変えてみよう。 

 ドラえもんを、変えてみよう。
 日本屈指の長寿アニメ。説明不要だろう。
 ドラえもんの基本の流れは、のび太君の困りごとを解決する道具を、ドラえもんが提案、貸与。簡単に言ってこんなものだ。
 では、何を変えよう。

「のび太がしっかり者で、一切、ドラえもんを頼らない」

 ある日の夕方。
 学校から帰ってきて直ぐに宿題を始めるのび太。その様子を訝しげに押し入れから見つめるドラえもん。
(どうしたんだろう、のび太君、あれだけ後回しにしていた宿題を、、)
 瞬く間に宿題を終わらせ、今日受けた授業の範囲を復習、テストに備えて予習を始めるのび太。それを凝視する真っ青なドラえもん。
 ドラえもんはたまらなくなり、背後から声をかける。
「ねぇのび太君、何か、困ったことはない?」
「無いよ。ありがとう、ドラえもん」
 戦慄するドラえもんは、ひとり泡を喰っていた。目の前で黙々と勉学に励む少年は、本当に、あの、のび太なのか? いつもならばガキ大将のジャイアンにイジメられ、泣きながら頼ってくるというのに。
 外も暗くなり、のび太は夕食のため階下に降りて行った。
 ドラえもんは独り、どら焼きを貪りながら思った。
(これでは、僕の存在意義がまるでない。映画版でのみ行動力と勇気を発揮する彼が、レギュラーでこれでは番組が成り立たない)
 このままでは視聴率のオワコン化は避けられない。
 出木杉君は一人で良いのだ。番組のバランスが崩壊してしまう。ドラえもんの双肩には、長寿番組の存続という、重責がのしかかっているのだ。
 深夜、野比一家が寝静まってからも、押し入れで目をギンギラギンに血走らせながら、明日以降の計画をその頭脳でめぐらせていた。
 翌朝。
 のび太君を見送ったドラえもんは、とりあえず二度寝した。
 のび太君が帰宅する夕方に備え、体力を温存しなくてはいけない。今日はママがパートが休みな為、家事をこなす必要がないのだ。普段、自律思考型のタヌキ型ロボットととして、便利に使われているのだ。
(言ってこないなら、こちらから指摘、提案すればいい)
 狸寝入りし、午後2時になると、シャドーボクシングをはじめる。小学5年の男子に舐められるわけにはいかない。風を切る拳の音が室内に響く。
 気が付けば夕間暮れの時間。
 階段をのぼってくる音がする。
 待ち構えるドラえもん。息を殺す。息を整える、、、
 襖が開いた。のび太だ。黄色の半袖。青い半ズボンに白のハイソックス。
「のび太くん。君も、小学5年生だ。年頃の男の子だ」
「うん。そうだけど、何? 勉強しなきゃいけないんだ」
「仮性包茎だろう。いや、真性と見た」
「いきなり何を言ってるんだ。子供向けアニメだよドラえもん」
「性教育だよ。これから青春時代を迎える君のためにひみつ道具を提案したい。その前に今の状態を確認しよう、いいよね、のび太君!」
「え! ちょっと待って」
 ドラえもんはシャドーボクシングで鍛えたスピードを、高速タックルに活かし、のび太君の半ズボンとブリーフを脱がした。
 仮性包茎だ。
 すかさず、ドラえもんは四次元ポケットから道具をだした。
「パパパ、パッパパーン。ズル剥け亀頭露出クリーム!」
 慄然として固まっているのび太君を尻目に説明を始めるドラえもん。
「これはね、ペニスに塗り込むだけで、ズル剥けになるんだ。自然と不要な皮が退化して、太さをも向上させる優れものさ」
「止めてよドラえもん!」
 のび太の声が響く。ドラえもんは息を荒くしながら、のび太くんの仮性包茎ペニスにクリームを塗り込んでいく。
 すると徐々に皮が退化し、太さが増し、亀頭が露出していく。
「ホラ! ズル剥けだ! これで、静香ちゃんと、、、、の、、」
 ドラえもんの視線の先に、ママが仁王立ちしていた。
「ドラえもんっ! これはどういうことなの! イタズラ、性的虐待よ!」
「違うんだよママ、不要な皮を除去してただけなんだ。太さも増してるし、これで子孫繁栄に繋がるから!」
 泣き出すのび太を見て、無言でドラえもんを担ぎあげ、窓を開けて、外へ放り投げた。「あんまりだぁ!」
 ドラえもんの悲鳴が響いた直後、重い落下音がした。ほぼ同時に車のブレーキ音。衝撃音、、、
 ママは、のび太のペニスを優しくタオルで拭いてやり、パンツと半ズボンを履かせる。
「もう大丈夫よ、のび太」
「ママ、、、!」
 その頃、家の前の道路で煙を上げながら、這いずりながら家に戻っていくドラえもんの姿があった。
(完全にミスったな、、、次は絶対に巧くやらなくては)

『変えてみよう。』
 変えすぎた。これでは番組終了である。コンプライアンス無視どころの騒ぎではない。企画段階でボツである。下ネタ全開であると同時に、これでは旧ジャニーズの問題を想起させ、BBCがダッシュで取材にやってくる。
 次、変えてみようをやる時は、下ネタを避けようと思う。
 そろそろ風呂が焚ける。
 今週の酒のアテは、大量の焼き鳥の盛り合わせと、田舎煮である。
 2000字を超えました。明日のnoteもお楽しみに。
 

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