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常世の国から⑧

「のろっちゃう」

学生の頃。
学生寮に住んでました。

その寮はとても厳しくて、門限、消灯の徹底、朝の点呼、夜の点呼と、まるで軍隊のようでした。規則を破ると部屋全体の責任なり、厳しい罰がありました。
そう説明するとまるで戦後間もない頃のように聞こえますが、昭和の後半で人に話すと驚かれてました。

学生たちは不満が溜まってましたが逆らうと退学になるので、甘んじて受け入れていたような感じです。今では考えられません。

寮生全員が寮を担当をしている先生に呼ばれたときがありました。
そのときのことはあまり覚えてないのですが、とにかくみんながその先生に腹を立てていたと思います。僕は調子に乗って「呪ってやるか」と言い、仲間が「呪え」と言ったので

「1週間以内に病気になって学校からいなくなる」
と言ったのです。

1週間後、噂で先生はいなくなったそうです。
具体的な内容はわからず、本当にいなくなったのか確認もしていませんでした。

その後そんなことはあり得ないと思っていたので
気にもしていなかったのです。

それから10年以上経ってからのことです。
職場の部下に逆恨みされたことがありました。
その部下は会社を辞めて僕の友達の会社にちゃっかりと入っていました。
かなり裏表のある人物で、友達はすっかり彼に騙されていました。

そして彼はわざわざ僕の個展に来て、他の人には聞こえないように耳元で
「Oさんの会社に入ったので、またちょくちょく会うと思うんでよろしくな」と会社にいたときは敬語だった彼が、ヤクザのような口調で脅したのです。

その瞬間。僕は頭に血がのぼり…。
「お前のようなヤツは、高校生に半殺しの目にあえばいいんだ」
と思いました。何故、高校生なのかわからないのですが……。

それから何ヶ月してから、彼が入った会社のOと呑む機会がありました。
彼がどんな人物か話してなかったので、様子を聞いてみました。
「ああ、彼ね…」
「初めは腰が低くいし感じが良くて、みんなにも好印象だったんだけど…。」
「だんだん、あちこちで揉めだして、誰とも合わなくなったんだ」
僕はやっぱりそうなるのかと思いました。

「それでどうしたの」
「うん。会社の飲み会のとき、飲み屋で高校生たちが騒いでいたんだ。僕らがほっとけと言ったんだが彼が文句を言いに行って、そのまま喧嘩になって……」
「大怪我して入院……。そのまま辞めたよ」

僕は絶句した。

ひのたろう

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