妻に去られた男が娘にも去られた話 第4話
中庭の賑わいを他人事のように聞き流しながら、ダユーはドゥーべサーに髪を梳かせていた。主の機嫌がよくないので表には出せなかったが、年若い侍女には主に従って華やかな王城の地へ赴くことが嬉しくてならなかった。生まれ育った地を離れることに対する想いを主従は共有していなかった。ドゥーべサーは主の御気色を損ねぬよう浮かれた気分を抑えているつもりでいたが、疾うに彼女の気分は主の気分を害していた。そうと気づかぬドゥーべサーは、心の中で鼻歌を歌いながら主の豊かな黒髪を飾る細帯を手に取った。そ