労働者の数と賃金上昇・下降圧力についての考察。日記。


 「特定の職種に応募が殺到すれば賃金に下降圧が掛かる」という、とある主張を見ての自分なりの考えを纏める。

 まず応募が特定の職種に殺到する事と雇用主がその仕事でどれくらいの収益を見込んでいるかは関係が無い。雇用主は常に利潤最大化を目指すとすれば、労務者に求める能力はノルマに加えて余剰の有無までを考慮する。これは単に能力の高い人材を求めるというだけの話だが、労賃が高ければ職種がどうであれ人気は高まり、その職業に対する需要の上昇具合は必要な能力を獲得する必要経費や、その他の個々人の都合と加味されたうえで変動して行く。

 勢い、この雇用主と企業の存在は市場に無限に存在するわけではなく、1つの職場で異なった分野の人間を配置するケースも珍しくない為、求人全体と労務者の数とを比較したとしてもそれだけで労賃の上昇・下降圧力を予測はできない。

 却説的に1番人気の職業に採用されなかった人々が2番手、3番手と徐々に望む職の対象を変化させて行く事で得られた職業需要は、奇妙な事に離職率は高いがほぼ慢性的に労務者が出入りする事になる為、職場環境や待遇が悪いままでも人が絶える事は少ない場合も出てくる。この状態にあっては「人手不足」「低賃金」「激務」「雇用の流動性」が表面上は示唆されるものの当事者は然程職業需要が目減りしているという実感を得ない。どころか実際に労務者が待遇に依存して就職と離職を繰り返せど、業務に支障が少なくて需要が衰えないなら、ただでさえ低賃金な職業にであっても一層賃金下降圧力が付与される悪循環さえ想像に難くない。

 これらの問題を考える際には職種別の人気ではなく、失業者を何らかの形で底上げする方が望ましい。民間の雇用主に雇用の創出を任せ切る体勢にも病理があると言えるし、需給差だけで賃金、延いては経済を考える事にも問題を感じた。

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