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人生で最も長く感じた一週間

 24,017歩。
 9月2日、iPhoneのヘルスケアアプリが久しぶりに2万歩を記録した。
 意識的にウォーキングをしたわけでは無い。普通に仕事をしていれば自然と2万を超えてくるのだ。
 逆に、それまでの一週間は水曜を除き5000歩にすら届いていない。これは即ち仕事をしなかったことを意味する。8月25日に抗原検査で陽性反応が出て以降、一週間も自宅待機を強いられていた。

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 前職のコンビニ社員時代から11年以上続いた無欠勤記録があっさり途絶えた。男は何があっても仕事に穴を開けてはならないというのは前時代的な考え方ではあるが、必ず出社することが会社との信頼関係にも繋がると、私のモットーにしていたことだ。コンビニ時代に風邪を引き、立って歩くこともままならない時ですら、店長の重責から一日も休むことなく出勤した(※真似をしないで下さい)。そのモットーの崩壊は、自分の存在価値を考えるきっかけにもなってしまった。

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 一週間という異例の長さの療養期間をいただき、症状も微熱(37度前後)と喉の痛み程度で普通に立って歩けるレベルだったにもかかわらず、ほとんど何も出来なかった。自炊はおろか、部屋の掃除さえもしなかった。洗濯機は半年以上前から壊れているが陽性者がコインランドリーに行ってはならない気もするので洗濯物も溜まる一方。積読の本たちは1ページも読み進めること無く放置。レシートの金額をZaimに打ち込む作業も滞っている。noteもやっとの思いで愚痴とおふざけの2本を投稿しただけ。やっていたのは漫画を読み、アニメやYouTube、時々テレビを観て、各種SNSを巡回したことくらい。あらゆる作業をする気力を失うくらいには確実に病んでいた。

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 水曜に抗原検査を行い、陰性なら翌日から職場復帰するはずだった。慣れない検査を2回やって2回とも正確な検査結果を得られず、3回目でようやく判明するも陽性だった。それは流石に想定外で、とうとう回復力すら衰えてしまったのかと更に落ち込む。翌日の早朝も陽性。金曜の午後も陽性。検査キットだけで既に1万円以上も自腹を切っているが、お金の心配よりも欠勤の日数と会社への迷惑だけが増えていく現状に、メンタルは崩壊寸前になった。

 ここまで来ると症状も喉の痛みと口内炎くらいしか残っておらず(後者は地味に辛いが)、早く仕事をしたかった。私は本職に加え週1ペースでタイミーバイトもしており、働き過ぎだったのかもしれないが、仕事に追われることで余計なことを考えずに済んでいたことにも気付く。今回の自宅待機で自分を見つめ直す時間が生まれてしまったことは逆効果だった。

 ネガティブな思考を紛らわしてくれたのは“食”だった。デリバリーやネット注文など人との接触を最小限に抑える方法で、宅配ピザに寿司、餃子、牛丼と、お金を気にせず欲望のまま美味しいものを食べ続けた。まだ私には生き甲斐を感じる要素が残っていたことがせめてもの救いだった。

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 9月2日、土曜。早朝に行った抗原検査でようやく陰性反応が出たことで、一週間ぶりの出勤を果たした。社会復帰できたことに安堵しつつも、一週間も欠勤し会社に迷惑をかけた事実は永遠に消えないことを今でも後悔し続けている。健康だけが取り柄、それは誰よりも自分自身が誇りに持っていたことであり、今回の件は想像以上にダメージが大きかった。

 昨日はタイミーバイトも再開し、コンビニのレジ打ちをひたすら5時間、客数もそんなに多くないので時間の経過が異常に長く感じたが、「家に居て病むよりは100倍マシ」と言い聞かせ、何とか乗り切った。あの頃に戻りたくないと自分を奮い立たせたという意味では、人生で最も長く感じたあの一週間は無駄では無かったのかもしれない。とにもかくにもまずは健康第一を心掛けたい。

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