愛にカニばさみ【毎週ショートショートnote】
全国大学柔道選手権の決勝が行われようとしている。
4年生の宏樹にとって学生生活最後の大会だ。一度も優勝せずに卒業するなどプライドが許さない。相手の考浩は期待の新人で1年生ながら優勝候補であった。
宏樹は開始線に立つと場外の愛と目があった。お互い頷きあった。
「始め!」
考浩は左利きで喧嘩四つとなり、袖の取り合いになる。お互い牽制しあい、各々2回指導を受けた。もう1回指導を受けると反則負けになる。ここからが勝負だ。
残り10秒を知らせる音が鳴る。一瞬、考浩が時計を見た。いまだ!
宏樹は袖を掴むと一気に引き寄せ得意の内股を仕掛けた。それを待っていたかのように考浩は内股返しを狙う。どちらかというとカニばさみに近い、反則スレスレの技だ。
しかし、宏樹は対策済みだ。愛にカニばさみ対策の練習を付き合ってもらっていたのだ。カニばさみに入ろうとして考浩が重心を右足に乗せようとした瞬間を狙い、宏樹は内股から小内刈りに切り替えた。
「一本っ!」
(410文字)
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