海に行った、曇天休日。

 朝6時。
 雨が降っていた。しかし庭の枝と、草を刈らなくてはいけない。
 雨天決行。
 雨粒と汗の不快を纏いながら、切る、抜く、むしり取る。
 辛い。週6勤務を終えて、日曜日の朝に、なぜこんな目に遭うのかと。
「空模様に文句を言っても仕方がない。降ってるから、降っている」
 アスファルトの通路に雑草どもが箒でなでつけられ、回収できずに散乱する始末。雨よ、死んでくれ。酷い仕打ちだよ。とりあえず終えて、シャワーを浴びて、トイレと自室の掃除を済ませ、洗髪する。
 9時前に家をでて、バスで駅へ。総武快速で木更津に向かう。
 何故、木更津か。
 丁度よい距離。駅から近い飲食店と海。12年ぶりの海としては、実にほどよい海であると判断したのだ。
 ということで、乗り換えなしの直通運転で木更津へ。姉ヶ崎駅を超えたあたりから田んぼや畑が増え、長閑な空気に変わっていく。10時15分あたりに到着し、駅前にでる。しかし曇天が過ぎる。
「あなたにはこれで充分ですよ」
 と、言われているような、そんな天気である。梅雨明けしておらず、当然だろうか。
 店までの地図は頭に入っているから、どんどん歩いていった。それはもう初めて来るとは思えないほど、早足で、勇み足で、健脚をいかんなく発揮した。が、ここだ、と、曲がってみても店は見えてこない。もうすこし先だろうと横断歩道を渡って見ても、海が見えてこない。
 代わりに「セカンドストリート」が見えてきた。
 セカンドストリート? それは東口方面では?
「あ。やってしまった」
 反対側に行ってしまったのだ。リターン。汗だくで「最悪だ、最悪だ」とぐちぐちしながら木更津駅を目指す。本来、開店10分前には着いているはずというのに、晴れ間が見えて、汗はだくだく、服びっちょびちょ。
 何故、東口に行ってしまったのか。焦り過ぎである。無能にもほどがある。今度こそ東口にでた。
 かつて賑わっていたのか、アーケードが暫くつづく。ところどころ錆びたアーケードに哀愁を感じ、夜8時から始まる「夜のお店」に素朴な猥雑さを覚え、ヤシの木を抜けたところに港があった。
 船だ。木更津港だ。木更津市および君津市、富津市に跨る港湾法上の重要港湾で、港則法上の特定港に指定されている。
 工業港、マリーナ、旅客ターミナルおよび交流拠点施設として「きさらづ海の駅」及びマリーナが整備されたらしい。立派な船が港に係留され、これは完全に「海」に来たと言っていいだろう。
 俄然、テンションが上がり、今回のお目当ての、
「スーパー回転寿司 やまと 木更津店」に到着。
 時刻は午前11時15分。
 すでに、外まで若干の行列ができている。ミスで遅くなったとはいえ、この時間でこの混雑とは、凄い人気である。念の為に三枚持ってきたミニタオルを2枚消費して足らないほど、汗が噴きだしている。
(これは甘くみたな)
 なんとか順番待ちの紙を発券し、待つ。この時点でコットン・リネンのTシャツはシャワーを浴びたように濡れ放題である。いや、服を着たまま風呂に入ったといって過言ではない。その状態で待つこと30分ほど。
 お一人様のカウンター席の特権か、いくらか早めに席につくことができた。お茶をつくり、手をおしぼりで拭く。
 さて、朝食は抜き、満を持して久しぶりの回転寿司。
 以下、食した品。

・上赤身
・いか
・活赤貝
・金目鯛
・やまと五貫
・地魚三貫
・南房総三貫
・生たこ
・かんぱち
・活とり貝
・岩塩炙り三貫
・あら汁
 
 しめて、調度予算通り、7,000円。
 感想としては、美味いです。普通に。当然のように。
 活赤貝は、フルーティーに感じるほど新鮮で、
 活とり貝は、柔らかい食感でうま味が爽やか、
 やまと五貫は大トロ、中トロ、真鯛、かんぱち、はまちと贅沢な味わい。
 その他のネタも新鮮で美味い。あら汁は、200円という値段で、ゴロゴロあらが入っていてお得です。
 注文はタッチパネルで、職人さんが直接だしてくれます。食事を終えたら、木札をレジまで持っていき、会計となります。
 非常に満足度は高かった。
 非常に人気らしいので、開店前に並んでおくことをお勧めします。一応、外で待つこともできます(順番がきたら店から携帯に連絡があるようで)。
 店からでると、反対側の木更津港沿いの道を歩き、駅へ向かう。普段、船なんて見ないから、まじまじと見ては写真をとる(ガラケー)。マリーナ前のベンチで一瞬、海を見る。磯を感じる。立ち上り、海に後ろ髪を引かれる思いで振り返り、全身で海の雰囲気を感じとった。
 これにて「今年の夏の海」終了である。
 これで良いと木更津駅へ向かう途中、「パチンコ アポロ」の看板があった。字体や丸い電球が列をなすあたり、完全に昭和である。壁は板張りされ、すでに閉店状態だった。
 錆びたアーケードも相まって、「かつての賑わい」という単語が浮かぶ。駅の近くには「テナント募集」の張り紙が多い、デパート?があった。
 どことなく哀愁を感じる、素敵な海の街だった。
 また来るかと言えば、答えに窮するが、ご縁があれば。 
 と、いうことで一路、津田沼へ。
 当然「丸善 津田沼店」である。県下ナンバーワンの蔵書数を誇る大型書店である。そこに至るまで、千葉駅、津田沼駅で炭酸飲料を計2本も飲んでしまった。夏の炭酸は魔物だ。抑えがたい炭酸欲。糖分過多だが、しかたないだろう。せっかくの日帰り旅行なんだから多めに見ることにする。
 在庫検索の機械に文句を言っているモテなそうな男(人のことは言えない)が不快だったが、予算を考えつつ買い物かごに書籍を入れていき、会計を終えた。
 店の三階の入り口で、天然石かパワーストーンのブレスレットなどが売っていたが、あれは効果があるのか。いくつか買ってみたとしても、しばらくしたら面倒になり、つけなくなる。間違いなく。
 緩んでいた財布の紐をしめ、帰宅の途につく。
 夏が半分、梅雨明けを待たずして終わった。
 あとはお盆休みの墓参りのみ。
 さて、持参した傘の出番がなかった。なんなら、晴れ間まで出やがった。つまり傘が単なる「荷物」になってしまったのだ。こうなると、傘に対する憎しみでイッパイである。雨が降らなければ、あれほど邪魔なものはない。
 ホント、わたしの傍で浮いていてほしい。「傘ドローン」開発してくれ、イーロン・マスクさんよ。持ちたくない。浮けよ、傘。
 なんてしてる間に家に着いた。
 朝の草枝刈りの掃き残しを掃き、洗濯を終え、冷房をキンキンにしてこのnoteを書いている。
『海に行った、曇天休日。』も、これにて終了。
 海に縁遠かった世界とオサラバして、ほんの少し海に「お近づき」になれた。しかし、砂浜は遠い。
 海水に触れる。海水浴。岩場で貝や蟹と戯れる。海の家で焼きそばとビール。民宿に泊まる。
 といった本格的な「海」にまつわるアクティビティをいつかは、心から楽しめるように精進していきたい。
 この一歩が充実した人生に繋がることを祈り、了とします。
 


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