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18きっぷ

18きっぷ

中学生の頃から大学生まで18きっぷには随分お世話になった
たぶんこれがなければ、酒もタバコも覚えなかったと思う
そう18きっぷは学生という行動範囲から未知の世界への扉を開く文字通り「フリーきっぷ」だった
中学生の頃は優等生で通っていた
でも心のどこかがいつも苦しかった
ありきたりなことだ
「行ってきまーす」
最寄り駅でおろしてもらってきっぷを片手に改札口に向かう
この飼い猫から野良猫になる瞬間がたまらないのだ
名古屋に向かい東京行き夜行列車に乗り込む
同じような野良猫たちでごった返す
ボックスシートにありつければラッキーで洗面所で体育座りで夜を明かしたこともある
でもそれでいいのだ
そんなことを長期休暇毎にやってるうちに中学2年になる春休みにぽっかり空いてる席にこれ幸いと思い何も考えず座ってしまった
座ってから周りを見たら目の前はいわゆる「今日から俺は」に出てくる「田舎ヤンキー」だった
赤T、ボンタン、ソリコミ、細眉
思わず笑いそうになってしまった
そんな一生懸命笑いを堪える中坊が気に入ったのか「おまえ今笑いそうになったやろ(笑)」と語りかけてきた
「いや笑ってません ニコっと微笑んだだけです」
「笑っとるやないかい」
「あ!バレました(笑)」
お互い名前交換をした
見た目と正反対の真っ当な名前だった
年齢は18 仮に正人兄さんとしておこう
高校卒業して東京で一旗あげるらしい
出身は大阪の南
13と18の野良猫の会話
好きな子の話、好きな番組、好きな歌手の話(BOOWY、長渕、米米は定番)、将来の夢
きっと周りは遠吠えに聞こえただろう
タバコはこの正人からもらったキャスターがデビューだった
ゲホゲホするのが楽しいらしく一通り吸い方を教えてもらった
そんなこんなで東京駅に着いた
俺は上野、正人は新宿へ
「また会おうぜ!」
そう携帯もまだ一般ではない時代
連絡先交換なんてするはずもなくそのまま今生の別れ
でもあの時はお互いまた東京駅で再開できるような気がした
出張でたまに新幹線で東京に着いて東海道線ホームに行くとふと思い出す
鼻から抜けるキャスターの香りとやんちゃなあばよのポーズ
正人から教わったのは、ヤンキーも怖くないこととタバコの味だけだったが

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