありがとうございました」
僕は深く一礼をした。
「よかったら、どうぞ」
一番瞳の大きい女性が、ラップに包まれた『おむすび』をくれた。
僕はおむすびを受け取ると、自宅に戻った。

僕は急いでケトルをON!
御礼に熱々のお茶を持参しようと思い立ったのだ。
ケトルが沸騰したのと同時に、女性たちの車が発進した。

僕は一人、湯呑にお茶を注ぐと、ラップをはがして『おむすび』を口に入れた。
ゆっくりと咀嚼していく…。お米一粒一粒に意識を向けながら…。
「す…すっぱい」
『おむすび』の具は梅だった。
僕は梅が食べられない。
だけど、人と人との心を結ぶのであれば、復興と祈りを願うのであれば、吐き出す訳にはいかない。

僕は熱々のお茶を飲みながら、おむすびを完食した。

気づくと、僕の両頬が濡れていた。

きっと色々な意味の涙が零れ落ちたのだろう。


みんさん、今日は是非、おむすびを食べませんか?🍙



【了】


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