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夜の公園

 今日は残業した。

 朝5時前に起きて6時半に出勤しているというのに、終業したのは18時30分である。世間一般的な8時半出社に例えれば20時半まで会社にいたことになる。

 帰り道。地下鉄の千代田線、代々木上原行きは空いており、疲労困憊の身体をようやく休ませる。しかし、

「間隔調整の為、しばらく停車いたします」

 霞ヶ関駅でのアナウンス。この先で乗り換える小田急線が信号関係点検を行った影響で、千代田線もとばっちりの足踏みを喰らったのである。

 その後も進んでは止まりを繰り返し、結局終点の代々木上原に着く頃には時計の針は19時半を指していた。
 私はここから更に1時間弱も小田急線の電車に揺られなければならないのだが、代々木上原のホームは隙間なく人間で埋められておりカオスだった。誇張ではなくガチで隙間が無かった。階段を降りようにも階段に辿り着けない、それどころか一歩すら動けないレベル。

 本数が減らされていることもあり、電車が来ても即「鮨詰め状態」になるので、乗ろうとする気になれない。疲れた身体に超の付く満員電車はキツい、キツすぎる。

 途方に暮れた私は改札を出て、駅ビル内の飲食店に入り空腹を満たす。食べ終わってもまだ15分しか経っておらず、電車の混雑が改善されているとも思えない。とりあえず代々木上原の駅前を5分ほど歩く。街灯が一本だけの小さな公園を発見。

 ベンチに座り、途中のファミリーマートで購入したペプシをゴクゴク(ここで酒が出てこないのが私である)。美味い。ガリガリ君ソーダ味を一口。美味い。こういうのでいいんだよ、こういうので。

 夜の空、一つだけ光る星の下、心地良いそよ風を浴びながら、誰も使っていない滑り台とブランコを眺め、物思いにふけること15分。

「涼しーい!」「ブランコ乗りたーい!」

 男の子の声がふたつ。そこに父親と母親も加わり、4人家族が公園内を散歩をしている。

 父親に背中を押されながらブランコを立ち漕ぎする2人。黄色いワンピースの母親は何故かずっとスマホをいじっている。その光景を見て、私にもそんな時代があったことを思い出す。

 子どもにとっての公園は遊ぶ、運動するなどのいわば「動」だが、大人になった私にとっての公園はベンチで休むだけの「静」の使い方しかしていない。しかし、これもまた、乙なものである。

 友人と電話もしたので、気付けば1時間以上も公園のベンチで過ごしていた。再びユニクロのトートバッグを肩にかけ、立ち上がる。体力も回復し、駅へと戻る足取りは軽い。ダイヤは乱れたままだったが客数は先程より減少、余裕で座れる電車に乗り込み、自宅の最寄駅まで1時間の落ち着いた電車旅が始まる。

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