還暦の近い父にアルマーニの靴下を。

アルジャーノンに花束を、みたいにならなかった。
こないだ、父親の誕生日だった。

そのことを思い出したのが誕生日の前日の深夜。
前々日の寝る前と言った方が伝わるだろうか。

父ときょうだいの誕生日は近く、正直、私はきょうだいの誕生日のことで頭がいっぱいだった。
父には申し訳ない。

うとうとしていたところ父の誕生日に気付き、焦ってAmazonを開く。

「靴下がきっといい!何足あっても困らないし!」と急いでプレゼントの内容を考える。

でも、さすがのAmazonでお急ぎ便を使っても当日には届かないことが判明した。

父の年齢で身につけても恥ずかしくないようなメンズブランドを検索し、ある程度目星をつけたところで無理やり目を閉じた。
なんせ目を覚ましたら靴下を買いに行って、速達郵便で送らなければいけない。

私はメンズブランドに詳しくない。
ゆえに、聞いた事のないブランドのものを買うのは嫌だった。
でも、ラコステは明るくて似合わない。
ポロは地味。
ベネトンやKENZOは多分飽きてるし、そこまで好きじゃない気がする。
ナノユニバースやトゥモローランド、BEAMS、ユナイテッドアローズは10代も着てるよね。
ポールスミスは可愛すぎるし似合わない。
クレストブリッジは靴下でさえ高い。
※個人的な感想です。

難しい・・・。

寝る前に調べた時、たまたまエンポリオアルマーニの靴下をAmazonで見つけて、そのデザインがよかった。
ネットの情報によれば、父の年齢でも着られるらしいし、昔からあるブランドらしい。
何より、聞いたことのあるブランドは安心できる。

アルマーニって名前しか知らないけど、あまり着ている人を見たことがない。
私が知らないだけかもしれない。
GUCCI!!!VUITTON!!!CHANEL!!!みたいな人は見かける。
なんの仕事かは伏せる。
その点、なんだかアルマーニいいじゃんって思った。

正午、街中に到着し、何店舗もあるエンポリオアルマーニの店をまわる。
無知すぎて、アルマーニの中ではジョルジオ・アルマーニが一番上のラインだと知らなかった。
てか、アルマーニっていろんな種類あったんだみたいな。
どの道、靴下でさえ手が届かないような値段だったみたい(帰宅後、検索した)だから、ジョルジオ・アルマーニには行かなくてよかったのだけど。

Amazonでいいなと思っていたエンポリオアルマーニの靴下が実際に百貨店で売っていた。
実物を見ても、やっぱりいい。
何種類か色があるけど、父は多分チャコールグレーが好きだし、長さも柄も、職場へ履いていけるようなデザイン。
すごくいい!!と胸がギュッとなった。

どうせなら、アルマーニで靴下を揃えようと思って、もう一足エンポリオアルマーニの靴下を選んだ。

これがまた見つかるからいいよね。
父は明るい色が似合わないし、嫌い。
でも、もう一足の靴下は、地が暗いネイビーか黒に近くて、よく見ないとわからない風にアルマーニのブランドマークを虹色で縫ってあった。
本当に些細な遊び心のあるデザイン。
これなら明るい色が嫌いな父もきっと抵抗なく履ける。

会計時、きちんとエンポリオアルマーニの箱に入れてもらい、ゴールドのリボンを付けてもらった。

あとは、アマギフと手紙を添えて、速達郵便で送った。

読書家の父は、実家の至るところに本をしまっている(というか母が考えて収納している)。
Amazonだと、状態は別として、中古の本はかなり安い。
そのことを教えても、父は動かない。
そういう人だから、私がアマギフを贈れば使う気になるかなと思った。
毎日仕事に励む父が、わざわざブックオフで中古本を探しているのを聞くと、少しでも手間をかけずに本を楽しんでほしいと思った。
本当は金券のようなものを、贈りたくないのだけれど。
ということも手紙に書いておいた。

当日にプレゼントが届いて、仕事から帰ってきた父は嬉しそうだった。
ジョルジオ・アルマーニが一番格が上だということは知っていたらしく、でも、エンポリオアルマーニの靴下を喜んでくれた。
私としては、ジョルジオより格下なエンポリオは失礼に当たらないか不安だった。
でも、昔からアルマーニに憧れていたから、靴下でも履けるなんて嬉しいし、靴下ってすぐだめになるから助かると言ってくれた。

(「ちゃんと足の爪切ってるのに、何故か靴下がダメになるんだよね〜」と天然ボケ発言をしていたが、私と同じで歩き方に癖があるのだと思う。足の裏のまめも私と似た場所にできるし。)

アマギフに関しては、今はほしい本ないんだよね〜とのこと。
でも、ワイヤレススピーカーがだめになったから、それはほしいかな〜、とか。

私からは、
・靴下は意外と見られている
・靴を脱ぐような時は特になるべくいい靴下を
・仕事に限らず、お母さんと出かける時にでも履いてほしい
・アマギフは本に限らず、何に使ってもいい

ということを伝えて父との通話終了。

母もアルマーニいいじゃんとのことで、事なきを得ました。

さて、アスペルガーの親がいる方の気持ちをネットで読んだり、実際にお会いして聞いたりすることがありました。

中には、ものすごく親を恨んでいる方もいたり、逆に干渉されなかったからよかったと言う方もいたり、いろいろなのだなと感じます。

私は父とバトったことがない(物心ついた時から、この人に期待はできないと悟った)けど、私以外の家族は父とバトっていました。

私は父が好きです。
本当にどうしようもないけど、表現の仕方がちがうだけで、ただただ母のことを純粋に真っ直ぐ、娘の私より愛しているのだと昨年初めて気が付きました。
そして、何があろうと絶対に仕事を辞めず続けてきたし、今もそう。
何があったかは書きませんが、誰にでもできることではないはずです。

母をこれからも守ってほしい。
トムとジェリーのように、きっと母も父がいなくなれば寂しい。
母は、口では「スッキリした、楽になった」なんて言うかもしれないけど、絶対に本音は違う。

それを、父が生きているうちに伝えられたらいいのに、家族というものは近くて遠く、難しいのです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?