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彼女の推しに嫉妬する彼氏

滝口「小野、ちょっと相談いいか?」

小野「誰だっけ、君?」

滝口「滝口だよ! 芋子の彼氏の」

小野「彼氏……ああ、そういやそんな設定もあったな

滝口「何だよ設定って?」

(※小野と滝口は同じ高校の3年生で、芋子は1年生です(永遠に))


1.彼女の推しに嫉妬する彼氏

小野「それで、相談って何だよ?」

滝口「最近、芋子がおしゃれしてくれなくなったんだ」

小野「デートの時もか?」

滝口「そうなんだよ。例えばこの前、芋子をボウリングに誘ったんだけど、ボウリングと言えばミニスカじゃん?」

小野「ん???」

滝口「なのに芋子はスリット入りのロングスカートを履いてきたんだよ」

(※イメージです)

小野「なるほど、無難に黒のロング丈か。芋子ならやりそうだな」

滝口「わざわざ事前にボウリング場を指定したのに、なぜTPOに合わせてミニスカを履いてこないんだよ!」

小野「ちょっと落ち着いて。まず、何か勘違いしているみたいだけど、ボウリングでミニスカ履いているのは女子プロボウラーくらいだよ」

滝口「え、そうなの?」

小野「まあ実際はキュロットだったり中にインナーパンツが縫い付けられていたりするからパンチラは一切無いけどね」

滝口「詐欺じゃん」

小野「そうだよ詐欺だよ(冗談です)。芋子は動きやすさ重視でスリット入りのスカートを履いてきたんじゃないかな」

滝口「スリット入りって動きやすいの?」

小野「そうらしいよ。パンツ並みに自由自在だとか。まあスポーツ系のデートにおしゃれを求めるなということだ」

滝口「分かった、ボウリングは諦めるよ。でもさあ、別の日に映画を観に行ったんだよ。映画館は暗いし、基本動かずにじっと見ているだけじゃん」

小野「まあそうだけど」

滝口「それなのに芋子はまたロンスカを履いてきたんだよ!」

(※イメージです)

小野「チュールスカートなら良いだろ。うっすら生脚も見えるんだから」

滝口「でもさあ、別にショーパンだけで良くない? 何故わざわざ余計なものを付け足すの?」(※それがおしゃれポイントです)

小野「個人的には女子のボトムスばっか見ないでトップスのおしゃれにも着目して褒めてあげるべきだと思うけどね。ちなみにあいつ、デートの時は毎回ロング丈なのか?」

滝口「いや、そう言えば、水族館デートの時はショート丈だったな」

小野「じゃあ良いじゃねえか。まあ水族館も暗いからショート丈にチャレンジしやすいよね」

滝口「学校の制服だったけどな」

小野「放課後に行ったの?」

滝口「学校休みの土曜だよ!」

小野「なるほど、今日は泊まりませんアピールか……」(※制服姿だと22時以降職質されるから、それまでに帰宅せねばならない)

滝口「そうなんだよ。最近、土曜のデートは毎回制服を着てくるから、うちに泊まってもくれなくなった」

小野「芋子は元々、名前の通りおしゃれに興味のない“芋娘”だったんだよ。7年前の『小野と芋子』第1回の時点で既に決まっていた設定だ。

芋子「冷たいです先輩。校内の多くの女子が茶髪に染めていく風潮の中、私はこの部で最後に残った黒髪の素朴な女子、通称『芋娘』ですよ?」

gooブログ 2017.8.27『小野と芋子』第1回より引用

 俺がファッションのことを色々教えてきたから今では少しマシになったけど、基本は無難な服しか着ないタイプなんだよ」

滝口「そうかお前のせいか」

小野「どうしたんだよ急に?」

滝口「あいつさ、俺とのデートの時は地味なロング丈しか履いてこないくせに、推しのライブにはバリバリのミニスカで行きやがったんだよ!」

(※イメージです)

小野「3月末、美 少年の横アリ公演か。その日たまたま会場近くのコンビニでバイトしていたんだけど、確かにミニスカ女子が異常に多かったね。急に暖かくなったのもあるんだろうけど」

滝口「どういうことだ。彼氏の俺よりも推しが大事なのか!?」

小野「そりゃそうだろ。芋子は本当は那須雄登君と付き合いたいと思っているんだよ。それが叶わないからお前で妥協しているだけで」(※個人の見解です)

滝口「マンマミーア!」

2.彼氏のオタ友に嫉妬する彼女

(放課後、文芸部部室)

芋子「お疲れ様でーす」

小野「お疲れー。芋子、ちょうど良かった。昼休み、滝口が俺の教室に来たんだけど」

芋子「誰でしたっけ?」

小野「お前の彼氏だよ! 何でお前も忘れているんだよ」

芋子「私のこと何か言っていましたか?」

小野「最近、デートでおしゃれしてくれないのに、推しのライブにはおしゃれして行くもんだから嫉妬していたよ」

芋子「ああ、バレちゃいましたか。SNSの趣味垢にしか写真UPしていなかったのに」

小野「こっそり推し活していたのかよ。恋人同士なんだからさ、デートの時もおしゃれしてあげなよ。ライブと同じ服着ていくだけで良いんだからさ」

芋子「嫌です。滝口君は滝口君で酷いんですよ。彼は小野先輩みたいに声優オタクなんですけど、この間ライブ会場でオタ友の女子とエンカしてツーショット撮っていたんですよ!?」

小野「近いなオイ。俺なら絶対に勃起する。ただ、あいつなら仮にツーショ撮っていたとしても全力で隠しそうなもんだけどな」

芋子「女子側のアカウントにしっかり残っていました。で、この女子、二人のうち一人は他に彼氏いることが確定しているんですよ」

小野「ああ……なんか聞いたことあるね。とある声優には学生ファンが異常に多くて、高校生や大学生のオタ同士でコミュニティーが出来ていて、男女の壁を越えて交わっている。もちろんあくまでもフランクな関係だし、ツーショ撮っているだけで手を繋いですらいないけどね」

芋子「ホラ、手を繋がなければ、触れ合わなければ良いと思っているんですよ! 私は他の女子と仲良く話しているだけでも嫉妬するんですけど」

小野「そりゃ俺だってジェネレーションギャップを感じるよ。Z世代の推し活はここまで男女関係なく仲良くして、恋愛感情も一切芽生えないものなのかと。10年前では絶対にあり得なかった」

芋子「小野先輩も高校生ですけどね」

小野「まあ、要するにお互い、推しが原因で嫉妬していたわけか。じゃあお前、美 少年のライブに滝口を連れて行ったらどうだ?」

芋子「ええ……興味持ってくれますかね」

小野「誘ってみないと分からないだろ。で、逆に滝口の推し活にも付いて行ってみろよ。そうやってお互いの趣味を理解し合うことが長く続ける秘訣だと俺は思うけどね」

芋子「童貞が何言ってんだか……」

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