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型式証明と米国規則

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米国の型式証明制度を中心に制度の紹介をします。EMC分野に関しては、具体的な証明に有益な情報を共有します。
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記事一覧

DO160 section-22 pin injection testの概要(前編)

1.背景

今回の投稿では、航空機レベルの証明要求の一つであるIEL(Infirect Effect of Lightning)から見た機器レベルの証明であるDO160 section 22の要求内容について概説します。DO160 section-22には、本記事で紹介するPin injection testだけでなくCable bundle testに関する証明手順も含まれますが、今回はPin

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HIRF ENVIROMENTと航空機の機内配線に誘導される誘導ノイズ(電流)の関係

1.背景L/HIRFのような表現で、Lightningの規則要求とHIRFの規則要求をひとまとめに扱えるほどに両者の規則要求には類似性があります。実際の証明を横において規則要求同士を単純に比べるとHIRFの方が敷居が高いものとなっていますが、その理由として、HIRFの規則2X.1317系には、Appendixの参照があるからだと考えています。過去記事でも言及してきたように、証明の入り口に立つために

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機内でのPortable Electronic Deviceの使用に関する米国規則

1.背景航空機の機内において乗客が使用する携帯電子端末(PED, Personal Electric Device)は、その端末から発せられる意図的な、或いは非意図的(スプリアス放射)な電波(電磁波)は、航空機の航法、通信システムに代表される電子機器への干渉要因となることが知られています。

現代の航空機のモダンな設計では、機内でのPEDの使用を前提とした設計がなされ、必要な証明も行われているので

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航空機レベルの認証においてRTCA DO 160 section 21の活用の方法

航空機レベルの認証においてRTCA DO 160 section 21の活用の方法

1.背景DO 160 section 21、EMISSION OF RADIO FREQUENCY ENERGYは、その名称が示すとおり電子機器の電磁放射の制限値について規定された基準となっています。電子機器には意図的に電波を発するものもあればそうでないものも存在しますが、いずれのタイプであれ、ある程度の電磁波を機器の外部に放射することになります。

この外部への電磁波の放射を管理するためにDO1

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小型飛行機に関するL/HIRFのFAA POLICY STATEMENT,PS ACE 23-10

小型飛行機に関するL/HIRFのFAA POLICY STATEMENT,PS ACE 23-10

1.背景本投稿では、2017年に発行されたFAA PS ACE 23-10について紹介します。Policy Statement、PS ACE 23-10, HIRF/Lightning Test Levels and Compliance Methods for 14 CFR Part 23 Class I, II, and III Airplanesは、subjectのとおり小型機飛行機のTyp

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型式証明とcertification Basis

1.背景これまでEMCに纏わる一般的な規則要求について紹介させて頂きました。今回は少し視点をかえて、Certification Basisの視点からEMCについて考えて見たいと思います。

2.Certification Basisとは何か?Certification Basisとは、その航空機の型式証明において適用された証明要求の全てを表します。具体的なcertification Basisの適

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高強度放射電磁界(HIRF)の証明に関する証明フロー

1.背景過去記事で、HIRFの証明に関する概要的な投稿をいくつかしてきましたが、今後の投稿においては既存の航空機に適用されてきたHIRFの要件だけでなく小型飛行機のHIRF/Lightningに対して特別に適用されるPS(Policy Statement),
PS ACE 23-10や欧州が設定したeVTOLのspecial conditionに関するHIRF/Lightningについても取り上げ

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機器認証試験の要求が航空機認証試験の要求を満たせない理由

機器認証試験の要求が航空機認証試験の要求を満たせない理由

1.背景これまで投稿してきたいくつかの記事の中で、機器の認証を終えていても必ずしも機体へのインストールは認められないことを紹介させて頂きました。過去記事では、機体へのインストールには追加の証明が必要となる明確な理由を十分に記載していませんでした。今回は 、このことについてフォーカスしたいと思います。

機器レベルの認証が機体レベルの認証を必ずしも満足しないことの最も簡単な理由は、米国のアドバイザリ

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型式証明における雷撃保護設計の証明プロセス

型式証明における雷撃保護設計の証明プロセス

1.背景雷撃保護設計は直接雷と間接誘導雷による影響にわけて考えることができますが、本記事では間接誘導による悪影響を証明していくためのプロセスに主眼をおいて説明します。ここでいう間接誘導とは、航空機が雷撃を受けた後、その瞬間的な大電流が航空機搭載の電子機器の機能に悪影響を与える誘導トランジェントを指しています。電子機器に悪影響を与えるメカニズムにはいくつかのモデルが考えられていますが、いずれのモデル

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型式証明における雷撃保護設計の証明基準

1.証明要求基準背景

航空機に搭載される電気電子機器又はシステムは、継続した安全な飛行並びに着陸を行う上で、こう下機能を有する電子機器が誤動作し、電気電子機器の機能が正常に機能しなくなったり、機能が失われることを防ぐ必要があります。また、航空機が雷撃を受けることにより航空機が構造的な損傷を受けることがあり、こうした構造的な損傷が継続した安全な飛行並びに着陸を妨げることも避けるための設計である必要

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型式証明とTSOAとDO160

1.航空機の認証基準と装備品の認証基準米国において、一般には型式証明と呼ばれる航空機の安全性を証明するための認証を獲得しなければ、航空機を商用飛行に用いることができません。航空機の証明要求基準は各種航空機のカテゴリー、エンジン及びプロペラのそれぞれに対して証明要求基準が規定されています。この証明要求基準のことをAirworthiness Standardといいます。一方、航空機に搭載する装備品につ

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型式証明とHIRF(高強度放射電磁界)

型式証明とHIRF(高強度放射電磁界)

1.背景HIRFとはHigh Intensity Radiated FIeldの頭文字をとったもので、米国におけるHIRF規則は、強電磁界の環境下において、航空機に搭載された電気電子機器システムの機能の健全性を確保するための証明要求です。この強電磁界環境は、強い電波を発する電波塔の近傍を航空機が通過する場合などを想定したものです。このため大出力の電波塔周辺に航空機が接近すると驚異度が上がります。こ

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航空機が遭遇する環境

1.背景航空機を開発、或いは航空機への搭載を前提とする装備品の開発を行う場合、それがどのような環境条件下で使用されるのかを考えておく必要があります。想定される航空機や航空機に搭載される装備品の使用環境において、飛行安全を確保する必要があるからです。航空機の運用条件は様々なものがありますが、その中に環境条件も含まれます。高高度を飛行する飛行機と低高度を飛行する飛行機とでは遭遇する環境条件が異なってき

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雷撃保護設計と安全性解析

雷撃保護設計と安全性解析

1.背景本記事は、前回に投稿した「型式証明における雷撃保護設計の証明プロセス」からの続きになります。前回の記事では、雷撃保護設計の大まかな流れを紹介しましたが、今回の記事のトピックは、評価対象システムの特定の手法です。つまり、安全性解析です。米国規則2X.1316の証明を行なう上で、型式証明プログラムの初期の段階で、雷撃保護設計の証明要求が必要とされるシステムを特定する必要があることなどを前回記事

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