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野良犬との攻防戦

みなさん、おはようございます。
kindle作家のTAKAYUKIでございます☆彡

過日。散策というか、いつもどこに行くにも車を使用してしまうので、今日こそは歩こうと決めておりました。
ちょくら近所の先まで歩くだけ。およそ3キロです。まさに健康的ではありませんか!

歩き出してすぐ熱くなったので、僕は上着を脱ぎました。
市街地から田舎道に入って行きます。

家の庭で花壇を拵える主婦の方。
畑で腰を大いに曲げ、土と戯れる農家さん。
洗車に勤しむお父さん。
回覧板を渡しに行くも、四方山話で盛り上がるお母さんたち。

昼下がりに歩く幸せ。こんな些細な事に気づくだけで、僕の心は軽くなっていきます。

何となく、僕は振り返りました。
車やバイクの音でもなく、人の足音、息づかいでもなく、鳥のさえずりでもなく、ふと何かを感じて振り返るってあるじゃないですかあ?

振り返った僕は、血の気が引きました。
なななんと、犬が僕をめがけて迫っていたのであります。それもかなりの大きさで眼光鋭く、舌を出しながら迫ってきます。見る限り、首輪はしておりません。

つまり、野良犬ということになります。それも真っ黒な野良犬。

嗚呼…令和6年にもなって、野良犬、野犬に遭遇するとは思いもしなかった。

野良犬との距離はおよそ50m。

僕は歩調を速めて歩いて行きます。

坂道を登りながら、段々と民家が少なくなって行きます。先ほどまで地元民を見かけていたのに、今は人の気配もせず、畑が広がっているばかり。

僕は振り返りました。
野良犬と目が合いました。その距離およそ30m。明らかに獰猛さを感じます。肉付きも悪く、お腹を空かせているのかも知れません。

坂道を登って行くので僕の歩行速度は落ちます。メタボ腹の僕に、この坂道は正直堪えます。傾斜角度は5度くらいなのにネ。

後ろを振り返らなくても、野良犬の息づかいが僕の耳に届くようになりました。
もう後ろを振り返る余裕はありません。
走る訳にもいかず、民家もないので助けを求める事もできない。

すると登り坂の終点が来ました。
今度は滑らないように重心を後ろに傾けながら、坂道を降りていきます。
加速がついて僕は早歩きになっています。

野良犬がすぐ後ろにいるのを、僕は背中を通して感じました。
もはや野良犬との距離は10mを切っているでしょう。
きっと、狂犬病ワクチンなんて打っていないはず。

僕が犬に嚙まれたのは小2の時。友達の家で犬と遊んでいたら、突如豹変した犬が襲いかかってきたのです。僕は太ももとお尻を噛まれました。
絶叫して泣き叫んだのを覚えています。

それ以来の恐怖。
今でもあの犬の獣臭が、僕の脳裏に焼き付いています。

すると前方に民家が見えてきました。
やった! やったぞ!!!

僕は心の中で喜びながら、民家を目指します。

「ワンワンワン!」

ついに野良犬に吠えられました。

万事休す。

僕は歩くのをやめました。
「がるるるっ」
野良犬がついに僕の前に………。

野良犬は僕を睨みつけながら、よだれを垂らし続け、左右に動いています。
野良犬が立ち上がったら、きっと僕の首くらいの高さになると推定。
そして、あの獣臭が僕の鼻腔に届きました。
くさいクサイ臭い。

「き、君はどこから来たんだい?」
僕は野良犬に話しかけました。
「ワンワン…がるるるるっ」
余計に怒らせてしまったようです。

完全に僕の足はすくんでしまいました。
自分の鼓動が確かに聞こえます。
両膝が笑っています。

どうする?

ここで僕は、最初で最後の賭けに出ました。
「ぶぶッ」
僕はお尻から異音を発しました。
すると一瞬だけど、野良犬がビクッとしました。
僕は思わず吹き出してしまいました。
「がるるるるるッ…ワンワンワン」
野良犬がさらにヒートアップ。
今にも僕に飛び掛かってきそうな勢いです。

その時、僕は野良犬が尻尾を振っていることに気づきました。
確か猫が尻尾を振ると要注意で、犬は喜んでいる証拠だと聞いた記憶が残っています。
こうなったら、もう噛まれてもいい。
あとは天命に任せよう!

「君も僕と一緒に歩こう」
僕は野良犬に話しかけると、再び歩き出しました。
「がるるるッ」
野良犬は僕の左右前後をうろつきながら、ついてきます。

僕の背中から冷たさを感じます。きっと色々な汗が流れたのでしょう。

前方に見えていた民家に僕は入りました。
雑巾で玄関のドアを拭いていたおばさんが、こちらに気づきました。
「すみません、あの…」
「ケンちゃん、また逃げ出したのかい!」
僕の声を遮ったおばさんが、大声を出しました。
ケンちゃんは、おばさんに駆け寄ります。
「ケンちゃんはね、この裏の家の犬なのョ。怖かったでしょ」
おばさんは破顔すると、ケンちゃんをなでなでし始めました。

事情を聞くと、ケンちゃんはいつも庭で放し飼いになっているそうだ。たまに庭の門を飛び越えて脱走してしまうとの事。
今日も脱走して自分の寝床に帰る際に、僕と遭遇してしまったのだ。

ケンちゃんはおばさんに連れられて寝床に戻って行きました。

僕は大きくため息をつくと、再度歩き始めました。

目的地につくまで、僕の両ひざはずっと笑っていた。

飼い主のみなさん、放し飼いはダメですョ!


【了】

https://note.com/kind_willet742/n/n279caad02bb7?sub_rt=share_pw


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