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『実家なのにタトゥー入れてる人』

20240519


 僕は実家に住んでいる。
 
実家に住んでいるということは、今も地元から離れていないということであり、街を歩いていると今でも小学校の地区班が同じだった人を偶然見かけることがよくある。

その頻度は、街で赤髪の人を見かけることよりも多い。

 
 先日、最寄り駅近くで信号待ちをしていると、学年がひとつ下の地区班が同じだった青年が反対側にいた。自転車に乗っていた彼は駅から自宅へ帰る途中だったのだろう、あの時の面影を残したままぼんやりと信号が青に変わるのを待っていた。

声をかけるほどの間柄ではないため、信号が変わってすれ違っても特に話すことは無いのだが、すれ違った瞬間、彼の右腕には肩から手首のほうにかけて漆黒の龍のような生き物がこれでもかといった大きさで彫られていることを発見した。

 
めちゃくちゃタトゥーを入れていた。
 
彼も実家なのに。


 
 彼をあの場所で見かけるということは、ほぼ確実に今でも実家に住んでいることが確定する。もちろん、タトゥーを入れることが悪いことだとは一切思わないが、タトゥー入れちゃってるじゃん、実家なのに、と思わずにはいられなかった。

もちろん、タトゥーを入れる人は実家に住んではならないというルールがあるわけではないけれど、タトゥーを入れる人が実家というのは、どこかタトゥーそのものが持つ威厳のようなものが半減してしまっている気がする。

髪を染めたり、ピアスを開ける人が実家でもなんとも思わないのだが、髪の毛も黒くて、ピアスも開いていない人がタトゥーを入れている青年が実家暮らしであることに違和感があるのはなぜだろう。
 
 できることなら、タトゥーを入れている人は自らのお金で自らの生活を成り立たせてほしいような気もしてしまう。タトゥーを入れるための費用もそれなりに高いはずだが、そのお金を親が出しているという可能性もあり得るのだろうか。


 
 今でも実家に住んで親にお世話になりまくっている自分が言うことではないと思いながらも、その青年を見た時、頼むから一人暮らしを始めてからタトゥーを入れてほしいと考えてしまった。そこに順番なんて存在しないとは思いつつも。

 
 それでも、自分の外見を自分の好きなように形作ろうとする意識は僕も見習わなければならない。
 
最近ぼーっとしていたら髪の毛を切りすぎてしまったから。



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