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“落としてから上げる”物語構成を学ぶ【リコリス・リコイル3話】

 今期放送中のオリジナルアニメ『リコリス・リコイル』が面白い。もう今夜23時半には4話が放送されるのだが、今更3話の感想である(ネタバレあります)

「リコリス」とは犯罪を未然に防ぐ秘密組織「DA(=Direct Attack)」のエージェントたちの総称。JKの制服(っぽいの)で武装することで日常に溶け込んでいる。そんなリコリスの一員ではあるが、色々あって支部の喫茶店「リコリコ」への転属を喰らった錦木千束(にしきぎ ちさと)と井ノ上たきなの多種多様な業務の様子を描く一方、縦軸で「銃取引事件」の謎も少しずつ解明していく。毎回良く動く戦闘シーンが見所。あと可愛い

千束の声がマジで可愛い

 ポイントは「銃取引事件」でのたきなの行動の是非。現場に居たリコリスはフキ、エリカ、ヒバナ、そしてたきなの4人。エリカが敵に捕まりピンチになるも、DA本部としては敵の”商人”の身柄を確保したかったので安易に射撃許可を出せない。しかしハッキングにより無線の通信障害が発生、その間にたきなが独断専行で銃を豪快にぶっ放し、商人まで殺してしまう

フキ「お前……エリカを殺す気か?」

たきな「……生きていますよね」

(フキ、たきなの頬を殴る)

1話より

 これが(表向きの)原因でたきなはリコリコへ転属となり、千束と出会うのだった。

 ***

 で、3話である。久々にDA本部を訪れた千束とたきな。しかし、

モブ「ホラ、味方殺しの。DAから追い出されたんでしょ?」

モブ「組んだら皆病院送りにするもんね」

モブ「恐ろしい」

 のっけからたきなの陰口が聞こえてくる。その後、たきなは自身の後任・サクラと出会う。

DAを離れた  たきなの穴を埋める後任・乙女サクラ(右)

サクラ「命令無視した挙句、仲間にぶっ放したって本当っすか?」

サクラ「やっぱ敵より味方撃つほうが燃える~みたいな?」

サクラ「あ、殺しの時しか笑わないんでしたっけ?」

サクラ「私は好きっすよ。映画の殺人鬼みたいで格好良いっす」

 初対面にも関わらず容赦なくたきなを煽りまくるサクラ。さらに、その後フキと再会した時、こんな言葉まで飛び出す。 

銃取引事件でたきなを殴った春川フキ

フキ「お前はもうDAには必要ないんだよ」

 いくらたきなの自業自得とは言え、ここまで来るともういじめだろう。私も初見ではこのへんで心が痛んだ。

 しかし、その後の千束の台詞で救われることとなる。

千束「あの時たきなは仲間を救いたかった。それは命令じゃない。自分で決めたことでしょ。それが一番大事」

(中略)

(千束、たきなを抱きしめる)

千束「たきな、今は次に進む時。失うことで得られるものもあるって。たきながあの時ああしなかったら私たちは出会えなかったよ。私は君と会えて嬉しい! 嬉しい、嬉しい! 誰かの期待に応えるために悲しくなるなんてつまんないって。居場所はある。お店の皆との時間を試してみない? それでもここが良ければ戻ってきたらいい。遅くない。まだ途中だよ。チャンスは必ず来る。その時したいことを選べばいい」

 これ屈指の名シーンだろ。声優の演技や抑揚も絶妙すぎるので、興味があればニコニコ動画の無料期間内に聞いてみて欲しい(14分あたりから)。

https://www.nicovideo.jp/watch/so40760886

 このシーンのために前半のたきな叩きがあるのであれば、物語の構成としてそれも必要なのかもしれない。落としに落とした末に救いのシーンを持ってくる。フリが悲しければ悲しいほど救いのオチが活きてくる。簡単なようだが、いざ書いてみるとなかなか難しいものである。読み手の心を動かしたいなら尚更である。

 ***

 という訳で、物語構成が参考になったのは余談だが、とにかく『リコリス・リコイル』はオススメ。そもそも私は銃撃シーンは(アニメでも)苦手なのだが、全体的には千束とたきなの交流がメインの明るいテイストに仕上がっており、ある程度は観やすい配慮がなされていると思う。あと可愛い。声も可愛い。興味ある方は是非ご覧下さい。


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