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【詩】寂寥

埃を被った小さな車
君と遠出をしたのは いつ頃だろう

それは意外な朝だった
君とふたり 予定外の遠出を決めた
旅行パンフレット片手に いつの間にか旅に出た
県境を幾つも飛び越え 橋の向こうに街が見えた

それは賑やかな街だった
君とふたり 中華街での食べ歩き
ノンアル片手に 道中歌った歌を口ずさんだ
レモネードが映える君と 思いきりはしゃいだ

それは忘れられない画になった
君とふたり 街角の古着屋さんでお買い物
君のワンピース姿は もうすっかり夏で
その格好に またひとつ恋をした

日没の頃、
僕らは海辺へ車を走らせた。

そして今日 それは静かな朝だった
僕はひとり 埃を被った車を出した
無邪気に笑う君は 
助手席にはもう居なかった。

あれは忘れられない恋だった。
もう二度と 訪れることのない恋だった。










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