東京にこだわる理由

今月が誕生月。統合失調症と診断されて十数年目になる。上京する前から実家の近くの心療内科に通っていたが、そこではパニック障害と言われていた。その時はまだ十七歳だった。
高校卒業後、一度働いて学費を貯めてから専門学校に通い、なんとか資格を取り上京。
まず初めにクリニック探しをした。何ヶ所かたらい回しにされた結果、
「うちでは診れないから大きい病院で診てもらってください」
と、だけ言われ、診断書をもらって今の病院に通うことになり、そこで初めて統合失調症と診断された。
それと同時に、入社した会社では酷い扱いを受け、心身ともに追い詰められていった。
初めから精神病を患ってる、と言って面接を受ければ良かったのだが当時、自分のプライドがそれを許さなかった。
精神病の薬を服用していることは会社の誰にも言わなかったし、言い出せなかった。受け入れてもらえる環境では無い、と感じていたからだ。
この十数年で世の中の精神病への偏見は大きく変わった、と体感している。自分から病気であることを言える様になった。病気を患っている人たちが生き易い世の中になっている。病気を理由に嫌がらせをされることも無くなった。
実家に行くと近所の人たちに心配される。
「あなたは病気なんでしょ?」
と。
言われる度に複雑な思いをする。
ネットがあれば住むのはどこでもいい、と思う時もあるが、東京にこだわる理由はそれだ。
東京と言っても広い。酷い扱いを受けた会社は東京の市部だった。二十三区内に転職と引越ししただけで環境は変わった。都会への憧れは無い。しかし、住むところを選べ、と言われたら、なるべく人の多いところを選ぶだろう。
更に十年経ったらもっと世の中は変わっているだろう。その時はどこにでも住める様になっていてほしい。


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