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【詩】仮面

それは
花に擬態する蝶のように。

それは
猛毒を持つ鮮やかな魚のように。

それは
不意に向けられたカメラのレンズに
哀しい作り笑いを浮かべるように。

それは
マジョリティーに押し潰され
納得した意見も言えず口を塞ぐように。


幾つもの仮面を身に纏い
自分を本当の姿から遠ざけた。

仮面をまた別の仮面で覆ってゆけば、
可憐な「美しさ」や唯一無二の「強さ」ですら
仮面の内側を這う錆へと化した。

本音とは正反対の表情を
仮面で作ることが常となれば
親しい人間に本音を吐くことさえも
いよいよ怖くなった。

マイノリティーの意見に目を瞑れば、
救われる筈の誰かを見放したような気がして
仮面の内側に有る尖りが
僕の顔を引っ掻いた。


「こんな仮面、力づくでも剥ぎ取ってやる。」
そう思えば、思うほどに
鏡に映る仮面の中の自分が大きく歪んで見え

とうとう
硬くへばり付いた傷だらけの仮面と
柔らかな皮膚の付いた自分の顔を
見分ける術さえ失った。

仮面の奥の目に涙が溜まっている事を
誰にも気づかれることなく
その寂しさに豪雨の街へ飛び出しても
前髪から雨粒が滴る僕から目を逸らし
ただ真横を通り過ぎる者にしか出逢えなかった。

本当は誰もが
仮面の奥の涙に気づいていたのかもしれない

けれども
仮面の奥の正体を探るのが怖くて
わざと目を伏せていたのかもしれない

しかしそれは
誰が悪いのでもなく
ただ仮面を被ることで
無駄な関わりを生まないようにする為に
自然の摂理が引き起こしたものかもしれない。

もしくは

本当の自分を隠し 
その場に容易く染まれる人材を
理想像として掲げた結果
功を奏してしまった社会が
見事に完成してしまったのかもしれない。

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