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邪馬台国は見つかっていた【26】おわりに―「空白の世紀」解明に向けて―

おじ:
外が暗くなってきたね。僕の長い話を聞いてくれてありがとう。

レン:
おじさんの話はこれまでの説とあまりに違ったので、最初は驚きました。でも、絶対に解けないと思っていた邪馬台国の謎が次々と解けて、時間があっという間に感じました。

ゆい:
邪馬台国問題は難しすぎて私にはよくわからないって思っていたけど、おじさんと一緒に筋道を立てて考えてみたら、意外と簡単に解けた感じがしたな。

おじ:
邪馬台国の謎のうち、どれか一つでも間違った答えだったら位置を突き止めることはできなかっただろうね。ゆいちゃんの課題とレンくんの文化祭には、役に立ちそうかな?

ゆい:
課題を早く終わらせたくておじさんの話を聞きに来たけど、逆にまとめるのが大変そうよ。

レン:
僕は歴史部のメンバーに、おじさんの研究内容を紹介してみます。

ゆい:
長い間続いてきた邪馬台国論争は、これで終わるんじゃない?

おじ:
残念ながら終わらないよ。

ゆい:
どうして?

おじ:
大和地方に邪馬台国があったことを裏付けるような決定的な物が出土しない限り、邪馬台国問題を解決することは難しいんだ。

ゆい:
決定的な物って?

おじ:
例えば大和地方の古墳から、卑弥呼に贈られた「親魏倭王」の金印が発見されるとかね。

ゆい:
それは……裏を返せば「金印が発見されない限り邪馬台国問題は永遠に解決しない」ってこと?でも金印は盗掘されたり魏に返却されたりして、もうどこにも無いかもしれないのに、そんなのおかしいよ。

おじ:
それが日本古代史学の現状なんだ。文献研究よりも考古学的な発掘成果の方が確実で信頼できるからね。このままでは僕の唱える「九州南回り航路 大和邪馬台国説」も、いずれ忘れ去られるだろう。

ゆい:
そんな……。おじさんの説はとても面白いし、いい線行ってると思うけどな。

おじ:
あくまでも「このままでは」だよ。2人とも、僕が最初に言ったことを忘れてないかい?

ゆい:
ん?なんだっけ?

おじ:
邪馬台国研究は位置論と同じくらい「どうしたら信用してもらえるか」という点が重要だと言ったんだ。「研究者は邪馬台国の位置を究明するだけではなく、自らその研究成果の正しさを証明しなければならない。さらにその後の日本国土の統一時期を明確にして、日本の古代史を構築する。そこで初めて邪馬台国問題に終止符が打たれる」。思い出した?

邪馬台国問題 解明への道のり
Step1 正しい邪馬台国の位置を究明する
Step2 邪馬台国の位置を元に日本古代史を組み立て自説の正しさを自ら証明する

ゆい:
ということは、おじさんの話にはまだ続きがあって「九州南回り航路 大和邪馬台国説」が正しいことを証明できるのね?

レン:
「日本国土の統一時期を明確に」ってことは「空白の4世紀」も解明したということですか?

おじ:
うん。そうでないと邪馬台国を探した意味がないからね。「空白の4世紀」は、僕の中では「判明した4世紀」なのさ。

レン:
すごい!何だかワクワクします。

おじ:
ここまでの話は邪馬台国を探す解明編。次はそれを裏付けていく証明編だ。「九州南回り航路 大和邪馬台国説」の正しさを証明し、まだ小道のように細い邪馬台国への道を、石畳くらい頑丈にしてみせるよ。

ゆい:
心強いね。

おじ:
次の証明編では「空白の4世紀」に何が起きたのかを、日本書紀を活用して解き明かしていくよ。邪馬台国が大和政権に発展したのか、それとも滅亡してしまったのか、2人も知りたいだろう?

ゆい:
うん。知りたい!

おじ:
けれど構想がまだ、まとまってないんだよな。完成したら、また話を聞きに来てくれるかい?

ゆい:
もちろんよ。

おじ:
日本書紀の新たな謎が、君たちを待っているからね。

レン:
受けて立ちましょう!楽しみにしています。


おわり


参考文献

「邪馬台国シンフォニィ」の参考文献
・日本古典全集「日本書紀」2、3
 武田祐吉校註 朝日新聞社
・「邪馬台国への道」(歴史地理 91巻 第3号、4号)
 津堅房明、津堅房弘

「邪馬台国は見つかっていた」の参考文献
・「世界の名著12 中国の科学」
 薮内清 責任編集 中央公論社
・「古代中国数学『九章算術』を楽しむ本」
 孫栄健 編・著 言視舎
※【18】~【21】の「九章算術」に関する記述は、はにワンコの加筆です。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

久延彦神社から見た奈良盆地(桜井市 )

はにワンコのあとがき につづく


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