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Yチェアに魅せられて

Yチェアが私にとって憧れの家具だった。

Yチェアとして知られるCH24、ハンス J. ウェグナーがカール・ハンセン&サン用にデザインし、1950年からずっと生産されている名作です。

Carl Hansen & Søn公式HP

大学生の頃からだろうか、Yチェアという名前を知り、写真などでよく見るあの椅子には名前があることも知った。

家具屋さんといえば、ニトリやIKEAといったリーズナブルで親しみやすいものしか知らなかった。当時の下宿先では当然、そういったところで買った家具しか置いていなかった。

Yチェアを置いている家具屋さんを見つけて、値札を見てびっくりした。想像の10倍くらいの値段が付いている。たかが椅子に8万(当時の価格)も出すなんて信じられないと衝撃を受けた。

その一方で、曲線の美しさ、木の滑らかな肌触りに惹かれるものがあった。

それからというもの、いいお値段のする家具屋さんを回るたび、Yチェアの取っ手をさすりながら、いい椅子だなと感慨に耽っていた。そしていつかは、この椅子を自分のうちに置きたいと静かな炎が心の中で燃えていた。

そういっている間に時は過ぎ、結婚して1LDKの家に引っ越すことになった。2人とも一人暮らしの時は、1Kの狭い家だったので、食事はローテーブルで床に座って食べていた。
1LDKの家では、キッチンやダイニングスペースが確保されているため、ダイニングテーブルと椅子を買おうということになった。

このタイミングしか無いと思い、妻にもYチェアを買いたいと打ち明けた。最初は価格にびっくりしていたものの、これから永く使う椅子になるだろうからということで、Yチェアの購入を決意した。

一方で、ダイニングテーブルについては予算削減のため、メルカリで格安のものを買って対応することになった。Yチェア1つでダイニングテーブルが5、6個買えるくらい価格差がチグハグだったが、一式揃ってみるとそれなりの家に住んでいるような感覚に陥った。

大学生の頃に憧れたものを社会人になって買うことほど、達成感のあるものはない。腰掛け5年ほどの憧れは、背伸びをして達成することができた。これからも我が家の食卓を支える縁の下の力持ちであり続けてほしいと願っている。

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