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邪馬台国は見つかっていた【1】邪馬台国問題は半分に整理できる

登場人物

ゆい
元気な高校生。数学が苦手。

レン
ゆいの友人で歴史部部長。

おじさん
ゆいのおじ。趣味で古代史を研究している。


ゆい:
おじさん、こんにちは!

おじ:
ゆいちゃん、いらっしゃい。お正月に親戚で集まった時以来かな?よく来たね。

ゆい:
お久しぶりです。こちらは友達のレンくん。

レン:
はじめまして。レンです。よろしくお願いします。

おじ:
こちらこそよろしく。
二人とも、どうぞ上がって。今日は邪馬台国についての話を聞きたいということだね。

ゆい:
うん。高校の課題で「日本史で自分が興味を持ったテーマについて詳しく調べてレポートにまとめる」っていうのが出たの。でも一人じゃうまくまとめられなくて……。だから趣味で古代日本史の研究をしているおじさんにアドバイスをもらいたいの。宿題は早く終わらせたいしね。そしたらレンくんも一緒に行きたいって。

レン:
僕は高校の歴史部で部長をしています。今年の文化祭での研究発表テーマが「邪馬台国」に決まりました。すぐに部員全員で調査を始めたのですが、早々に行き詰ってしまって……。それでゆいちゃんのおじさんが古代史に詳しいと聞いて、ぜひ僕も連れていってほしいとお願いしたんです。

おじ:
そうだったんだね。そういうお願いなら大歓迎だよ。二人とも日本史最大のミステリーに興味を持つなんて、すばらしいと思うよ。早速だけど、ゆいちゃんは邪馬台国についてどんなことを知っているのかな?

ゆい:
学校で教わったのは、弥生時代の終わりに日本にあった国の一つだということ、女王卑弥呼がいたこと、候補地はいくつもあるということね。邪馬台国までの国々を連続的に読む「連続説」と、一つの国を起点に放射状に読む「放射説」があることも習った。有力な候補地は畿内と九州だけど、他にも四国説、出雲説、琉球説にジャワ島説もあるらしいの。

おじ:
なるほど。じゃあ、レンくんはどう?さっき早々に行き詰ったって言ったね。

レン:
はい。まず、僕たち歴史部のメンバーは、魏志倭人伝を読んでみました。けれど倭人伝は、わかりにくい上に書き方がとってもあいまいなんです。

おじ:
例えばどんなところが?

レン:
倭人伝の中に「(投馬国から)南へ水行十日 陸行一月で邪馬台国にたどり着く」という記述があります。でもこれは「水行十日または陸行一月」とも、「水行十日と、さらに陸行一月」とも、どちらにも解釈できるんです。

邪馬台国までの国々:方角と距離

狗邪韓国
  ↓     渡海一千余里
対馬国
  ↓     渡海一千余里
一支国
  ↓     渡海一千余里
末盧国
  ↓  東南  五百里
伊都国
  ↓  東南  百里
奴 国
  ↓  東   百里
不弥国
  ↓     水行二十日
投馬国
  ↓     水行十日 陸行一月
邪馬台国

おじ:
確かに、その部分は今でも多くの研究者を悩ませている重要な問題点だね。

レン:
2つの解釈では、邪馬台国までの距離にかなりの差が出てしまいます。ほかにも「不弥国から投馬国までは南に船で20日、不弥国から邪馬台国までは南の方向に船で10日」と書かれていますけど、南に30日も進んだら、九州を通り過ぎてはるか南の海上に出てしまいます。だから邪馬台国までの行程がさっぱりわかりません。部員たちの意見もまとまらないし、秋の文化祭までに間に合いそうにありません。

ゆい:
ねえ、おじさん。邪馬台国研究はずいぶん前からされているのに、どうして答えが出ないの?

おじ:
そうだね。邪馬台国問題はなかなか複雑なんだ。まずは二人が言ってくれたことを含めて、邪馬台国問題について整理してみよう。

邪馬台国問題のまとめ

・邪馬台国の候補地は九州、畿内、出雲、琉球など諸説ある
・伊都国以降の行程は連続説と放射説がある
・魏志倭人伝の中の邪馬台国までの記述は難解で様々な解釈がある
・邪馬台国の位置は今も特定されていない


図表 1 九州説・畿内説・出雲説・琉球説


図表2 放射説

おじ:
魏志倭人伝に登場する国の中で、対馬国と一支国はそれぞれ対馬と壱岐だと確定している。でも九州上陸後の末盧国から邪馬台国までの位置には多くの説がある。距離や方角等で様々な解釈が生まれ、それらが重なり合って枝葉のように広がった結果、いくつもの邪馬台国論が展開されているんだ。

ゆい:
それでいまだに結論が出ていないのね。

おじ:
これらの候補地の中に邪馬台国はあるはずなのに、未だに位置探しが続いている。つまり見つかっているのに見つかっていないと思われているんだ。どうしてだと思う?

ゆい:
えっ?どうしてかな?

おじ:
それは邪馬台国を探す真の目的が達成されていないからさ。

ゆい:
真の目的って?

おじ:
3世紀から4世紀にかけての「空白の4世紀」を解明することだよ。

レン:
日本の歴史は「空白の4世紀」の間に何が起こったのか、今もわかっていないんですよね。

おじ:
うん。この間に邪馬台国が発展拡大したのか、それとも滅んだのか。大和朝廷がいつ、どのように日本を統一したのか、全くわからないんだ。けれど邪馬台国の位置がわかればそれが大きなヒントになって、この100年間の歴史が解明されるってわけさ。それが邪馬台国を探す真の目的なんだよ。

ゆい:
思っていたよりも、スケールの大きな話ね。

おじ:
研究者がせっかく苦労して邪馬台国を見つけたとしても、それを信用してもらえなければ「正しくない」と誤解される原因になってしまう。邪馬台国の位置を見つけるだけではなく、「空白の4世紀」の中身を埋め自説の正しさを証明することができて、初めて邪馬台国問題に終止符が打たれるんだよ。

邪馬台国問題 解明への道のり

Step1 正しい邪馬台国の位置を究明する
Step2 邪馬台国の位置を元に日本古代史を組み立て自説の正しさを自ら証明する

レン:
なるほど。邪馬台国問題と探す目的についてはよくわかりました。でも、これだけ研究し尽くされて答えが出てないのなら、もう邪馬台国を見つけるのは不可能なんじゃないかな。

おじ:
ところがね、「あること」によってこの複雑な邪馬台国問題を半分まで整理できるって言ったら2人は驚くかな?

2人:
えっ!?

【2】につづく


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