~卒業設計案3~鯨骨生物群集から学ぶ建築

はじめに

今回も卒業設計で考えている案を書いてみようと思います。
今回のテーマは鯨骨生物群集(ホエールフォール)についてです。

鯨は死んだ後に死骸を中心として新たな微生物や生物が群を作り新たなネットワークの形成を行います。これは離散的な発生をする特殊な生態系となっています。
この離散的であることが建築的なつながりを持つなと思い取り上げてみようかなと思います。

ホエールフォールについて

まず、このホエールフォールには4つの段階があります。
1つめに海底に沈んだ鯨の死肉をサメやカニなどが食べることによって鯨の脂肪や筋肉を食べ尽くして鯨の死骸が骨のみになるまでのステージです。
2つめは骨食生物や貝類などが「栄養便乗者」として死骸の内部や周囲に住み着き骨から栄養分に抽出するようになるステージです。
3つめの段階は細菌が骨の表面を埋め尽くし、荒野のような状況となり徐々に骨がなくなっていくステージ。
4つめに終焉段階で通常と同じような海の生物が入り込み海に溶け込んでいくというステージです。

ホエールフォールを建築に落とし込むと

ではこれを建築的に捉えてみようと思います。
1つ目の鯨の骨格以外を捕食するという点は建築の構造体以外が取り外されることを表します。これは風化や取り壊しの第一段階と考えられます。この段階では人の手が加わったりすることが必要だと考えられます。
2つ目の「栄養便乗者」が住み着くステージは1つめのステージで構造体のみ残った建築に対してスラムのような場所が形成されることを示します。この段階では人々の有用な利用というよりはホームレスのたまり場のような利用が考えられます。
3つ目の細菌が骨の表面を埋め尽くすという段階は構造体の栄養素を取り除くということ、つまり解体を意味すると考えられます。構造体の栄養素、つまり木造ならば解体され他の場所で使われること、そのほかならば別の用途になったりさんぎょ廃棄物になったりすることを意味します。
4つ目の段階では3つ目までの段階でほとんど解体されなくなった建築物が街に溶け込む広場などに変化することを示します。

この4つのステージは建築物としての役割を終えた建築物のあり方を示します。都市の中の廃墟と化したデパートなどが対象です。
1つ目のステージで壁を取り払うことでホームレスなどの人が入り込む隙間を設計し、2つ目のステージではホームレスや行き場をなくした人が住み着きます。3つ目のステージではスラム化が問題視され、その建築が解体されます。4つ目のステージではその建築が解体されて更地になるということです。

この提案の肝は今までは建築がどのようにあり続けられるかを考えていたことに対して今回の提案は建築がなくなった後の流れを設計しています。
正直、自分の手を出す範囲がわからないのでどうしようもないのが本音です。
しかし、海外でスラムが形成されやすく日本にスラムのない要因はここにあると思います。

もう一つの建築的解釈

では今回の「栄養便乗者」を市民など一般的(?)な人に対象を変えてみたいと思います。
1つ目のステージで壁を取り払うことで半屋外広場のような隙間を設計し、2つ目のステージではそこが商業や様々な活動の拠点となります。3つ目のステージではその建築物が本当の寿命を迎えて取り壊しが行われます。4つ目のステージではその建築が解体されて更地になるということ。
このように解釈をすると急にSDGsのような印象となります。

こっちの解釈ならば設計の余地ありというような印象です。
どうにかして2つ目のステージと4つ目のステージを町に溶け込ませるかを行うことでスクラップアンドビルドの町に本当の意味で寿命まで使うような建築のあり方を提供できると考えています。

卒業設計でできそうなこと

この2パターン、「スラム」と「商業施設の再活性化」
磯崎新の孵化過程のような廃墟と繁栄の二面性を持つような同じ条件。
セキュリティラインのないことで生まれる正反対の現象、この2つの印象の違いを作れる建築こそ一番難しい学問だなと感じます。
このことについて設計できたら自分の中で一つ二つステップアップできそうな印象のある提案かなと思います。

長くなりましたが、読んでいただきありがとうございます。

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