やりたいこと 好きなことがわからないあなたへ(第37話〜第44話)
(第37話)
何をすれば良いのか分からない時はとりあえず何かを始めてしまうことだ。その時に何となく気になっている仕事に早く飛び込んで、自分自身を実験していければ、そこから次が見えてくるはずだ。
就活生がこの " 何となく “ を軽視して、最初から自分にぴったりとフィットした仕事を探そうとしても、そんなものはほとんど見つからないと思う。
しかし今の日本では " 新卒でなけれは入れない会社 ” が存在し、結果次第でその後の人生が良くも悪くも大きく変わってくるのは事実だ。だから
" 現時点で評価されている会社 “ の中から、仕事を選ぼうとする気持ちを否定するつもりはない。
ただ、現時点では高く評価されていない会社や業界であっても、心の声である " 何となく ” に当てはまる仕事なら、覚悟を決めてしばらくやってみるのも悪くないはずだ。
希望通りに一流企業に入れた人は、その道に進んでいけばよいと思う。
でも私がこれから鍵になっていくと思う人とは、20代・30代で「何かやりたいけど、何をすればいいのか分からないし・・・ 面接も受けたけど全部落ちて・・・。一体これからどうやって生きていけばいいのか? 全く先が見えないよ・・・」と、大きな壁にぶつかっている人だ。
見方を変えると、彼らは幸運な " 選ばれた人 “ だと言える。なぜなら「その人自身が主人公になる人生」を、本気で考えなければならない状況に追い込んでもらえたからだ。
この壁に40代・50代でぶつかってしまうと、その時の家庭事情などさまざまな問題とリンクし、自分を再構築するのが手遅れになるかもしれない。
そういった意味で一流企業に入れた人は、周りからうらやまれながらも、自ら意識して「会社ではなく自分自身が主人公の人生」を構築していく必要があり、別の大きなリスクを背負っていると言える。
私は行動していく中で何かがつながっていくのを期待し、パン屋と弁当屋をかけ持ちで働き始めた。パン屋は手間のかかるクロワッサンは冷凍品だったが、その他は全て原材料からパンを作っていた。
私の仕事は主に翌朝のパン作りに使用する、クリーム類やスポンジ生地を作っておくことだ。決められた時間の中で作業を終えていれば何も文句を言われず、時間的な余裕はなかったが気持ちは楽だった。
弁当屋は一定の生活費を確保するための仕事で、次がはっきりと見つかるまでのつなぎだ。それでも賄いで1食分が浮くのはありがたかった。
飲食業に戻ってから2週間くらい経った頃、和風居酒屋時代の知り合いから、久しぶりに連絡があった。彼女はあるセミナー講師の下で、アシスタントとして働いていた。そして今度開かれるセミナーに、参加してみないかと誘われた。
彼女が先生と呼んでいたセミナー講師は、宗教に限界を感じて自身で真理を追究してきたという。その先生が何を話すのか? 何かのキッカケになればと思い、セミナーへの参加を決めた。
参加者は約10名。34歳の私が最年少で、40〜50代の人が多かった。どんなセミナーなのかと不安もあったが、集まった人たちの現在の悩みや課題について、全員で考えていくという内容だった。
私に順番が回ってきて、「もう一度、イタリアへ行きたい」と一連の経過も含めて伝えた。すると先生はいきなり、「日本人なら " あんこ ” 。和菓子でしょう。京都だ、京都」と言った。
" えっ ” 、この言葉を聞くのは初めてではないぞ・・・。先生が和菓子好きだから言ったとも思えない。むしろ先生を借りて、誰かが大切なメッセージを送っているのでは? そんな気持ちに駆られた。
もしかしたら、私を導いてくれるメッセージに、今までずっと気づかなかったのではないか・・・。
セミナーが終わると、私は、はやる気持ちを抑えて書店へと向かった。考えてみると、イタリアに行って " 日本文化 “ の重要性に気づいたこと。天才ソムリエの店でシェフに言われた言葉や、和食店の親方が口にした " パティシエ ” など、今までの経験が和菓子につながってくる気がした。
和菓子が自分の進むべき道なのか? 私は和菓子店巡りをするため、参考になりそうな本を何冊か購入した。
和菓子店巡りを始めて5店目。店を出てすぐに購入した和菓子を食べ始めたのだが、飲み物がなくても " あんこ “ がスムーズに喉を通った。
そして駅に着くまでの間に、購入した5種類の和菓子全てを食べ切ってしまったのだ。あんこって美味しいんだ! 和菓子ってアリだな! そう強く感じた。
これはもう実際に和菓子業界で働いてみて、私が選ぶべき仕事かどうか確認していくしかない。和菓子を意識して求人を見ていくと、当時住んでいた五反田から通いやすい和菓子店を発見した。
どこの和菓子店がいいかなどと迷っている暇はなく、今大切なのは一刻も早くその世界に入り込むこと。すぐに面接、即採用となり、私は同時に3つのアルバイトをしていくことになった。
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