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ラジオNIKKEI出演メモ(9/4)

本日、ラジオNIKKEIのマーケットプレス(9:15~9:30)に出演しました。
若干補足を加えた、簡単なメモを作成しました。


足下のマーケットの見方


8月の急落から株式市場は順調に回復してきましたが、9月は株価が下落する事が多く、中間決算を控えて自社株買いも入り難い時期なので慎重に見ています。

米国は利下げに関してやや楽観的に見過ぎている可能性もあり、雇用統計次第では利下げ幅はマーケットの期待を下回る可能性もあります。(25bpは下げるでしょうが、50bpと見ている人もそれなりにいます)また、年末4.25~4.5%との見方が多く、それは今よりも1%低いのでやや楽観的だと考えています。

今年は、大統領選挙も最後まで分からなくなる可能性も高いので、踊り場が10月頃までずれ込む可能性もあります。日米ともに政治の季節となっていますが、結果は流動的ですが、10月後半になると需給も改善してきますし、為替が円高にならなければ中間決算発表での上方修正も期待できることなどから上向の話が出て来やすくなるのではないかと考えています。

どちらかというと短期的にはアップサイドよりもダウンサイドリスクを見ているものの、中長期ではあまり心配していません。

本日は大幅安ですが大商いにもなっています

8月に急落後大きく戻したこともあり、下げた局面では確実に買いたいという人も多いのだと思います。

年金も四半期末にはアロケーションを合わせたいので下落局面では買いが期待出来ます。

一方、8月に1兆円以上を買い越した事業法人(自社株買い)に関しては中間決算期末が近いので買入が難しくなる時期に入って来ることには注意が必要です。

NVIDIAの株急落に関しては反トラスト法を巡る報道もありました

Bloombergが「米司法省は半導体大手エヌビディアが反トラスト法(独占禁止法)に違反した証拠を求め、同社や他の企業に文書提出命令状を送付した」と報じています。

NVIDIAは圧倒的なシェアによる優越的な地位を利用し、顧客が他社の半導体に切り替えるのを難しくさせているのではないか、という疑惑が生じていました。

今回、司法省がNVIDIAに送付したとされるのは「情報提供を義務付ける法的拘束力のある要請書」です。

ただこれは、「違反だ」と通告したというものではありません。

ただ、法的拘束力のある文書を求めたということは、「単なる質問」ではなく、問題意識に基づき「具体的な証拠収集」を行っている事になります。

記事にあるように、顧客が他の半導体への切り替えようとするのを、NVIDIAが妨げていれば問題でしょう。

NVIDIAは4月に人工知能(AI)のデータ処理を効率化するソフトウエアを手がけるイスラエル新興のランエーアイを買収すると発表しており、この買収で新たな分野での競争を阻害し、市場での独占的な立場を保とうとしている可能性が指摘されていました。

NVIDIAはデータセンター向けのGPUで約80%のシェアを持っています。

また、半導体を動かすソフトである「CUDA」がNVIDIAの強みとされていますが、CUDAはいわばWindowsのようなOSで、GPUを効率的使うために、AIシステムの多くが活用しています。

マイクロソフトのWindowsやOpen AIなどOSの持つ力に対しての対応が遅れたことも、今回の早い対応につながっているのかもしれません。

*このニュースに関しては、現時点では分からない事が多いですが、AIに関しては後述しています。

経済統計に関して

国内では5日に7月の毎月勤労統計、6日に7月の家計調査がありますが、やはり注目は米国で、今週は雇用統計を中心に重要経済指標の公表が公表されます。

昨日発表されたISMに関しても内容はマチマチでしたが、雇用関係は強いと利下げ幅に影響が出るので、強くても良くないし弱すぎても良くないという状況です。

ジャクソンホールで利下げに関して、タイミングとペースはデータや見通し、リスクのバランスに依存するとの考えを表明したものの、労働市場のさらなる悪化を阻止することを強調したことから、事実上、金融政策が雇用と紐づけられています。為替・株式市場の注目は米国雇用統計に絞られている感があり、その他の景気指標も強くは余程の事がなければ、マーケットに大きな影響は与えないと見ています。

現時点では織り込むのは難しいですが、景気指標よりは、日米ともに各候補の政策などが気になるのではないでしょうか。

9月相場は過去、思いもよらない変動に揺れ動くことが度々ありました

9月の変動というと2008年のリーマンショック、2001年の同時多発テロ、1992年のブラックウェンズデー(イギリスが欧州為替相場メカニズム(ERM)から離脱した)、1997年のアジア通貨危機、1998年はLTCMの破綻、1986年のミニクラッシュ(ブラックマンデー1987年10月の前年にあった主にハイテク株の下落)などが思い出されます。

これらは、突発的なものもあり、予想するのが不可能なものも多くありました。

株式売却の判断


「note」で詳しい相場分析や、機関投資家の動き方などについて解説されていますが、春先に上げられていた「相場急変時の対応」という記事で、『保有している銘柄の多くが上昇し、割安感が乏しくなっていました。そのため私は上昇余地がなくなっていた銘柄を段階的に売却していきました』とありました。
 ここでいう「割安感」とは、一般的なPERのことでしょうか?

私は、銘柄を買入れる際に、どの様になったら売るかという事を決めています。それはバリュー銘柄であれば適正なバリュエーションという時もあり、グロース株であれば成長シナリオが崩れた時としている場合もあります。

バリュエーションといった場合、PERなどで設定している事もありますし、銘柄によってはPSRで設定している事もあります。これは各銘柄ごとにその特性に合わせて設定します。

グロース銘柄に関してはバリュエーションは効きにくいので、グロースドライバーに対するKPIを個別銘柄ごとに設定しています。

*「世界標準の資産の増やし方」P109にある、”資産管理はラグビー型でなくアメフト型で”の考え方です。


先程、言われました記事は、ITバブルの時のことだと思います。

春先は景気敏感株を多く持っていたので、それを売却したのはバリュエーションです。1998年は1997年のアジア通貨危機の影響が残り、8月にロシアのデフォルト、9月にLTCMの破綻などがあったので、年初は多くの株が割安だったのです。その後、春先にかけて市場が回復し、保有していた景気敏感株も多くはその時のサイクルで付けると考えていたピーク利益から想定される適正株価をすでに上回っていたので売却していきました。(これは先程の説明では、バリュエーションで買った銘柄を目標株価で売却するというものです)

記事の中では、ITバブル後半でIT銘柄を売却していった事も書いています。私はグロース株に関しては買入時に適正株価を設定しても想定を上回る成長を遂げることも多いので、株が上がっても安易に売却する事はしません。

インターネットの成長やそれに伴う半導体などの成長に関する見方に関しては、特に変化はなかったのですが、これはあまりにもおかしいという様な事象が多くみられる様になったのが最大限の注意を払うようになった理由です。

当時はこんなことがありました。

サンリオの辻信太郎社長はスモールミーティングでも業績の事はそっちのけで、保有株の含みの話だけをするようになり、今後株価が上がる事は確実だと発言しました。

サイバーエージェントが上場準備をしている時のスモールミーティングにおける資料には、数字が書かれていませんでした。雲の絵にソフトバンク、光通信、サイバーエージェントと書いてあり、これらの企業は全て急成長を遂げるが、社長で一番若いのは私だから最後は自分がすべて取るというだけの説明で、事業として何をやっている会社かの説明はありませんでした。

最後にバレンタインデーに光通信が100兆円チョコレートというのを配って、ここで、株価買わないと、このままストップ高が続いて買う事が出来なくなる社長が宣言されました。

私はこれで全株売却する決断をしました。

やはり、業績やバリュエーションの話が全くなくなり、理由もなくただ上がるのだという説明になったら流石に合理的な投資家はそれを買う事は出来なくなるという事です。

AI関連株について


AI関連のような成長株は高PERが許容される」とされていますが、どうお考えですか?
 また、「上昇余地」とは、どう判断すればよいのでしょうか?

AIに関しては世界を大きく変える可能性のある技術であり、当然高いPERは許容されます。これは成長率が高いので当たり前です。先ほどの議論を踏まえますとPERが高いとか業績はどうだという話をしているわけですからバブルではないという事です。(予想の置き方が難しいですが、基本的にはDCFを参考にします)

AIに関しては今考えておかなければならないのは、いくつかありますが、ひとつには今の技術でAIで出来ることはどこまでなのかという事です。

1-2年前まではAIに世の中にある様々な情報を与えていけばいつか人間の知能を超える、いつシンギュラリティーに到達するかが議論されていたわけです。

ところが、ここ数年で膨大なデータを読み込ませたにもかかわらず、意外と賢くならない。人間の脳の仕組みが万能な訳ではないですが、改めて脳の仕組みが注目されています。

最近は少なくとも大規模言語モデルに関しては、「データ不足に陥ることを背景とした開発の限界点」が近い考えられています。そして、現在ベースとなっている学習用における第一次開発競争が一段落する時が、AI需要がいったんピークアウトするタイミングと考えられます

次に、今あるAIの仕組み、代表的にはディープラーニングという深層学習ですが、これと異なる論理展開となった場合、情報処理の仕方が大きく変わる可能性もあります。そうなると非常にシンプルな演算方法になる可能性もあり、その場合には今のようにひたすらデータを貯め、半導体を並べて処理するという方法でなくなる可能性もあるわけです。

AIに関しては株のバリュエーションを追いかけるよりも出来るだけ技術トレンドに興味を持って、需要が加速するのかピークアウトするのか注目すると良いと思います。

NVIDIAに関しては、四半期比の伸び率のピークは、24年下期から25年1Qになる可能性が高いと考えています。もちろん、製品自体の成長は少なくとも25年10-12月期まで続き、四半期成長率はプラスを維持する可能性が高いのではないでしょうか。

また、AIに関しては今は学習用が多いのですが、今後は推論用が伸びてくる。一定のルールやアルゴリズムに基づいて「演繹推論」や「帰納推論」を行う。医療・チャットボットなどでも使われる。我々の投資の世界だとユーチューブなどのSNSからも情報を取りながら推論するシステムが出てくるわけです。これはPCなどあらゆる端末で使われる可能性がある。その時に現在のAI技術に根本的な変化がなければ、データセンターのキャパシティは不足し続けることになります。

だからシャープ工場の跡地を利用したデータセンターではBLACKWELLサーバを1000台も導入して、アジアNO1のシステムを作ろうとしていると言われているわけです。
 

世界標準の資産形成とは

 
8月に、『世界標準の資産の増やし方』という著書を発行されました。
根本的なことですが、河北さんのおっしゃる「世界標準」とはどういうことですか?

「世界標準」というと偉そうだと叱られていますが、私が言いたかったのは、デフレという特殊な環境が続いてきた日本の資産形成は特殊で、とにかく地道に貯蓄をする事でした。

でも、世界ではインフレが当たり前なので地道に貯蓄をするだけでは資産形成は出来ず、投資が必要だという事です。

つまりインフレを前提とした資産形成が世界標準の資産形成という事になります。

ただ、株式などに投資をするとどうしても値下がりリスクを避けることができない。そのようなリスクを背負いながら投資しつつ健全に資産形成をするにはどうしたらいいのかというところをお伝えしたいと思いました。

また、世界で資産運用の世界は大きく変化してきており、それがどのように変化しているのかという事は、今後の先行事例になりますので、これから皆さんが資産形成を考える上でヒントになると思っています。

マーケットプレス 前場 ラジオNIKKEI第1 2024/9/4(水)9:15-9:30の15分間で話しています。1週間は、ご視聴いただけます♪

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