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連絡先すら知らない妹の話

 昨日は妹の誕生日だったわ。
 何、職場の女子社員の話をしていたんだか。

 私も先月36になってしまったが、妹は2つしか離れていないので34だ。

 もう10年以上は軽く会っていないし、お互いの電話番号、メールアドレス、SNSのアカウント、一切を知らない。

 なぜここまで疎遠になってしまったのか、歴史を振り返ったところで特に明らかにはならないのだが、そろそろ自分を少しずつ曝け出そうとは思い始めているので、強引にでも振り返る。

第1章 仲良すぎ期

 生まれは東北の某所。お互い小中学生まではよく会話を交わした。
 小5くらいまでは風呂も一緒に入ったし、当時の妹の体重を私は知っていた。
 同じテレビ番組を観て、同じ音楽を共有した。
「ゆずは癒し系なんだよ」と熱く語る妹に「え、何? イヤラシ系?」と中学生らしい冗談で返してマジギレされたのが2人の最後の漫才だった。

第2章 全く話さない期

 2001年、私は高校に入学した。そこで小学校時代の友人と再会。

 友人から「お前、モー娘。のメンバーの名前言えないのかよ」と馬鹿にされた。

 当時のモーニング娘。は『恋愛レボリューション21』や『ザ☆ピ〜ス!』をリリースし、リーダー飯田圭織やセンターの安倍なつみ、後藤真希が現役という、日本人なら知らない人はいないレベルの文字通り「国民的アイドル」で、特に学生ならその3人を含む全メンバーの顔と名前が一致して当然なのだと言う。

 悔しくなった私は猛勉強した。CDを中古やレンタルでコンプリートし、『ハロモニ。』『MUSIX!』『うたばん』など出演するテレビ番組を片っ端からビデオ録画し観まくった。『とっとこハム太郎』の劇場版にミニモニ。と後藤真希が声で出演すると知った瞬間から前売券を購入し、公開初日に親子客に混ざってオタクの男子高校生が一人だけ拍手していた。

 モー娘。にハマってから2年ほど経つと、2つの異変が起きた。まず、前述の友人にドン引きされた。「そこまでしなくても良かった」と。騙された気分になった。

 次に、妹と全く会話を交わさなくなった。妹も高校に入学し、新たな人間との出会いで視野も広がり、アイドルオタクと化した兄への興味が薄れていったのだろう(当時、オタク文化は浸透しておらず、オタク=キモいが定説だった)。

第3章 物理的にも離れる期

 私は色々あって高校を中退したのだが話が逸れるので詳細は割愛する。大検(現在の高卒認定試験)合格を経て県内のFランク大学に無事に進学(無事ではない)。卒業を期にに上京してからは底辺の仕事を転々として今に至る。ちなみに女性との交際経験は皆無。

 で、妹はと言うと、私が大学3年の時に既に地元を離れていた。山口の国立大に入学し獣医学を6年間も学び、その後は九州の某所に「公務員として」就職。大学在学中に出来た彼氏と数年の交際の末に結婚。私とは正反対の良き人生を今も歩んでいる。

 5年前の秋に妹の結婚披露宴が執り行われたらしいが私は行かなかった。仕事が忙しいのと九州への往復交通費を捻出出来なかったというのもあるが、自分の姿が情けなさすぎて顔を見せる自信が無かったというのもある。

 私が最後に東北に帰省したのはコロナ禍になる直前の2020年1月。その時に妹は帰ってきていなかった。私自身も貧乏でなかなか帰省しなかったので、結果的に10年以上は会っていない。

 ただ、3年前に披露宴のDVDを送ってくれたので、観た。会ったこともない好青年の横で泣きながら手紙を読んでいた。

 幸せになって欲しいと陰ながら、でも心から願った。

 ✳︎✳︎✳︎


 余談だが、私はとっくの昔にモー娘。には興味を示さなくなった。7期の久住小春までは名前を言えるが、8期以降のメンバーをほとんど知らない。そもそも今は何期まで存在するのか。
 代わりに声優オタクと化し、たまに女優を好きになったかと思えば芦田愛菜や本田望結という、完全なロリコンである。まあそれは年上の女性社員にフラれた反動もあるのだが、それはまた別の機会に(いや話したくない)。
 仮に今妹に会ったとしても更にドン引きされるだけだろうから、ここで言わせて下さい。


 1日遅れたが、34歳の誕生日、おめでとう。


(昨日言え)

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