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保護者に寄り添う

-保護者が園に抱いた「不信感」


前のふたつの記事で触れた転倒事故から数日。事故後の処理に関わらせて貰えなかった私が、ようやく保護者にお会いして直接お詫び出来る機会に恵まれました。

保護者側からは「事故を目撃した先生と直接お話がしたい」と申し出があったにも関わらず、実現したのは1週間以上経ってから。
それが元で、完全に保護者の信頼をなくしていた私たちが、今更何を言おうとも「何か隠しているんじゃないか」と、誠心誠意のお詫びの言葉も保護者の耳には届きませんでした。

「私たちは子どもを殺されたのと一緒」
「あなただってお子さん位いるでしょう?こんなに立派な体して、転んで血が出てる子を歩かせないで、おんぶしてくれてもいいでしょう!」

私もひとりの親として、保護者の怒りたい気持ちは痛い程分かりました。
事実、この日からしばらく子どもを見殺しにする夢を何度も見た私は、今なお続く不眠症の苦悩がここから始まるとは夢にも思いませんでした。

唯一の救いだったのは、保護者から「でも、先生だけは子どもに駆け寄ってくれたんですよね?」
と保護者の方から言って頂けたことでした。私の行いは確かに間違いもあったけれど、子どもに対する誠実な気持ちだけは信じて貰えたのです。

保護者をお見送りした後、4歳児の担任からは驚きの言葉を耳にしました。「ほら、こういうことだよね」私は全く何を言っているか理解出来ませんでしたが、私の後方確認が甘かったということを私に再認識させ、責任逃れをしている様でした。

「私はあなたの虐待のことは言わなかったのに」

こう言い返せればどんなにスッキリしたか。意図的に隠してたんじゃない、あなたの人生を壊したくなかったから、大好きな保育園に傷が付くのが嫌だったから、敢えて言わなかったんだと。

また、その間私は保育に入る度に「先生、うちのクラスの子には怪我をさせないでくださいね」「信頼して欲しければ、きちんと仕事をしてください」「あなたはあれから事故現場に行ったの?園長なんか何度も行ってるわよ」などと、心ない言葉を無数に浴びせられました。

私の目的は保護者に心からの謝罪をすることと、真実を伝えることでしたので、これらの声には聞こえない振りをしていました。
それでも、仲間だと思っていたはずの同僚や大好きな保育園にまで裏切られた気がして、私は徐々に精神的に追い詰められていきました。


-勇気をもらった「保護者説明会」


後日、転倒事故の「保護者説明会」が4歳児クラスの保護者向けに行われ、当該保護者は欠席のまま会は進んでいきました。

「保護者説明会」というと、当該保育士や保育園の吊し上げの場面をイメージしますが、この保育園の保護者の皆さんの考え方は大変成熟していて私たちを批判するどころか、数々の励ましの言葉やこの場面でこうした方が良かったのではないかと建設的な意見を出してくださり、
「この事故を教訓として私たち保育園に頑張って欲しい」とエールをくださいました。

帰り際に、以前お子さんを受け持ちしたことのある保護者の皆さんが代わる代わる私の肩を叩き、「私たちは先生のこと信頼してるからね!」と直接励ましを頂きました。本当に嬉しかったです。私はこの父母たちが大好きで、この父母の子どもたちに全力で愛情を注ぎたいと思いました。

あの夏の日、キッチンの床に倒れるまでは…

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