「最近の若い子は、ちょっと言っただけでやめちゃうし」と嘆かれた夜

「最近の若い子は、ちょっと言っただけでやめちゃうし」
そう上司に嘆かれたのは、歓迎会の二次会の夜だった。
「オブリガートさんは、色々言われても拗ねずにちゃんと直してるから偉いよ、最近の若い子の中だとすごい方だよ」
物差しで測られているような窮屈さをかすかに覚えつつ、
でも嬉しいは嬉しいので「ありがとうございます、皆さんのご指導のおかげです」と謙遜した。

上司も部下との関わり方で困ってるんだな、と思う一方で、
きっと物事を昔よりも切り捨てやすい世の中になっているのだなとも。
残念ながらわたしは昭和や平成初期を生きていないので分からないけれど、
水も飲ませてくれない運動部を耐え続け生き延びた時代と、
「合わないからやーめよ」が普通になってきている時代だと、
やっぱりズレは生じてきてしまうよね。

今のように、すぐに「合わない!」「やめよう!」って
軌道修正ができる世界はすごくいいと思うんだよね。
合わない世界で咲き続けるよりも、一番きれいに咲ける場所で咲き続けた方がいいと思うから。
「西の魔女が死んだ」という小説で、「シロクマがハワイより北極で生きることを決めたからといって、誰がシロクマを責めますか」という台詞(若干違うかも)を読んだことがあるけど、ほんとにその通りだと思う。
ガジュマルなら熱帯に住めばいいし、サボテンなら砂漠に生きればいい。

ただ、社会の場合って、当事者は自分だけではないのではと。
北極がサバンナになったり、ハワイが雪山になったりすることはないけど、
社会の場合は人間が、組織が変わる可能性もあるし。
例えばだけど、日本では通常、「いじめられた子」が「いじめっ子」から逃げるために転校したりフリースクールに行くことが多いけれど、
外国では「いじめっ子」の方が転校させられるらしい。
これって、組織が変わって良い影響をもたらした例だと思う。

「最近の若い子は、ちょっと言っただけでやめちゃうし」と嘆いていた上司は、それこそ職場の組織を色々変えてきた方だ。
あまり詳しくは書けないけど、ちゃんと声を上げて組織ごと変えていく人だし、ほんとに言うべきことはしっかり言うし、業務改善も相当してる。
環境ごと変えられたのは、
○上司が、ちゃんとコミュニケーションを取って「おかしい」と伝えているから
○環境(を統治する方)が、「確かにおかしい」ってコミュニケーションを受け取り、変わってくれたから

この2点に尽きるなと。

それがどうだ。
多分、今の時代は、
「自分はシロクマだけど、ここはハワイだから出て行こう」と、
よく見たら部屋のエアコン設定温度下げてもらえばいいだけなのに、
「環境は変わらない」と諦めて出ていく人が多い気がする。
他人も環境も変えられない、自分が逃げるしかないって決めつけて。
バイトを飛び、サークルを飛び、無言で消えていく人たち。
だから、環境側も分からないんだよ、「何が悪いんだ」って。
分からないから、「ちょっと言っただけでやめちゃう」って上司はビクビクするはめになるし、
分からないから、組織も変わらないまま劣化していくし、挙句の果てに変わり方を忘れるし、なんにもいいことない。
誰かが何か言えば、環境が変わってくれるかもしれないのに。
傷つきたくないからかな。後ろ指差されたくないからかな。
そりゃそうだよね。「変わるかもしれない」って期待して、裏切られたくないもんね。最近の若い子を代表して共感する。

相手が、環境が「変わる」だなんて信じられなくなったから。
だから、何事も断ち切ることが容易になったんでしょうね。
切ない時代になったなあ。

この記事が参加している募集

#仕事について話そう

109,852件