常世の国から⑬
「せんぞがついてくる」
大叔母の葬儀の日のこと。
僕はまだ学生でした。
ちょうど夏休みで田舎に帰っていました。
葬儀は家で行われていたのですが、僕はなんだか光が眩しくて目を開けることができなくなりました。
やがて首が重くなり、その場に丸くなってどうにもならなくなったのです。
ところが頭はハッキリしているのです。
二階で寝なさいと言われ這いつくばいながら階段を登って二階にいったのですが、丸まったまま、仰向けになれません。
どうしようもなくまた一階に戻ってきました。
「大丈夫か」と誰かが声をかけてくれましたが、
「誰かが…釈迦が…」とブツブツ言いはじめたのです。
なにやらたくさんの人に声をかけられているような感じでした。
でも、現実感はあり、丸まった体をどうすることもできないのです。
そこで、また除霊師の登場です。
前に除霊をしてくれたおばさんは亡くなり、こんどはおじさんの方です。
「Kちゃん。うちに行こう」と丸まったままの僕の手を引いて、向かいのお菓子屋に連れて行ってくれました。
僕を座らせると、なにやら呪文を唱えながら、大きな数珠玉のついた長い数珠を幾重にも重ねたもので、僕の背中をバンバン叩きはじめました。
それがとても気持ちが良かったのを覚えています。
そしておじさんは、最後に僕の肩をバンっと叩いて、
「もう大丈夫だよ」と言うと
頭がスッと上がり、その後、わけもわからず涙がドッと流れ出ました。
おじさんが言うには、あんたは長男じゃないけど先祖は全てあんたについていく。だからしっかり頑張れと言っている。
のちに別なひとに「社を担いでいる」とも言われました。
それはまた別なときにお話しします。
ひのたろう
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